異世界に来たらしい?
悠里は目の前に現れた、中世の騎士の様な鎧を着て軍馬に騎乗した人たちを見てびっくりした。
と、同時に、ある考えが浮かんでいた。
(ええ!まさか!嘘だよね。夢だよね。違うよね)
混乱しながら騎士たち見ていると、
先頭にいた人が兜を取り、ひらりと馬を降りて、悠里に向かって歩いて来た。
その人は少し手前で止まった。
「私はグラント•ロックス。この隊をまとめる責任者だ。
君は?先程の光はきみのせいか?」
落ち着いた低音でそう聞かれた。
見上げる程の長身、アッシュブロンドの短髪、ヨーロッパ系の彫りの深い顔立ちに
鋭さと知性のあるブルーグレー瞳。
精悍な顔立ちの美丈夫。
隙のない立ち居振る舞いはさすが隊長。
年は30代半ばといったところだろうか。
グラントを見て、ああ、やはりなと、悠里は自分が異世界に来てしまったことを悟った。
言葉がわかるのだ。
悠里は携帯小説でも、特に異世界物が大好きでよく読んでいた。
異世界物では言葉が通じていることが多く、
呆然としながらも、
(はは、ほんとに言葉通じるんだな、、、)と
ぼんやりと思っていた。
まさか自分が異世界に来るとは思わなかったが、今はこのグラントだけが頼りだ。
無理やり気持ちを切り替えて、悠里は状況を説明しだした。
「成る程。君は渡り人だな」
「渡り人?」
「時々、世界のあちこちに現れる異世界から来る人たちのことだ」
「時々。そんなに異世界からの人って多いんですか?」
「ここ最近現れたのはこの国で、50年程前だと言われている」
「今その人は?会えますか?」
「来たのは50代の男性だったからな、もう随分前に亡くなっている」
「そうなんですか」
小説では若い女性が国の王子と恋に落ちる話がドラマチックに展開されたりと、ワクワクしたが、実際はおじさんかぁと、いまだ現実感もないまま悠里は少しがっかりしていた。
その様子を見て、不安になったと思ったグラントは安心させるような声で言った。
「だが、その男性の異世界の知識で、この世界も随分便利になったからな。
各方面に影響も与え、伝説の人物となっている。
渡り人が来たら何より優先して保護することになってるんだ。ユーリ、君を一旦軍で預かって、宰相の判断を仰ぐことになるが良いだろうか」
渡り人に関する情報は近隣各国の共通事項として共有されています。
こういう風な感じだよ、と文献にしっかり記載されている為、彼らも落ち着いて対応できています。