いよいよお仕事ですか
最初に依頼を読んでお姉さんに捕まってからのここ。お待たせしました。
怪しい依頼を読んでいたら、職員のお姉さんに引き摺られるように、第一応接と書かれた部屋に悠里は連れて行かれた。
「お掛けになってお待ち下さい」と女性職員は、慌てて誰かを呼びに部屋を出て行った。
取り敢えず座ろうと、置かれたソファに腰掛ける。
固い。お尻がモジモジする。
シーンとした室内で、不安になって辺りを見回していた。
コンコン、ガチャ。
返事をする間も無く、突然扉が開き、びっくりしてると
「悪い、待たせた」
と、屈強な男性が入ってきて、向かいのソファに座った。
先程の女性が紅茶を出して、そのまま部屋から出て行ってしまう。
(あ、待って、こんなでっかい人と二人にしないで)
悠里の願いは無情に締まるドアに弾けた。
入って来た男は190cmは超えるだろう身長。夕焼けの様な波打つ赤い髪を後ろに流し、日に焼けた褐色の肌に、海みたいな深い青い瞳をしていた。
まばらに生えた無精髭がよく似合うニヒルな印象だった。
歳は35、6に見える。
「俺はギルド長のビル・グルドだ今回の依頼について聞きたいことがある」
「久条悠里です。名前が悠里です。初心者ですがよろしくお願いします」
立ち上がって静かに一礼してから座る。
「お、礼儀正しいな。よろしく。
それにしても小さな。23って聞いてるが」
「はい、そうです。未成年に間違われますが、確かです」
「うーん。じゃあ大丈夫か。魔力も特大だしな」
何が大丈夫なのか?
こっちは初心者も初心者。
今日が初依頼なのである。
ちっとも大丈夫では無い。
「嬢ちゃん、この依頼、見えたんだって?」
急に、雰囲気を変えて、ビルがぐいっと顔を寄せて来た。
手には先程の虹色の依頼書を持っている。
「は・・い。見えましたけど」
勢いにビビりながらも正直に話した。
彼の青い瞳には目を見開いた悠里が映る。
依頼内容を口にしようとする。
が、不思議なことに言葉が出てこない。
へ?と、思って何度も口を開けるが、やっぱり言葉が出てこない。
悠里は焦った。
ビルは気にするなというように手を振って、元の位置に戻った。
「あー、いい。依頼者の魔術だ。・・ったく。詳しくは言えないが、この依頼は少し変わっててな」
「変わってる?」
「そうだ。これは依頼者の意向が強く出てて、余程、魔力の相性が良い相手じゃないと見えないようになっている」
「他の人には見えいんですか?」
「相性次第ではこの紙も見えないよ。俺にはただの白い紙にしか見えない」
「私には読めるということは・・・」
「この依頼を受けて欲しい」
「!!!!!!」
衝撃で立ち上がる。
「無理、無理、無理です。ぜーったいに無理」
(だって、依頼内容は・・・)
「この3年、誰も読める奴がいなかったんだ。頼む!!もう限界なんだ。嬢ちゃんだけが頼りなんだよ」
「でも、無理です~~」
悠里は堪えきれ無くなって、涙がこぼれ落ちた。
その後、泣き出した悠里に慌てたビルが女性職員を呼んだ。
依頼を受けるかどうかはともかく、まずは依頼主に会ってくれと、二人がかりで説得された。
明日、朝一で依頼相手のところまで送るからと、呆然とした悠里は遠く聞いていた。
悠里が帰った後の応接室。
「グルド所長、何が書いてあったんですかね?」
「聞くな。あの様子だと碌なこと書いてないぞ」
「大丈夫かしら、あの子。あんなに可愛い子なのに可哀想で胸が痛むわ」
「いや、逆に良いかもしれん。あのウォルフのお墨付きだ、何とかなるだろう」
ビルとウォルフ、グラントは学校時代からの先輩後輩でいまでも友人だった。
ビル・グルド→30歳独身。結婚願望が強い。
純次が超年下妻を落としたことに感銘を受け、ウォルフから純次のモテクニックを伝授される。
それがハマり過ぎて女性たちにドン引きされ、未だ独身なのは本人しか知らない。
スピードの能力を持つ。
早いのよ、何でも。




