私を殺して下さい?
『私を殺して下さい』
「はあ⁈」
仕事を紹介してくれる、通称『ギルド』と呼ばれる斡旋所。
子供も小遣い稼ぎにこなせる程度から魔獣退治まで、
仕事の幅は広く、仕事を求める人々でごった返していた。
依頼ボードにあったその依頼を見て、
久条悠里は思わず、大きな声を上げてしまった。
その声に皆が彼女を振り返る。
慌てて口を押さえて、何でもありませんとばかりに、愛想笑いをすると、皆はすぐに興味を失い、またあたりはざわつき始めた。
悠里は気になってもう一度依頼を見てみる。
(何度読んでも、私を殺して下さい、だよねぇ)
少し虹色がかって見える手のひら大の紙に、丁寧に書かれた整った文字。
物騒な内容の割に、細かいことは何一つ書かれていない。
不思議に思ってると、左肩をぐいっと掴まれた。
「それ、読めるの?」
20代半ばと思われる、女性職員が真剣な眼差しで悠里を見る。
「あぁ、はい、読めます、けど?」
その勢いにビビりながらも、何か?とばかりに首を傾げる悠里。
「そう、、ちょっと別室来てもらって良いかしら」
逃がしませんと、がっちりと腕を掴まれ、有無を言わさず、別室に連れて行かれた。
(あれ?何かやばい展開?読めるって言わない方が良かった?)
背中に嫌な汗が流れる悠里であった。




