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1話・婚約解消の申し込み。

すみません、またも思い付きで始めました。連載作品です。


どう書けば読み易いか、試行錯誤中なので、行間が空き過ぎていて読み難かったらすみません。


尚、似たような名前や同じ名前を夏月の他作品で見かけても気になさらないで下さい。

「悪い。ごめん。けど、俺は心から愛する人を見つけてしまったんだ。ユリシーラには情が有るけど愛していない。只の幼馴染みとしての情だ。ユリシーラも俺に対して幼馴染みの情しかないだろう? だから婚約を解消して()()()よ。俺も愛する彼女と結婚したいし、ユリシーラも心から愛する人を見つけて結婚すれば良い。俺と同じ15歳だからきっと直ぐに愛する人が見つかって結婚出来るよ」





 3歳で出会い3年前に婚約した幼馴染みは、私に言い聞かせるように……そして上から目線で言葉を並べました。





(私のお母様に約束された事もお忘れになられたのかしら……。それに。貴方のこと、私は私なりに好きだったのよ。確かに愛しているか? と聞かれたら答えられなかったけれど、幼馴染みとしてじゃなくて1人の男性として意識して女性として男性の貴方が好きだったわ。私の告げた好きという言葉は、貴方にとっては……幼馴染みとしての感情だと思われていたのね。私の気持ちは、届いていなかったのね……)





 それを今更言っても仕方ないのでしょう。


 だって、婚約解消の話し合いの場に彼は非情にもその愛する女性とやらを同席させているのだから。いくら彼の家だとしても、こういうのは当事者同士だけで話すのであって、たとえ彼の愛する人とはいえ、この場には同席させずに私達だけで話し合うのが、せめてもの誠意じゃないのでしょうか。


 夜を思わせる黒い髪に太陽が輝く青い目をした彼と、まるで対のような存在の彼女は、宝石のようにキラキラした黄色の目と目よりも濃い鮮やかなオレンジの髪をして、婚約者(わたし)の目の前で寄り添っている。もう、彼の中では私は過去の存在、なのでしょう。





「分かりました。婚約解消に同意致します。ただ、政略ではなかったとはいえ、私達だけで結んだ口約束の婚約ではなく、お互いの親同士がきちんと契約書を交わした法に則った正しい婚約です。私の親には私から話しますが、サイレウス様もサイレウス様のお父様である、ドルレク商会の会長・セイバルおじ様にお話して下さいませ。契約書を交わしている以上、契約書を交わした当人同士が互いの目の前で契約書を破棄しなくてはなりませんわ」


「それは……そう、だな。うん分かった。取り敢えず納得してくれてありがとう」


「いえ。それでは失礼しますね」





 カーテシーをしてサイレウス様の家の応接室を出ようとドアを開ける。私がまだ去らないうちにサイレウス様が愛する人に話しているのが聞こえた。





「ほら、言った通りだろ? ユリシーラはただの幼馴染みとして俺と婚約していただけで、俺のことは好きでもなんでもないって」


「そう言われても婚約者がいるって聞かされたら、互いに愛しているって思うじゃない」


「ネフェリがそう思うのは仕方ないけど、俺はユリシーラのことを幼馴染み以上の感情なんて無いし、俺とユリシーラは別に愛し合っていたわけじゃない……」





 それ以上聞きたくなくてさっさと応接室のドアを閉めた。





(俺とユリシーラは別に愛し合っていたわけじゃない、か)





 それなりに大きなドルレク商会の会長一家の屋敷には、使用人も何人かは居て。幼い頃から出入りしていた私のことを誰もが知っている。だから応接室までの案内はともかくとして、帰りは誰にも会わずに帰りたかったのだけど。そういう時に限って、会ってしまうものらしい。


 ドルレク家の管理をセイバルおじ様から託されている執事・ジャン。私が幼い頃から変わらない姿だけど……多分40代半ばくらいだと思う。





「ユリシーラお嬢様……」


 ジャンは、ハッとした表情をして私を見る。そして痛ましそうな顔で目を逸らされた。





「ジャン。もう、貴方に会えないわね」


 私がポツリと溢せば逸らした目を私に向けて見開いてから……「左様でございますか」と項垂れた。





「ごめんなさい。貴方達の気持ちに応えられなくて」


 申し訳なさから俯くと彼に振り返ってもらえなかった、彼に会うために綺麗に梳られた私の森を思わせるような深緑の髪がハラリと視界に入る。夜を思わせる彼の髪と森を思わせる私の髪では、隣に寄り添っているときっと濃い色同士で暗く見えたのかもしれない。


 彼から言われた事は無いけれど、もしかしてこんな濃い色の髪も彼には疎ましかったのかしら。それに、髪よりは薄いとはいえ、それでも宝石のような明るさがない、若葉にもならない緑色の目だから、余計に疎ましかったかしら……。


 だめね。

 自分を卑下してしまうわ。


「いいえ。いいえ、お嬢様。どうか我等のことはお気遣いなさいますな」


 ジャンの声にハッとして無理やり笑顔を作る。此処では淑女教育で習った感情を出さない表情より、無理やりでも笑顔の方が皆も親しみ易い、と言ってくれたから。


「……ジャン。皆はちょっとなら時間が有るかしら?」


「……はい。少しなら」


「では、皆に挨拶をしたいから集まってもらっていい?」


「かしこまりました」





 私は幼い頃から出入りしていたから、ジャンを含めたこのドルレク家に仕える使用人全員と仲が良かった。いえ、仲良くしてもらっていたのだろう。今考えれば、男爵位という一代限りの爵位を抜かせば、一番下の爵位でも貴族令嬢の私だ。粗雑に扱えなかったに違いない。

お読み頂きまして、ありがとうございました。

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