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甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
三回戦 剛vs剛 帝東高校
89/91

7

 8月16日。大会九日目。第二試合。


 一塁側 滋賀代表 甲賀高校

 vs

三塁側 東東京代表 帝東高校


「諸君! 三回戦である。いざ、戦いに出る者の名を申し上げよう」


 昨日のミーティングの時間ではすっかり就寝していた橋じいが、詩吟のような調子でスタメンを発表していく。昨晩のいざこざなど橋じいは全く知る様子もない。


「いちばあぁぁんん、せええんたあぁぁあーあ、いぬぅばぁしりぃぃ……」


 なんだなんだとベンチ上から、その詩吟に向けて観客が首を伸ばしている。


「先生……あの、先生。時間、ないです」


 伊香保が何とかその調子を止めてくれた。

 さあ、三回戦。いざ、尋常に。


 先攻 甲賀高校

 1 センター   犬走和巳

 2 セカンド   月掛充

 3 ショート   桐葉刀貴

 4 ファースト  道河原玄武

 5 レフト    副島昌行

 6 キャッチャー 滝音鏡水

 7 サード    蛇沼神

 8 ピッチャー  白烏結人

 9 ライト    東雲桔梗



 後攻 帝東高校

 1 セカンド   佐藤

 2 ライト    楡木にれき

3 レフト    芳岡

 4 ファースト  龍造寺

 5 キャッチャー 東

 6 サード    髙橋

 7 ショート   枝野

 8 センター   吉田

 9 ピッチャー  竹内


 

 甲賀高校は変則的だった初戦のオーダーから、いつものオーダーに組み直してきた。

 先発は白烏。

 藤田も考えられたが、初戦で3イニングを投げ中1日ではスタミナのない藤田では怖さがある。何より、今大会1、2を争う強力打線の帝東を抑えるならば、やはりスピード、キレともに大会屈指の投手である白烏だ。

 

 対する帝東もベストオーダーを連ねた。

 一番の佐藤、二番の楡木は出塁率が高く、小技も利く。その後に控えるクリーンアップは、高校通算本塁打68本の三番芳岡、そして大会ナンバーワンスラッガーの龍造寺謙信は、既に高校通算本塁打記録更新まであと1本としている。五番の東は甲子園に来て既に2本のホームランを放ち、敬遠された龍造寺の後にきっちりと塁上を掃除している。超強力打線である。


 甲賀ナインが鋭い眼光で帝東ベンチを睨む。昨晩の無礼など無かったかのように、帝東は淡々とキャッチボールを終えた。ベスト8の椅子をかけた一戦は、試合前から火花が散るひりひりしたムードを醸し出していた。


「犬走っ、輪に入れ」


 先頭打者の犬走がネクストバッターズサークル付近に離れているのを、副島は呼び寄せた。

 がっちりとお互いの肩を抱き、甲賀ナインが円陣を組む。そこへ犬走も輪に入ってくる。


「お前ら、昨晩のこと忘れんな。帝東は俺らを下に見とる。見せつけるぞ、甲賀魂をっ。プライドをっ! 勝つぞ、甲賀!!」


 おおおおおおぉ!!!


 甲賀10人の野太い声が甲子園の空に響く。

 今大会、久しぶりの優勝を目指す東の強力打線、帝東。対するは、黒いユニフォームを身に纏い、不思議な野球を繰り広げるたった10人の初出場校、甲賀。既に観客席は満員に近い埋まりかたをしていた。

 かちわり氷を売る声、隣と楽しそうに話す声、管楽器を調整する音……甲子園球場の試合前は色んな音が鳴り響く。この音たちがこの試合ではかき消されていくことになる。グラウンドに響き続ける金属音によって。

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