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甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
三回戦 剛vs剛 帝東高校
87/91

5

「甲賀さんよ、無礼なのは百も承知でここに来た。これからもっと無礼なお願いをさせてもらうが許してくれ」


 龍造寺のその言葉に副島の片眉が上がる。端で聞く月掛の耳もピンと立った。お願いをするにしても口の聞き方が高圧的だ。


「……何の話?」


 副島の声のトーンが一段下がる。ザ・体育会系の副島にとって、いくら謝られようと無礼なものは無礼。少しの苛立ちを覚えていた。


「充、なんて?」

 

 歯軋りしながら道河原がまた月掛に訊ねる。


「うっせーんすよ、ちょっと待って。聞こえねえっての」


 龍造寺は副島を見下ろしながら続けた。


「率直に言おう。明日の試合、俺を敬遠などはやめてくれ。敬遠も立派な戦術だが、正々堂々と勝負に来て欲しい」


 その言葉を聞くや否や、副島のこめかみに血管が浮き出た。


「……何かと思えば。何様だよ、あんた」


「無礼だとは思うが、甲賀さんのためでもある。俺は記録がかかってる。高校通算本塁打の新記録だ。昔、松井秀喜選手が5連続敬遠されて対戦相手はそこから何年もヒールになった。甲賀さんも、そんなヒールにはなりたくなかろ……」


「いらねえよ」


 龍造寺の話を副島は途中で折った。顔が怒りに満ちている。

 階段下の月掛も怒りに震えているように見えた。


「……充、なんて言ったんだ、あいつ」


「玄武さん、あいつ……なめてるよ、俺らのこと」


 聞こえたままを月掛が道河原に教えると、我慢を通り越した道河原は、堪らず立ち上がった。ずかずかと玄関へ歩き始め、たったの五歩で副島の隣に並ぶ。副島の横で腕を組み、龍造寺と睨み合った。


 隣に道河原の気配を感じても副島は龍造寺から目線を外すことはしなかった。


「そんな心配は要らねえ。俺らは敬遠はしねえ。でもな、あんた。敬遠はちゃんとしたルールや。それをせんでくれなんて、あり得へん。そもそも……」


 副島がそう話していると、道河原が副島の口に大きな手をあてた。副島の言葉を今度は道河原が腰を折る。


「龍造寺よ、思い上がってんのもええ加減にせえよ。お前など敬遠せずとも俺らにはお前を抑えるピッチャー二人がおる。ほんで、俺はお前に借りを返す。明日の試合、俺はお前よりホームランを打つ。分かったら帰って素振りでもせえ」


 今度は龍造寺が眉をひそめた。


「借り? すまんが、何のことだ?」


「小学校6年の時や。土俵の上で俺はお前に負けた。でも、勝負は互角やったはずや。その借りを返す」


 龍造寺は小さく鼻で笑った。


「すまんが、覚えてないな。まあ、敬遠しないのを確認できたなら良かった。明日は良い試合にしよう。だが、勝つのは俺ら帝東だ。……では、失礼した」


 殴りかかりそうになる道河原を副島と月掛とで必死に止めた。道河原の目は悔しさから涙をこらえているようにすら見えた。

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