4
赤い絨毯が張られた階段を降りると、大きなホールに抜ける。天井が吹き抜けになっていて、旅館ながらホテルのような解放感がある。階段から見てホールの向こうにだだ広い玄関があり、そこに女将さんの後ろ姿が見えた。女将さんの向こうに見えたのは壁かと思ったが、どうやらその壁と女将さんが話をしているようだ。
「うわ、人間に見えねえな。道河原以上やんけ」
思わず副島が呟き、その壁のような男が副島と目線を合わせた。
「あ、副島主将。ほら、明日の帝東高校の主将さんがいらしてるわよ」
近づくと、その大きさは予想を遥かに越えた。身長は2m近くあり、横にも広い。先ほど伊香保に見せてもらった映像で、打球をピンポン球のように飛ばしていたが、それも頷ける。
先に副島がぺこりと会釈し、龍造寺は顎を出したまま目線だけ下に落とした。
「副島です」
「帝東高校主将の龍造寺です。こんな時間に申し訳ない」
言葉の丁寧さとは裏腹に、ふてぶてしさが副島の第一印象に残った。こいつ、申し訳ないって言葉にちっとも気持ちがこもってねえ……。
階段の下からこの玄関の様子を二人が覗いていた。道河原と月掛だ。
「おい、充。なんて喋ってんだ? 龍造寺の野郎」
こそこそと大きな図体を隠しながら道河原が月掛に訊ねる。
「ちょっと待ってよ。ちゃんと聞くからさぁ」
女将さんがロビーへ通そうとしたが、龍造寺は片手を上げるだけで断った。女将さんが奥へ下がると、龍造寺は副島に厳しい視線を向けて語り始めた。




