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 野球部はサッカー部が終わり次第、グラウンドを使えるようになる。サッカー部の練習中にキャッチボールを済ませていたナインは、すさかず自分の守備位置についた。

 打席には副島が立ち、ノックバットを構えている。マネージャーの伊香保いかほが球出し係として副島の側に立つ。

 野球部の練習が始まるのを聞きつけて、ぽつぽつとギャラリーが集まってきたようだ。


「よっしゃ、いくぞー!」


 声高らかに、副島が白球を握り締める。

 ここで皆、ぐっと腰を落とす。守備の基本中の基本だ。前後左右どこにでも瞬時に身体を反応させられるよう、低く構えて打球を待つ。これだけは充分に身についていた。野球初心者の甲賀忍者でも、運動神経は各々ピカイチだ。理想的な身体の動かしかたとして、すぐに腹に落ちた。


 が、この日は違った。

 甲子園出場を決めてからというもの、地元紙から始まり、地元TVの取材などを重ね、ナインはどこか浮き足立ち始めていた。今まで忍びに忍んで生活をしていた甲賀忍者たちは、あからさまにこの快感に浸り始めていたのだ。

 月掛が完全にTVカメラを見ている。巨漢一塁手の道河原どうがわらもちらりちらりとカメラを覗いている。クールな桐葉はカメラの映りかたを気にして、変な体勢で構えている。

 副島はその姿勢に気づき、怒鳴ろうとしたが、構えられているカメラに申し訳ない気持ちが勝ってしまう。ちっと舌打ちしてバットを肩に乗せた。


「サードォ! ボールファーストォ!」


 副島がサードへゴロを放つ。小さな土煙が上がり、サード蛇沼へびぬまの真正面に白球は転がっていった。

 蛇沼は甲賀高野球部の忍者組としては一番の古株だ。ほぼ半年みんなより経験を積むことで、野球に関しては最も慣れている。その蛇沼ならば何の問題もないゴロだった。

 だが、副島は打った瞬間に蛇沼がファンブルすると気づいていた。蛇沼は副島が何度も何度も叩き込んだはずの捕球姿勢になっていなかったのだ。


「あっ」


 腰が高い蛇沼はグラブの先にあて、前にこぼした。慌てて拾い上げ、ファーストへ送るが、その送球も僅かに逸れている。蛇沼が副島に右手を立て、ごめんと片目を瞑った。


「おいおい、腰が高いわ。次ぃ、ショートォ!」

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