20
いったい何球目だ……。滝音は白烏にボールを返しながら、汗を拭った。再登板の白烏もいつの間にか汗でびっしょりだ。
鉢谷の粘りが続いていた。もう十球以上ファールで粘っている。福岡高校ベンチ全員が思わず拳に力を込める。
カキンッ!
キンッ!
コツンッ!
どれもヒットを打てそうなファールではない。何とかバットに当てているだけだ。それでも、一度もスイングしたことのない鉢谷の粘りは福岡高校側に勇気を与えていく。
「鉢谷がんばれ!」
「頑張れ!」
「頑張れ、頑張れ!」
球場中に鉢谷がんばれコールがこだましていた。
『結人、気にするな。俺らも必死で勝ちに行く』
『当然だ。ねじ伏せるぜ』
この鉢谷との勝負がこの試合の最後の分水嶺となる。滝音はそう考えを改めた。順調にいけば、最終回に福岡高校の三番山﨑と四番古賀を迎える。そこを最後の正念場と考えていたが、勝負はここだ。
この全く打てない鉢谷が打つことで福岡高校の士気は上がる。特に、ここまでピッチングで支えてきたエースだ。その力は絶大となる。
キィンッ!
キャインッ!
『解説の渡部さん、鉢谷くんこれで17球連続でファールです。意地が見えますね』
『ええ。見事な粘りですよ。正直、あまり良いスイングではなかったですが、徐々にさまになってきてますよ。そもそも白烏くんのこのストレート。打てるだけでも凄いことですよ。まだ球速は140km台後半が出ているわけですからね』
鉢谷の両手が赤みを帯びている。その手を不思議そうに見つめた。
……そうか。バッティングっていうのはこんなに痛いのか。この力の競い合いを制して山﨑や古賀たちは打ち返していたのか。僕が抑えれば勝てると思っていた。とんだ思い違いだ。みんなが打って1点でもとらないと勝てはしない。それを、みんな必死に取っていたんだな。
鉢谷のグリップを握る力が強くなる。
勝負だ、甲賀忍者よ。




