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 ダメ押しの4点目をとる!

 副島は今日一番の集中を見せていた。この鉢谷のボールはどこに収まるか分からない。だが、打席数を重ねるにつき、それにも少し慣れてきたように思う。集中し、最後の最後までボールを見極め、スイングによるボールの軌道まで読む。そうすれば……。


 鉢谷は投球前にちらりと山﨑の方を見た。気づいた山﨑が、どうしたんだ? と、首をひねった。鉢谷はなんでもないとでも言うように少し顎を引くだけをして、また前へ向き直った。


 鉢谷は人生で初めて、人を背負った時間を過ごしている。

 あの時、山﨑が図書室に入ってこなかったら、僕は今、この景色を見られていない。先代において派手な名もない鉢谷家に生まれ、ただ書物を読んで過ごしてきた。誰にも自分のことを分かるまい。だから、僕もわざわざ他人のことなど分かろうともしなかった。

 スタンドを見渡す。

 大勢の観客の視線が鉢谷に注がれている。両手を祈るように組み、鉢谷に想いを託している者の姿も見える。初めて知った。人の想いを背負う尊さを。

 甲賀さんたちよ。もう、君たちに点は与えない。やれば、できるはずだ。人間には無限の可能性がある。それを、僕は野球を通して知ったから。


 投球動作に入った鉢谷を見て、福岡高校ベンチが驚いた。監督も、控え選手も。山﨑や古賀も目を丸くしている。マウンドの鉢谷がワインドアップで振りかぶったのだ。

 相手の甲賀は天晴れだ。僕の幻蝶に徐々に合わせてきている。打たれるのは時間の問題だった。ダメ押しの4点目を取られないように、僕も進化するしかない。


 パアアァァァァン!


 この試合、初めて福岡高校キャッチャーのミットから大きな音をたてた。


「……嘘やろ」


 思わず副島が口にした。球速は130km/hも出ていなかったかもしれない。ただ、ここで普通に投げられるなど副島の頭には微塵もなかった。


「こうするしかない。僕はもう点を取られるわけにはいかない。今まで対戦した投手たちの投げ方の見よう見まねだけど……。僕だって投げられる。これで的を絞れないだろ」

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