表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
初戦 文武両道 福岡高校
56/91

29

 桔梗はぴんと閃いていた。ここは、あれをやる大きなチャンスだ、と。


「ちょっと! 犬走くん、早く!」


 その気迫に押されるように、犬走が桔梗へコールドスプレーを投げる。

 相手の控え選手がコールドスプレーを持ちながら鉢谷のもとへ向かおうとする瞬間、桔梗はそれを制して自分が駆けた。意地でも自分が行くから! という目をしている。


「あたしが行きます!」


 声をかけられた控え選手はその様相に怯み、ベンチへ戻った。だが、ふと、首を傾げる。

 あたし……? って言わなかったか、今?


 桔梗がコールドスプレーを片手にマウンド前へ行くのを観衆は拍手で称えた。

 皆、知らない。桔梗の考えと正体を。


「だい……じょう……ぶ?」


 桔梗が鉢谷の前にしゃがむ。どこかも確認しないまま、桔梗は鉢谷の足へ適当にスプレーを振る。そのまま上目を遣い、鉢谷を見上げた。

 唇が薄く桃色に艶めき、思わず鉢谷は目を逸らす。逸らした顔はぐるりと桔梗の反対を向き、桔梗の目の前に鉢谷の耳が近づいた。

 ───しめた───

 桔梗は濡れた唇に舌を這わせた。そっと、目の前の耳へ唇を寄せる。


「……んねぇ、だいじょうぶか、教えて」


 声を出しているのか、吐息を吹き掛けているのか、どちらともつかない。ビクンっと、鉢谷が首をすくめた。何事かと、ちらり鉢谷は横目で桔梗を見つめる。

 桔梗はほんの一瞬だけ鉢谷から目線を切り、球審を見た。……こちらを見ていない。隣で立って様子を見ているキャッチャーが桔梗の目線を辿って球審の方へ顔を向けた。これで誰も見ていない。好機!


 桔梗はすくめた鉢谷の首めがけて、顔を寄せた。驚く鉢谷の左手をそっと右手で引き寄せ、柔らかい胸にあてた。同時、桔梗の桃色の唇から淫靡な舌が覗き、鉢谷の首もとを舌が這った。目が合う。それと同時に鉢谷の鼻腔に生ぬるい女の匂いが立ちこめた。鉢谷は上気し、目の焦点を合わせられない。


『甲賀流東雲家 くノ一忍法其の弐、黒椿くろつばき

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ