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甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
初戦 文武両道 福岡高校
51/91

24

 副島がバントの構えを取る。昨日の伊香保が行ったミーティング通りだ。


「なんといっても防御率0.00のナックルだから、映像で見るよりもずっと打ちにくいと思う。ワンアウトで三塁に進めるパターンが取れれば、そこに持っていきたいわ」


 またとないチャンスだ。

 副島はバットの先に意識を集中した。しっかり集中すれば、バントなら可能だと考える。この特殊なナックルはスイングの風でも揺れてしまう。だが、バントなら違う。


 鉢谷のほぼ無表情だった顔に変化が生まれた。福岡高校は今まで鉢谷が投げると点を取られていない。それで勝ってきたためにフィーチャーされないが、福岡高校はどの試合でも点を取れていない。

 鉢谷にしてみれば、先制点を与えるわけにはいかないのだ。しかも、まさかたった2イニング目でその状況に立たされるとは思っていなかった。


 鉢谷は少し逡巡して、タイムを取り、キャッチャーをマウンドへ呼んだ。内野陣も集まり、マウンドで福岡高校の小さな輪ができた。何やら長い打合せをしている。

 輪が解けると、鉢谷はパターンが無いはずのサインを長く確認した。セットポジションにつく間が長い。セットポジションについたと思うと、二塁上の蛇沼へ何度も牽制球を送った。


「だいぶ過敏になってるな。あんたら、打線はキツそうやしな」


 普段はそういうことを言わない副島が、敢えてキャッチャーに訊ねるように言った。キャッチャーは副島の方すら見ずに答えはしなかった。

 やはり、ナーバス。ここは俺が送って、道河原に何とかさせる。期待薄だが、やるときゃやる男だ。副島はバットを寝かせ、集中した。

 もう、副島の意識はキャッチャーに回っていない。それを確認して、キャッチャーはそっと地面に両膝をついた。鉢谷が、よし、と目線だけで合図を送る。


 鉢谷が副島へ初球を放る。

 副島は確実にバットに当てようと、しっかり構えた。一塁手、三塁手がダッシュする。が、鉢谷は動かなかった。キャッチャーは重心を低く落とし、まるで股の間を抜けることがないようにだけ集中しているように見えた。副島はその動きに気づかない。鉢谷の罠に。

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