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甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
初戦 文武両道 福岡高校
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23

 蛇沼家は、まともな心では握ることすら許されない蛇剣という剣を代々伝承している。この蛇剣を握るために、忌み嫌われながら生活を送る。苦しい日々を耐える代わりに、清らかな心と邪な心を操ることができるようになる。

 ただ、それだけでは甲賀者として戦国の世を生き抜くことはできなかった。

 故に、蛇沼家はトリッキーな攻撃から身を守り、トリッキーな攻撃で敵を殺める術を修行で身につけた。

 修行の相手は、本物の蛇だ。

 蛇沼家では、一歳から蛇と対峙させられる。幼き頃から、予測しにくい動きをする蛇から、身を守らねばならない。同時に、その動きを会得していく。


 打席で蛇沼は上半身を屈め、低い位置から舐めるような視線を鉢谷へ送った。

 もう既に投げ終えている鉢谷は見たことのない構えに怯んだ。

 人間なのに、まるで自分の子を守る蛇のようだ。攻撃が、くる。鉢谷は身震いした。いよいよ鉢谷のナックルが蛇沼に届きそう。その瞬間、蛇沼の目が鈍く光る。


『甲賀流蛇沼家 蛇身蚕食じゃしんさんしょく弐之躯にのむくろ 青大将』


 ひらり、ゆらり、と蝶のように舞う鉢谷のナックルが瞬時に何かに食われた。そんな突然のスイングだった。

 近づいて来たボールに、低い姿勢から突然バットが一直線に伸びたのだ。


 キィィィィン!!


 今まで聞いたことのない音に鉢谷が飛び上がる。振り返ったずっと先に打球が伸びていく。打球はそのまま左中間を破り、転々と外野を抜けた。鉢谷は呆然とその様子を眺めるしかなく、蛇沼は悠々と二塁に達していた。

 二回表。両軍初めてのヒットは、この日初めて四番に座った甲賀高校の蛇沼から生まれた。

 塁上でベンチに向かって手を挙げる蛇沼は既にかわいらしい顔つきに戻っている。


「神さん、すげえ。なんか、色々すげえ」


 みんなで盛り上がりながら、ベンチから蛇沼を讃えた。アルプススタンドから蛇沼を盛りたてるファンファーレが鳴り響く。

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