表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
初戦 文武両道 福岡高校
35/91

8

「悔しいけど、お前の言いたいことは分かる。けど、そうしたって、対策なんてねえんだ。俺らの頭使う野球にも限界があるけんな。せめて並まで投手を引き上げんと……」


「……そのボール、貸してよ」


「え?」


「口で言ったって分からないだろう? だから、見せるよ」


 山﨑は右手に握ったボールを見つめた。いったい何を見せるというのか。緩い弧を描いて鉢谷へボールが渡る。


「図書委員さん、ごめん。少しだけ窓開けさせてください。すぐに、済みます」


 図書委員はあっさりと承諾し、窓を開け放った。全開になった窓から風が吹き込み、カーテンが荒波のように揺れる。


「本を必ず守るように。しっかり捕って」


 風に鉢谷の髪がなびかれる。すっきりとした顔立ちは少年のようだ。山﨑は距離を取り、素手で構えた。鉢谷との距離は6メートル。

 鉢谷はボールを見つめ、顎に手をあてている。「なるほど」と、小さく呟いた。

 野球をやったことがないのを丸出しにしたフォームで鉢谷の右腕が上がる。


「この距離でも理論上は目に見える結果が出る」


 そんなことを言えてしまうくらいに、投球動作が鈍い。ゆっくりと腕が振られた。何とも頼りない遅球がふわふわと宙を舞う。


 は? なんだこりゃ?

 拍子抜けする遅球に、山﨑はがっかりしながら両手で構えた。まるで幼稚園児のキャッチボールだ。ボールの縫い目がはっきりと見える。遅い。

 山﨑は風に流れる方へ一歩移動し、また両手で構えた。ふと、ボールが揺れ、山﨑は今度は反対側へ一歩戻る。やっとこさ届いたと思ったボールは風に揺られ、左右にピクピクと揺れながら、すとんとお辞儀するように落ちた。


「あっ」


 山﨑はその揺れに合わせられず、ボールは床で弾み、本棚の隅に当たった。


「あーー、ちょっと山﨑くんっ!」


 図書委員が大事だと、駆け寄ってボールを押さえた。


「鉢谷くんも! ボール投げないで!」


「ごめんなさい」


 山﨑は図書委員と鉢谷の会話をぼうっと聞いていた。


「ちょっと! ボーッと立ってないで、野球部ならあんな遅い球ちゃんと取ってよね」


 図書委員がこめかみに血管を浮かせている。その図書委員をいなすようにして、山﨑は鉢谷に寄った。


「今のは……ナックルばい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ