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甲賀忍者、甲子園へ行く2《甲子園編》  作者: 山城木緑
初戦 文武両道 福岡高校
30/91

3

 野球は投手。そう言うと、否定する者が少なからずいるが、やはりチームスポーツの中で野球ほど一人のウェイトが大きいスポーツは珍しい。


 ラグビーで世界最高のフルバックが居ても勝てるとは限らない。サッカーで世界最高のフォワードが居ても勝てるとは限らない。バスケで一人抜きん出たセンターが居れば強いだろう。それでも囲まれると厳しい。他の頑張り次第となる。

 ただ、野球に世界最高のピッチャーが居れば、勝ちやすくなる。点を取られなければ負けないからだ。しかも、投球は誰にも邪魔されない。

 アマチュア野球では、それが顕著になる。選手層が薄く、良い投手のいない公立高校が高校野球の舞台で輝くのは至難の業なのだ。


 ここ福岡高校はまさにその問題に直面している。15年も前の事件であっても、福岡高校の投手という悪名は消えず、福岡高校野球部は投手不足にいまだ悩まされていた。


 ただ、さすがに15年も経つと、噂自体は当時よりは薄れていた。それでも投手不足になるのは、もうひとつ理由がある。


 毎年のように出場校が変わる福岡県には、「進学野球」という言葉が存在している。

 福岡の高校野球では、有数の進学校でありながら何度も甲子園に出場する公立高校が存在する。福岡北部の筑東高校や大倉高校がそれにあたる。

 勉強ができ、野球もできる中学生はわざわざ家族が引っ越して筑東や大倉を受験させる。これがいわゆる進学野球である。

 この割を食うのが福岡高校にあたる。進学校だが野球は弱い。悪名もある。勉強ができ、野球もできる子は福岡高校を選ばず、わざわざ遠い筑東や大倉を受験してしまうから、福岡高校には野球の上手い生徒は集まりにくいというわけだ。特にピッチャーは。


 毎年、福岡高校野球部のキャプテンはこの問題という重責を背負う。夏が初戦で終わり、また重責を担うキャプテンが誕生する。


「新キャプテンは、山﨑!」


「はいっ!」

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