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月掛はぴょんぴょんと壁の突起を器用に踏みながら降りてきた。すとん、と着地すると、周りのギャラリーから拍手が起こった。
「……おい、こんだけ注目されてもうてるから、敢えて小さい声で言うぞ。月掛、何やってた?」
「修行っす」
「……そうか。うん。何を言っても通じそうにないな。分かった」
副島は疲れきっていた。
「ういす。なかなか危なかった。でも、こんなの甲賀市にはねえし、良い修行になった」
「……そうか。分かった。良かった。そりゃ良かった。……俺は今、猛烈な頭痛に襲われてる。少し離れてくれ」
首を傾げる月掛の肩を軽くいなし、副島は滝音と伊香保の前に立った。
「俺は緊張しねえタイプだが、人生で一番っていうほど心臓の鼓動が早いのが分かる。滝音、キャプテン命令や。こいつら動物園を何とかしろ」
「すまない。みんなついて来たくって押さえられなかった。群れるのが苦手なみんなだから現地集合にしたら、桐葉が刀を持ってきてた。俺も予期できなかった」
伊香保が隣で頷いている。二人ともずるずると底に残ったタピオカを吸い上げている。
「…………タピオカ……うまいか?」
副島の頭は混乱を通り越しておかしくなったのか、自分でもよく分からない質問をしている。
「あぁ、美味しい」
「……そうか。滝音、俺、会場入ってるわ。頭おかしくなりそうや。そいつら猛獣をどこか檻にでも入れてから会場入ってくれ」
「分かった。何とかする」
「おう、何とかしてくれ」
ふらふらと副島は奥のエレベーターホールへと向かっていった。
滝音がどこから出したか、笛をピッと吹いて、皆を整列させた。
振り向いて副島がエレベーターに乗ったのを確かめ、滝音はみんなに語った。
「よし、みんな、お疲れ様。じゃあ、みんなは戻って練習だ。俺と伊香保は抽選会場に入る」
「えーーー、ずるー。あたしも入りたい」
桔梗が口を尖らせた。
「悪いけど、それはダメだ。どれだけの手練れがこの中にいるのか分からん。伊賀や風魔や他の者たちも、甲賀者が表に出てきたと話には浮かんできているだろう。まずは敵を欺く。今日はそこまでだ」
蛇沼が滝音に不思議そうに訊ねた。
「滝音くん、これ、何の意味があったの? 馬鹿っぽく装いに来ただけ?」
滝音は含み笑いを見せた。他にも不思議そうにしているチームメートに向けて、そっと人差し指を唇にあてた。
「まぁ、いずれ分かるさ」




