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怒鳴り散らす副島の目線に爽やかなカップルの姿が遠目に映った。仲良く笑いながら近づいてくる。手にはドリンクを持ち、滋賀のど田舎から出てきたとは思えない洗練さがある。
「おお、副島。着いたかい」
滝音と伊香保が軽やかに手を振ってくる。
「タ、タ、タ、タピオカ飲んでんじゃねえ! なんっでお前らがついていながら、全員会場来させてんだ。お前ら以外は練習だろ、今日は。こいつ刀持ってきてんぞ、おいっ! お前らがついていながら!」
副島の怒鳴り声が響き渡り、周りを行き交う人々がくすくすと笑っている。
「まあまあ。副島、そんなに怒らずとも。ほら、みんなこっち見て笑ってるぞ」
爽やかな笑顔を浮かべる滝音に対し、副島はこめかみに青筋を作って更に怒りを増した。
「笑ってる場合じゃねえ。笑われてる場合じゃねえ! 銃刀法違反で俺らジエンドだったっての! ほんで、これ、全員来てもうたんか? 月掛どこやねん! あいつおらんのも心配や。あいつだけ学校おるんか? んな訳ないよな」
副島の叫びにも似た怒り声に、滝音も伊香保も桔梗も耳を覆った。
ふー、ふー、と荒息を鎮めた副島が、ふと道河原と白烏の視線を追う。よく見ると、通行人の何人かがビルを見上げている。その視線と道河原たちの視線はぴたりと合う。
おそるおそる副島はその視線の先を辿った。ビルの外壁は大谷石で覆われており、所々に突き出た部分がある。その陰影がビルの絢爛さを引き立たせている。この玄関付近は3階まで吹き抜けになっていて、見上げると尊厳さに声が出ないほどだ。
副島は、それを見つめて最初、声を出せないでいた。無論、このビルの尊厳さにではない。吹き抜けとなっている壁に何者かが張りついている。
スパイダーマン? いや、残念ながら甲賀高校の制服を着ているのが見える。
「副島、充はあそこだ」
道河原が副島にあたかも日常風景を見るように言った。
「あぁ、見えとる。よーく、見えてもうてるわ。あのチビ助の姿が」




