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信号が変わるや否や、副島はダッシュした。皆が目線を送る一団の高校生集団めがけて。
副島は飛び込むようにその一団に駆け込み、そのうちの一人に目を見開いた。が、当の本人は目を瞑っている。
「桐葉、おっまえ、なんで刀持ってきてんだ!」
副島が腰に差している刀に手をかける。と、桐葉が閉じていた目をカッと見開いた。
「触るなっ」
「触るわっ!」
副島の大きな溜め息とともに、なんとも言えない空気が流れる。
「刀は持ってったらヤバいんちゃうのって、あたし言ったんだけどねー」
桔梗が大きく胸の開いたシャツの襟をぱたぱたと仰ぎながら言った。黒いブラがちらりと覗く。斜め後ろに立っていた藤田が鬼の形相でそのブラを覗きこんでいる。こっそり道河原と白烏の目線もそちらに流れているのが分かる。
「か、た、な、を、持っ、て、き、た、ら、だ、め、で、しょ、がっ! だめでしょがっ!」
副島が赤子を怒るように桐葉に迫った。
「刀は俺の命だ。副島の頼みと云えど、刀は譲れん」
「譲れんのなら街に出ちゃいかんやろがっ! 銃刀法違反なのっ。法律違反してんのっ。これで甲子園出れんかったら、前代未聞なのっ」
桐葉がすうっと目を閉じた。
長い銀色の髪が風になびく。
ふうぅっと桐葉は息を吐く。
凛とした佇まいに、辺りの空気が緊張する。
薄く唇が開き、小さな声が桐葉から漏れた。
「……すまぬ」
「いや、それだけかいっ!」
副島はさっさと刀を回収し、道河原の背中に差し込んだ。
「ふぅ。突っ込みどころが満載や。とりあえず道河原、お前の背中なら見つからずに済む。その刀隠しといてくれ。見つかったら俺らの夏は終わりや」
変な汗にまみれて、副島はみんなを見渡した。
「てか、ほんま、なんっでお前らここにおんねん。滝音と伊香保はどこ行ったんや」




