再会
「この街も8年ぶりだな…………」
アイネさんと別れを告げて俺は精霊の加護で自分の生まれた街に戻ってきた。
8年という年月が経ってもこの街はたいした変化はない。いつもの街だ。
「さて、行くか」
ここまでずっと休むことなく動いてきた為に時刻は既に深夜。誰もが寝静まっている時間帯だけど俺は5年間自分が育った孤児院に向けて足を動かす。
あれから強くなった。
レベルも100を超えて精霊の加護もこの身に受けている。
チートと化した今の俺なら例え不意打ちであろうとも対応できる。
後はシャーレが無事であることを祈るしかない。
「シャーレ…………」
足早で孤児院を目指して俺は五年間育った孤児院に到着した。
流石に子供は寝ている時間。8年前と変わっていないのなら部屋は奥の大部屋で寝ているだろう。
問題である院長とシスターはどこか…………。
「索敵」
索敵スキルを発動させて調べる。索敵スキルLv7なら誰がどこにいるのかまで把握することができる。
そして孤児である子供は予想通りの奥の大部屋で寝ている。そして院長とシスターは地下室にいることはわかったが、肝心のシャーレがどこにもいない。
「まさか、いや、それを決めるのもあの野郎をとっちめてからだ」
既に奴隷にしたという最悪な展開を想像するも、それは早計と思い俺はロイバーさんから教わった盗賊の技術で開錠させて孤児院に侵入する。
何一つ変わらない懐かしき孤児院。
5歳までの思い出がここには詰まっている。だけど、ここには子供の命を餌にするクズがいる。そのクズは索敵スキルで地下室にいることはわかっている俺は隠し階段を見つけて地下に降りる。
「まさか孤児院に隠し階段があるなんてな」
こんなものがあるとは露にも思わず、無邪気に遊んでいた頃が懐かしく思えてしまう。
奴隷生活が色々と濃かったというのもあるだろう。
感慨深くそんなことを思いながら薄暗い階段を降りて行く。すると、喘ぎ声が聞こえてきた。
光が漏れる部屋を見つけて俺はそっと覗き込むように扉を開ける。
そこには俺を奴隷にして売った院長とシスターの淫らに耽る行為の真っ最中だった。
それも俺の知っているシスターもいれば俺がいなくなってか新しい入れたシスターもいる。全員が一糸纏わぬ生まれたままの姿でヤリまくっていた。
「い、院長…………わ、わたし、もう…………」
「ふふ、まだまだ行くぞ」
院長の腰が動く度に聞こえてくるシスターの喘ぎ声。というかあの院長、ここにいるシスター全員を毎日相手にしてんのか? 歳の割に下半身はどれだけ若いんだよ、絶倫のスキルでも持ってんのか?
俺はこんなエロ爺のことを信じていた日があると思うと腹が立ってきた。
「はぁ~、もういいや」
院長が許せなくて復讐とか報復とか色々と考えていたけど、もう色々と馬鹿らしくなってきた。
さっさと終わらせよう。
剣の精霊の加護で無から剣を生み出して扉を蹴り破る。
「だ、誰だ!?」
突然の襲撃に声を荒げる院長に俺は言ったやった。
「久しぶりだな。色欲狂いの変態野郎」
「お、お前はリブロ…………ッ! どうしてここに!?」
「へぇ、自分で売った奴隷の顔を覚えていたんだな。てっきり忘れられていると思っていたよ、院長」
「ひぃ!?」
「に、逃げ…………」
全裸のまま逃げようとするシスター達。
おいおい、久しぶりの再会だというのに逃げるとは悲しいな。
「《動くな》」
その一言でシスター達の動きが止まる。
「か、身体が動かない…………」
「ど、どうして…………」
困惑するシスター達。支配の精霊の力でこの空間は俺が支配している為にシスター達は自分の意思で指一本も動かすことは出来ない。
「くっ! 《パラライズ》!」
院長はシスター達が動かなくなったことに驚くことなく俺の動きを封じようと状態異常魔法を発動させた。
「ハハハハハハハ! これで身体が痺れて動けまい!」
「そんなことないけど?」
「は?」
状態異常魔法が直撃したにも関わらず、俺は平然としていることに院長は間抜けな顔を晒す。
精霊の加護を受けているのも大きいけど、レベル差が離れていることと魔法耐性のスキルを持っている俺には少なくとも院長の状態異常魔法の影響は受けない。
頑張ってレベル上げをした甲斐があったもんだ。
「な、何故だ!? 何故動ける!?」
自分の魔法が効かなかったことに驚いて後退りする院長に俺は笑みを見せて教える。
「レベル差だよ。あれからだいぶ強くなったんだ。あんたに奴隷にされたおかげで俺は強くなった」
「ひぃぃぃ!」
怯える院長の姿。恐らくさっきの魔法が自分の一番強い魔法だったのだろう。
情けなくも悲鳴をあげている。
「わ、私が悪かった! 私にできることがあればなんでもする! だから命だけは助けてくれ!」
涙と鼻水を流してみっともなくも命乞いをする。
ああ、本当にこんな奴を俺はどうして信じていたのだろうか? ただのクズなのに。まぁいい、今はそんなことよりもこいつには聞きたいことがある。
「シャーレはどこだ? この孤児院にいないことはもう知ってんだ」
剣を喉元に突き付けて尋問する。すると。
「シャ、シャーレはもう、ここにはいない…………」
「…………売ったのか?」
「ち、違う! あの子は帰ってこない君を探しにここを出て行ったんだ!」
「シャーレが………………いつ?」
「もう二年も前になる。痺れを切らしたあの子は私達の目を盗んでここから出て行った」
「行き先は?」
「わ、わからない…………本当だ」
シャーレはもうここにはいない。
その事実だけが分かった俺は院長の喉元から剣を離す。
「そうか、俺を探しにここを出て行ったのか…………」
確かにシャーレは短気というか我儘なところがあったからな。自分の我儘を貫く為に無理にここから出て行く姿が目に浮かぶ。
「ゆ、許してくれるのか…………?」
恐る恐る尋ねてくる院長に俺は言う。
「許すわけないだろうが。あんたがしてきたことは決して許されることじゃない。これまで人の命で食べてきたんだ。今度は食べられる側になったあんたに人権なんてあると思うか?」
「ひぃ!」
「だけど安心しろ。命を奪うことはしない。一応は俺の育て親でもあるからな」
5年間という短い期間の。
「だから選べ。自らの意思で自首するか、あんたがこれまで孤児にしてきたように奴隷にされるかを」
院長は一瞬の迷いを見せるも前者を選んだ。
こうして院長と院長の悪事に加担していたシスターはお縄についた。
本当は殺そうとも思った。少なくとも騙されて奴隷にされたその時は。だけど、ただ殺したとしてもそれは俺の気が晴れるだけ。それに俺と同じ孤児に院長の死体など見せるわけにはいかなかった。
孤児院は解体して孤児はそれぞれの別の孤児院に預けられることで解決した。
もうこれで奴隷にされる孤児は出てこないだろ。だが、
「お前は今、どこにいるんだよ? シャーレ」
空を見上げながら俺はそう呟いた。




