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外れスキル翻訳でチートに  作者: 幻影十夢
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喋らないの魔王の頼み

それは何の前触れもなく突如現れた。

俺の索敵スキルを掻い潜り、周囲を警戒している俺の背後から音も気配もなく、まるで瞬間移動でもしたかのように現れたそいつの刃に喉を斬り裂かれた。

「あっぶね~~~」

だが、俺の喉に傷はない。当然出血もしていない。正確には喉は斬り裂かれたけど元に戻った。

それは不死の精霊の加護。その力は俺を一時的な不死にする。この力を使っている限りは例え首を斬り落とされようとも元に戻るのだが、あくまでこの精霊の加護を使っている時だけだ。

用心の為に不死の精霊の加護を使っていたから死は回避できたけど、もし使っていなかったら俺はここで終わっていた。そう思うとゾッとするが……………………。

俺は俺を殺そうとした相手を睨む。

「いったい何の真似だ、冥府の魔王、マトハル」

俺を殺そうとしたのは結晶の魔王、クリスタルノヴァと共にアリアの屋敷にやってきて協力関係を結んだ冥府の魔王マトハル。その手には漆黒のナイフが握られている。

索敵スキルを掻い潜ることができたのも俺の背後にピンポイントに転移したせいだろう。それならスキルも音も気配も悟られることない完全な奇襲だ。

そして俺を殺そうとしたマトハルはただ黙って俺を凝視する。

「………………………」

無言、ひたすら無言。

表情一つ変えずにただ黙って俺を見てくるマトハルに俺は苛立ちを覚える。

「黙ってないで答えろ」

「………………………」

そう言っても何も答えない。ただ無機質ともいえる何の感情も込められていない目で俺を見てくるだけ。

このままじゃまずいな……………………。

今はこの場にいるのは俺と魔王であるマトハルだけだが、この魔王は俺を殺そうとした。その理由はわからないけど、もしこの魔王に戦闘の意思があるというのならまずい。

一度潜入がバレてしまえば今後の潜入がより難しくなってしまう。それに魔王相手に余裕で勝てると言われればわからないが本音だ。

レベル差もあり、精霊の加護を授かっていたとしても戦いに絶対はない。それに魔王マトハルは煉獄という意味の分からないスキルを取得して尚且つそのスキルレベルが最大値になっている。

それ以外のスキルレベルも高い。戦うにしてもせめて場所を変えなければ。

銃を手にして警戒する俺に不意にマトハルが踵を返して俺に背後を見せたと思ったら歩き出した。

「へ?」

突如の背中を見せて歩き始めたと思ったら歩みを止めてこちらをチラ見してくる。

ついて来いってことか………………?

いきなり殺そうとして、今度は自分について来いってか? こっちはそれどころじゃないっていうのに。いったいなんなんだ、こいつは?

けど、このままこいつを放置した方が後々面倒になりそうだな……………………。それにこいつは転移魔法を持っているから最悪の場合強制的にどこかに連れて行かれる可能性もある。

ここは大人しくついて行くとして、次に何かしてくるというのならその時は対処する。

俺はマトハルについて行くことに決めた。

もちろん最大限の警戒をしながら即座に戦闘ができる、いや、マトハルが何かする前に無力化できるように心構えをしておく。

魔法やスキルはともかくレベルとステータスは俺の方が上だ。例え転移魔法を使って逃げようとしても魔の精霊の力で魔法を封じてやる。

警戒しながら前を歩くマトハルに続く。途中で俺がついて来ているのか何度か振り返るもその足は止まることなく進んでいく。

いったいどこに向かっているんだ?

そもそもどうして徒歩なのか? 俺を目的地に連れて行きたいのなら転移魔法を使えばいいものを。

色々と思うところもありながら俺は地下に繋がる階段を降りて行くと、そこで俺は異臭を嗅ぎ取った。

血の臭い、腐敗臭、そして死臭。それらの匂いが充満しているそこは研究所だ。

手術台、拘束具、多種多様の薬物や実験に使うであろう器具。そしてその近くには牢屋に閉じ込められている吸血鬼族。いや、それ以外の種族やモンスターもいるが恐らくはモルモット。

そしてなにより目に入ったのは頑丈に拘束されている見たこともないモンスターがいる。それも複数体も。

俺は口に手を当てながら資料が置かれている机に歩み寄ってその資料に目を通す。

「………………なるほど。ここは新しいモンスター、キマイラを生み出す実験場ってわけか」

魔族がモンスターを操る術を会得しているのは知っている。だけどこれは人とモンスターを組み合わせて強力なモンスターを作り出す人体実験場だ。

道理で城内の警備が手薄なわけだ。ここにいる魔族は手短なところから次々に実験材料にしているんだ。都内の人達が平和なのも貴重な実験材料を都市の外に逃がさない為にいつも通りにしているか。

それに実験には金が要る。恐らくは国財を使って実験をしているな……………………。

こんなのリスティアが知ったら卒倒するぞ。

だけど1番気になることといえば、どうして魔王であるこいつが俺をここに連れて来たのかだ。

「なぁ、どうして俺をここに連れて来た? いやそもそもどうしてお前がこのことを知っていたんだ?」

「………………………」

冥府の魔王は何も答えない。ただ、牢屋にいる何かを見つめている。

それが気になって魔王が見つめる牢屋の中を覗き込むとそこには1人の女性がいた。それも吸血鬼族でもなければ人間でもない。その背に大きな翼を持つ翼人族の女性だ。それも珍しい漆黒の翼を持つ翼人族。

翼人族は飛行能力に優れ、風魔法に長けている。そして種族特有のその翼は純白で有名だが、牢屋にいる女性の翼はまるで常闇のように深く黒い。

けど、全裸にされて手足には拘束具、首にはかつて俺が嵌めていたのと同じ奴隷の首輪がある。更には体中がまるで拷問を受けたかのように傷だらけだ。

他の人達とは違う扱いのようにも感じるけど、今はそれは置いておく。

「なぁ、この人とはどういう関係なんだ?」

「………………………」

質問を投げるが予想通り返事は返ってこないことに溜息を溢して。

「知り合いならお前が助けた方がいいんじゃないか?」

そう言うとマトハルは牢屋の鉄格子に触れた瞬間、弾かれた。

よく見れば逃亡防止かもしくは救出させないようにしているのか、法陣魔法があちこちに描かれている。

手出しができないから俺に助力を求めに来たってことね。

法陣魔法は直接な戦闘には不向きだけどこういうのには向いている。それに法陣魔法で厄介なのは一度発動したらその効果は絶対。魔法陣を破壊するか、注がれた魔力が枯渇するまで手を出すことが出来ない。

まぁ、俺以外はだけど。

意識を集中させて魔の精霊の力で魔法陣を打ち消して鉄格子を破壊して牢屋の中に入ると破壊の精霊の力で首輪を壊してついでに手足の拘束具も壊して自由の身にするが、永い間ここにいたせいか意識が曖昧になっている。それに傷も酷い。

「《エクストラヒール》」

治癒魔法で傷を治して牢屋から出すとマトハルは翼人族の女性を愛しそうに抱きしめる。

それを見た俺は思わず笑ってしまう。

色々と滅茶苦茶なやつだけど、友達を救いたかっただけだったんだな。

できればそれを言葉で教えてくれたら俺も色々と誤解せずに済んだのに……………………。

でもまぁ、感動の再会は後回しにしてもらおう。この城にいる魔族がいつ戻ってくるのかわからないのだから。

「感動の再会のところ悪いけど、出来れば後にしてくれ。俺はやることを済ませてから脱出するからお前はその人と一緒に転移魔法で先に逃げて―――」

くれ。という前にマトハルは翼人族の女性を俺に押し付けて転移魔法でどこかに消えていった。

「っておい!? いったい―――」

「まさか、私の研究施設に侵入者が潜り込んでくるとはね」

突然姿を消したマトハルに文句を言おうとした瞬間、背後から声が聞こえた。

やべぇ、思わず索敵スキルを発動しておくの忘れていた。

現れたのは如何にも研究者といった風貌の男性。戦闘が得意なようには見えないけどその瞳は紫紺色。魔族は堂々と俺の前に立つ。

「吸血鬼族……………いや人間か。まさか人間如きがここまでやってくるとは思いもしなかったよ。ああ、すまない。言葉は通じないか」

「いや、わかるぞ」

なんせ翻訳スキルのレベルが最大値だから。

「ほう? なら話は早い。それを置いていってくれ。それは私の大切な研究材料だからね。翼人族のなかでも珍しい漆黒の翼を持つ翼人族であるその女の内包にはとてつもない力を有している。その女と他の種族を組み合わせればきっと強力なキマイラを生み出すことが出来るかもしれないのだから」

「………………何故魔族であるお前がこの国を狙った? モンスターの研究がしたいのなら自分の国ですればいいだろう?」

「自分の国だけでは限界があるのだよ。それと1つ勘違いしているようだけど私の専門はモンスターではなく生物だ。つまり生きているモノ全てが私の研究材料なんだよ。だからこそ他の種族よりも全体的なスペックが高い吸血鬼族はいい研究材料になってくれている」

「何の為にそんなことをしている? 魔王の命令か?」

「魔王? 命令? 君が何を言っているのかは知らないけど私の行動理念はただ一つ‶研究〟だ。それ以外の事に興味はないよ」

…………………嘘は言っていない。つまりこいつの後ろには魔王はいないということか。

ならこいつを倒せば全て解決するが、今はこの人が優先だ。

「さて、話はこのぐらいにして捕縛させて貰うとしよう」

パチン、と指を鳴らした瞬間、床全体から鎖が出現してきて俺達の身体に巻き付く。どうやら床にも法陣魔法を描いていたのか。それも気付かれない様に巧妙にカモフラージュして。だが。

「なっ!?」

「生憎と俺には効かない」

魔の精霊の力で鎖を打ち消して俺は天井を破壊して脱出する。

本来ならあそこであの魔族を倒しておくのが1番いいのだけど、あちこちに法陣魔法が描かれているこの城では何が起きるかわからない。俺だけならともかくこの人にまで被害が及ぶかもしれない。

あの魔王がどうしてこの人を俺に渡したのかはわからないけど、今度文句を言ってやる!

そうして俺は窓から空に向けて脱出の際の合図をイサベルに送り、城から脱出する為に暴れて貰う。

そうして俺は冥府の魔王が助けたかったと思われる翼人族の女性と共に城から脱出した。

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