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外れスキル翻訳でチートに  作者: 幻影十夢
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自国の為に

吸血鬼族の王女様、リスティア様のことをアリアに相談する為に俺は一度王女様と一緒に屋敷に帰り、王女様のこれまでの経緯と現状。そして俺の助けを求めにここまでやってきたことを一通り説明すると。

「ダメよ」

アリアははっきりと王女様の助けを拒否した。

そのことに若干驚きながらもアリアの言葉を王女様に伝えると………………。

「ど、どうしてですか!? 謝礼でしたら必ず!」

「リスティア様。そういう問題ではないのです」

「どういうことだ?」

当然異を唱える王女様だけどアリアの様子に怪訝した俺はその理由について尋ねると、アリアが言う。

「魔族が他種族に侵略を開始したの。もう既に被害を受けている国が出ているわ」

「っ!?」

その言葉に俺は絶句した。

「以前エルフの街で魔族がモンスタの大軍勢を引き連れてきたでしょ? エルフの街以外にも魔族は他種族の国を襲っているのよ」

襲われたのはあの街だけではなかったのか……………………。

「ここ最近のモンスターの異常発生も原因を辿ればあれは魔族の仕業だったのよ。人工的にモンスターを量産させてそのモンスターを操る術を魔族は手に入れているの。あの時の3万のモンスターは魔族からしてみればたいした数ではないのでしょうね」

「そんなことが…………………」

「現在、魔族を打倒する為に魔族を除いた他種族同士で同盟を結ぶ話が出てきたわ。恐らくは戦争が近いのでしょう。だからその同盟が結ばれるまで今はどの国も護りに入っているの。考えてもみなさい。あの時の同等以上のモンスターの軍勢が自分達の国にやってくることを」

確かにそれは怖い……………。

あの時は俺達だからどうにかなった。だが、普通に考えて3万かそれ以上のモンスターと戦う術なんてそうそうありはしない。どの国も護りに入るのは当然の考えだ。

「正直に言うと、それだけのモンスターに対抗できるのはリブロ、貴方達だけだと私は思っているわ。だから吸血鬼族の国を救う為にこの国から貴方達を離すわけにはいかないのよ。その間に魔族がこの街を襲ってこない保証はどこにもないもの」

アリアの言っている事は正しい。

ここから吸血鬼族の国まで時間がかかる。早くても最短で1ヶ月だろう。そして問題を解決するにも時間が必要になるからこの街に戻ってくるまで良くても2ヶ月以上はかかると思った方がいい。

そしてその2ヶ月。アリアの言う通り、魔族がこの街を襲わない保証などない。

国を担う貴族の一人として、そして自分の故郷を護りたいアリア自身の気持ちも含めて俺達をこの国から出したくないアリアの考えは理解できる。

でも……………………。

「それでしたら私はどうしたら……………………ッ!?」

それはやっとの思いでここまで辿り着いた王女様の苦労と犠牲となった家臣達があまりにも報われない。

「………………………リスティア様には申し訳ありませんが、現状を考慮すれば私達は自分達の国を護る為に油断がいない状況なのです。貴女様の国を助ける余裕はどこにもありません」

淡々と王女様の救援を拒否するアリアに王女様は顔を俯かせる。

アリアも好きでこんなことを言っているわけではないことぐらいわかっている。いつもなら吸血鬼族に恩を売る為など言って俺達を救援に向かわせただろう。だけどそれをしないのはただ単に天秤にかけただけだ。

自国か他国か。護るべきものはどちらかをただ冷静に考えて天秤にかけた。

「リブロ」

アリアに呼ばれて俺はアリアの言葉を王女様に告げる。

「リスティア様。これは気休めにもなりませんが、貴女様の国はまだ救える手段があります。吸血鬼族の国を乗っ取った魔族が国王を操っているというのでしたらその魔族の目的は吸血鬼族を滅ぼすことではなく、支配すること。ですので必要以上に民を殺す真似はしないと思われます。そしてまだ王族の血を受け継がれている貴女様が生きている限り、希望は潰えません」

王女様が生きている限りはまだ挽回できるチャンスがある。だけど………………。

「それまではどうすることもできないのですか……………………?」

それは一刻でも早く国と父親を救いたい王女様の気持ちをないがしろにしてしまう。

「はい。現状を考えれば今はどうすることもできません」

それでもアリアは淡々と事実を口にする。

今は手を出すことが出来ない。それを告げられた王女様はただ悔しそうに手を握りしめる。

「一部の王族に他種族にも寛容な人がいます。その人に吸血鬼族の現状をお伝えしたら何かしらの手は打ってくれるでしょう。少なくともそれまではリスティア様はこちらで保護する形でこの屋敷に生活して頂きます。不慣れでしょうが、そこはご了承ください」

「………………………わかりました」

どうすることもできない現状では王女様はただ頷くことしかできなかった。

「ユミィ、レノア。リスティア様をお部屋まで案内してさしあげて」

「「はい」」

部屋の端に待機していた二人が王女様を連れて部屋に案内する。

「今は一人になって考える時間も必要でしょう。そっとしておいてあげなさい」

「………………………ああ」

王女様の心情を最大限まで配慮したアリアに何かを言うのは間違っているだろう。戦争が起こるかもしれないこの状況では他国に手を貸す余裕はない。それでもアリアは多少の危険も考慮して王女様を匿ってくれている。むしろアリアに感謝するべきだ。

「こういうとき、どうしようもないな……………」

戦いになればただ相手に勝てばいい。チートの俺なら苦も無く相手を倒すことができる。けれどこれはおいそれと手を出していい問題ではない。現状を考えれば尚更だ。

いくらチートでも向き不向きがあるもんだな。こういう時、俺は無力だ。

幼少の頃のようにただ己の無力を噛み締めるしかできない。


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