別れの時
エルフの国王様から恩賞を授かった俺達。
セシルには米や味噌、醤油などをそれなりの量で貰い、イサベルは1億アルスの大金を手にして俺はエルフが持つ魔導技術が記された羊皮紙を貰ってそれを見たら驚いた。
それは俺やイサベルがいた世界の科学技術を用いられたものだからだ。
この魔導技術を開発したのは間違いなく転生者。元々科学者だったのか、それとも特典なのかまでは流石にわからないけど、この剣と魔法のファンタジー世界に科学技術を持って来たのは確かだ。
電気の代わりに魔力を用いているから科学技術ではなく魔導技術と呼ばれるようになったかもしれないけど、そこんとこはどうでもいい。
だが、今更だけど魔族がエルフの持つ魔導技術を欲する理由がわかった気がする。
この剣と魔法のファンタジー世界に俺達の世界の科学技術を用いたらそれこそチートだ。銃を開発、量産できるようになれば戦争事情を一変させてしまう。
不幸中の幸いなのはエルフはこの魔導技術を生活、防衛に使っていることだ。もし、エルフにその気があれば魔導技術を戦争用の兵器に活用してとっくに他国、他種族に戦争を仕掛けている。
「だけど…………」
もし、魔族に転生者が現れて科学技術の知識を魔族に提供でもしたらと思うとゾッとする。
少なくとも魔導技術を手に入れようとした簒奪の魔王、リスティヴィオは科学技術を知らないようだ。もし知っているのならわざわざエルフを襲う必要がない。
「………………………一応、対策は考えておくか」
俺は最悪の事態を想定して万が一に備えての対策を頭の片隅に入れておく。
何事もないのが一番だけど、人生とはそう都合よくは行かないものだ。
「まぁ、今はそのことは置いておいて…………………レベルが150になったな…………………」
リブロ・リーベラ
Lv150
体力:1650
筋力:1510
耐久:1305
敏捷:1496
魔力:1471
スキルポイント:128
スキル:翻訳LvMAX・回復魔法Lv9・治癒魔法・LvMAX・炎魔法Lv5・風魔法Lv5・水魔法Lv5・土魔法Lv5・鑑定Lv6・剣術Lv4・魔力強化Lv7・暗視Lv4・索敵Lv7・魔法耐性Lv5・物理耐性Lv5・危険察知Lv1
久しぶりにステイタスウィンドウを見てみたらレベルがちょうど150になっていた。モンスターの軍勢を6割倒したからその分、レベルが上がったのだろう。
だけど本来はレベルやステータスには上限がある。
どんなに頑張ってレベルやステータスを上げたとしてもレベルは100でステータスはだいたい1000辺りで臨界到達する。何故ならそれ以上体内に魔素を吸収することができないから。仮に無理して魔素を吸収すれば魔素が暴発して肉体を崩壊させてしまう。
俺も本来ならレベルは100で止まる筈だった。だが、何事にも抜け道というものがあり、偶然にもそれは俺に与えられたものと同じだ。
―――それは精霊の加護。
精霊とは本来、魔素の塊が自我を持っているような存在。その精霊の加護を与えられている俺は吸収した魔素を常時安定させることで臨界到達を超えて臨界突破することに成功した。
そういう意味では既に光の精霊の加護を与えられているセシルも臨界突破することができるし、もしもの時の為に今度精霊に声をかけられたらイサベルにも加護を与えてくれないか訊いてみるとしよう。
本当、精霊様々だ………………。
「あ、リブロさん。こちらにいましたか。アリアさんが呼んでいましたよ?」
「エリエールさん。わかりました、すぐに行きます」
エリエールさんに声をかけられて俺はステイタスウィンドウを閉じてアリアの所に向かう。それにしてもエリエールさんもだいぶ歩けるようになったな。まだ杖は必要みたいだけど足そのものはもう大丈夫そうだ。
毎日の治療とリハビリ、エリエールさん本人の努力もあって短期間で車椅子から脱却して自分の足で歩けるようになった。
まだ支えとして杖が必要で長い距離歩けるわけではないけど、歩き方自体もうスムーズに行えるようになってきているから杖ももうすぐいらなくなるからもしれない。
いいことだ。そう思いながら俺はアリアの所に向かう。
「アリア、呼んだか?」
「ええ、話しておきたいことがあるの」
アリアに呼ばれた俺はその話を聞いて納得するも少しだけ寂しくなり、ぼやいた。
「そっか。そろそろか………………」
エリエールさんとお別れの時だ。
「そうですか…………………」
そろそろ自分達の国に帰ることを伝えるとエリエールさんは寂しくも頷いた。
エリエールさんの足はもう自力で歩けるほどまで回復している。それならもうクエストは達成している為に達がこの街に留まる理由がない。だから俺達は自分達の国に帰らないといけないのだ。
「エリエールさんにはお世話になりましたが………………」
「あ、いえ、お仕事で来られたのですからしょうがないですよ」
俺達もそしてエリエールさんも仕方がないことだということは重々承知している。ここがエリエールさんの故郷であると同時に俺達にも帰るべき街と家がある。だからずっとここに生活するわけにはいかないんだ。
もしアリアが別れの事を言ってくれなければ俺は治療を理由にずっとこの街にいたかもしれない。アリアは恐らく、それを察したから別れの事を持ち出したのかもしれない。
「ですけどもう1日だけでも泊っていきませんか? せめてご馳走でも」
「いえ、それではいつまでもご厚意に甘えてしまいますので」
もう1泊だけでも、と言うエリエールさんの言葉をアリアははっきりと断った。
もう1ヶ月ぐらいこの家に泊まらせて貰った。アリアの言う通りこれ以上エリエールさんに甘えるわけにはいかない。
「………………………わかりました。それでは皆さん、道中どうかお気をつけて。それとリブロさん」
「はい?」
エリエールさんは俺の手を取って慈母のような優しい顔で言う。
「次は娘と一緒に帰って来てくださいね? 私はいつまでもこの家で待っていますから」
「…………はい!」
そうだな。今度はクエストではなくて俺個人としてシャーレと一緒にここに来よう。あの奔放エルフがどこにほっつき歩いているのかはわからないけど、必ず見つけ出してやる。
エリエールさんと別れを告げて俺達は馬車に乗り込み、自分達の街に向かう。エリエールさんは俺達が見えなくなるまでずっと手を振って見送ってくれた。その姿は幼少の頃に見たシャーレに似ていて流石は親子と内心苦笑してしまう。
それとは別にこの街では得るものがあった。
シャーレが生きてこの街に帰ってきたことがわかったのも大きいけどそれと同じぐらいウールさんの仇かもしれない存在についても知ることができた。
他にも問題が浮上しているけど、ひとまず街に戻ったら溜まっているクエストを消化していくとしよう。




