恩賞
3万のモンスターの大軍勢を引き連れてエルフ達を奴隷にしてエルフが扱う魔導技術を手に入れようと簒奪の魔王の命令でエルフの街に襲撃を仕掛けようとしたファビアンだが、俺、セシル、イサベル、リヴァイの4人によってその企みは失敗して生き残ったモンスターは逃走。ファビアンは捕縛。
シャーレの故郷は無事に守られて誰一人被害が出ることなく終わることができた。
そして現在、モンスターの軍勢を退けた俺達は今、エルフの国の国王、リヴェル・エル・シュタットと対面している。
ぱっと見は二十代前半の美形な男性だけどその雰囲気は魚人族の国で出会った女王と同じ、王としての風格が感じられる。
国王様の後ろには護衛と文官と思われるエルフの男性が二人。俺達はその国王様と対面する形でテーブルについている。
「さて、人間族と竜人族の冒険者達よ。貴殿等の働きによりモンスターの大軍勢を退くことができたことは部下から聞いている。貴殿等のおかげで我等エルフの民は犠牲を出すことはなかった。まずはこの国の王として礼を言いたい」
「いえ、当然のことをしたまでです」
シャーレの故郷を守りたかっただけだし。
「軍勢を退き、それらを引き連れていた魔族を捕えてきてくれた貴殿等の武功に対し、それなりの恩賞を以って報いたいのだが何か望みはあるか?」
エルフの言葉で話している為にセシルは何を言っているのか理解できていないセシルに国王様の言葉をそのまま教えるとセシルは勢いよく首を横に振る。
「い、いいです! 私は師匠のお手伝いをしただけなので!」
そう言って恩賞を断るセシルのそういう謙虚なところは美徳ではあるが……………………。
「セシル。謙虚なのもいいがそれでは相手に失礼だ。特に王様が直々にそう言っているのだから何か望みを言っておいた方がいいぞ?」
「そ、そんな………………。でも、私は本当に何も…………………」
失礼がないようにそう注意するもセシルは本当に欲しいものがないのだろう。
「あ、師匠。それならコメやミソ、ショーユでもいいですか? それなら私も欲しいです」
如何にも名案を思い付いたといわんばかりの顔でそう言ってくるセシルに苦笑しながら俺はセシルの望みを国王様に告げると頷いてくれた。
「わかった。それなりの量を用意しておこう」
了承してくれた国王様。するとセシルに続いてリヴァイが。
「妾は欲しいものなどはない。久方ぶりに存分に暴れることができたのでな」
スッキリした顔で恩賞の受け取りを拒否した。
「私はそちらが用意できるだけの金銭でお願いします」
イサベルは金を要求した。
まぁ、金は貰って困るものではないからな……………………。
「貴殿は? 望むのであれば一代限りの爵位とわずかではあるが領地を用意するが?」
国王様はまだ望みを言っていない俺にそう言ってくる。
爵位か…………。確かにアリアのことを考えれば欲しいといえば欲しいけどエルフの国の爵位と領地はあったとしてもただ面倒事が増えるだけだし、ここは……………………。
「エルフの持つ魔導技術の知識を求めます。勿論一部で構いません」
「魔導技術は我々エルフにしか扱えんものもあるが、それでも構わないのか?」
「はい。ただ知識として身に付けておきたいだけですので」
「ふむ。貴殿等の働きを考えればもう少し欲張ってもよいものだが………………まぁよい。すぐに貴殿等の望みのものを手配しておこう」
「ありがとうございます」
恩賞を頂戴して俺達は国王様がいる王室から出て恩賞は後日、ギルドを通して渡してくれるとエルフの兵士から聞いて城を出るとセシルは大きく息を吐いた。
「はぁ~~~~き、緊張しました…………………」
「お疲れ様」
苦笑しながらセシルの背中を擦りながら労う。
まったく、1人で3000以上のモンスターを倒したとは思えない肝の小ささだな。
「それで? 本当に魔王がエルフを奴隷にしようとしたの?」
「………………………ああ、ファビアンの記憶を直接見たから間違いはない」
真剣な顔で尋ねてくる親友の問いに俺は肯定する。
「でもそれって各国の条例に引っかかるよね? いくら魔族といってもそこまでするほど馬鹿じゃないはず」
イサベルの言いたいことはわかる。
この世界はそれぞれの種族が国を建国して生活している。そして他種族同士で争いなどが起きない様にいくつもの条例をあるのだが、魔族はその条例を無視するかのように3万のモンスターの大軍勢をエルフの街に向かわせた。
いくら魔族が他種族を見下す傾向があるとしても条例を破ってまで軍勢を送り込むような馬鹿ではない。第一、その条例が結ばれてから先日まで破られたことなど1度もなかったはずだ。
長い歴史のなか、ずっと守られてきた条例を破ってまでエルフの魔導技術を手に入れたかった? いや、それにしても無理がある。最悪の場合、魔族は同族以外全ての種族を敵に回す可能性だって十分にある。
もしくは……………………。
「戦争でも起こそうとしているんじゃ……………」
イサベルの推測に俺は同意する。
もしくはエルフと戦争する為にわざとそうしたかもしれない。
ファビアンの記憶では簒奪の魔王の本当の企みまではわからない。ファビアンはただ命令を受けてそれを実行しただけに過ぎない。魔王が何を求めて、何の為にエルフの街を襲ったその真相は謎のままだ。
「………………六大魔王か」
魔族は六人の魔王によって統治されている。
簒奪の魔王、リスティヴィオ。
冥府の魔王、マトハル。
愛欲の魔王、ラディザイア。
烙印の魔王、スティグマ。
混沌の魔王、ロコケイオス
結晶の魔王、クリスタルノヴァ。
この魔族六人によって統治されて魔族にとって魔王は畏敬の存在であり、絶対的な強者。歯向かえば抗う術すらなくただ蹂躙されるのみ。
ファビアンはその魔王の一人、簒奪の魔王リスティヴィオの命令で動いていた。
どうしてエルフを奴隷にしようとしたのかはわからない。けど、魔族で何かが起きているのは確かだ。
「はぁ~」
そこまで考えて思わずため息が出る。
戦争だけは勘弁して欲しいな……………………。
内心そうぼやきながら俺達はエリエールさんの家に帰宅する。
「ただいま戻りました」
「あ、お帰りなさい」
帰ってきた俺達を出迎えてくれたエリエールさん。それとエプロン姿のアリアが。
「お帰りなさい。お腹でも空かしていると思って簡単なものを作ったのだけどどうかしら?」
料理しながらエリエールさんと一緒に俺達の帰りを待っていてくれた。
というかアリアって料理できたんだな。お嬢様だからてっきり苦手とばかり………………。
「私だって女よ? 料理ぐらいするわ」
俺の心を読んでいるかのようにアリアの冷たい眼差しが突き刺さる。
「そ、それじゃいただくとするか」
アリアの冷たい眼差しから逃れるようにそそくさと移動して俺達はテーブルについてアリアが作ってくれた手料理を堪能する。
「婚約者が作ってくれた手料理の味は?」
「………………美味しいよ」
親友のからかいの言葉にそう返す。




