圧倒的な戦い
3万のモンスターの大軍勢を精霊の力で大きく削った俺は残った残党を殲滅する為に地上に降りて殲滅戦を開始する。
「疾ッ!」
俺達の中で一番最初に動いたのはイサベルだ。
地面が爆発でもしたかのように圧倒的な脚力で発射されたイサベルは自らを砲弾と化してモンスターの軍勢に突っ込み、秘宝であるティンニーンでモンスターを葬っていく。
レベルが92のイサベルが砲弾と化した。砲弾となったイサベルを止めることなどできず、イサベルの前方にいるモンスターは己の死に気づくことなくただの肉塊となる。
一騎当千。まさに今のイサベルにはその言葉が似合う。
それとは別に、この世界にも戦車があればイサベルと砲弾。どっちが速いか比べてみたいな……………。
もはや蹂躙となっているイサベルを他所に本来の姿となったリヴァイが口を大きく開けて水のブレスを放ち、モンスターを殲滅していく。
『うははははははは!! 雑魚共よ、精々妾の憂さ晴らしになるがよい!!』
そう喚きながらブレスを連発するリヴァイに俺はただストレスをモンスターで発散しているようにしか見えない。
まぁそれでも流石は海龍リヴァイアサンだ。得意の海中でなくとも問題はないようだな。
問題がないことに安心していると不意に戦場に真っ白な光が輝き出す。そこには秘宝ユグドラシルを持つセシルが光り輝く5つの蕾を出現させて超高温の熱を帯びた光線をモンスターに向けて放出させる。
「五煌光華!!」
山に大穴を空けるほどの熱を帯びた光線が5つ。それが一斉にモンスターに向けて放出するとモンスターは消滅してセシルの眼前にモンスターの姿は消えた。
今ので軽く3000は消えたんじゃないか………………?
そう思えるぐらいの威力を発揮したセシルの秘宝ユグドラシル。少なくとも俺は今の攻撃をまともに喰らうのだけは避けたいと心から思った。
しかし蛮勇にもモンスターは今の一撃でセシルが消耗したと思ったのか、セシルを倒そうと数で襲いかかってくるのだが、セシルはユグドラシルを地面に突き刺して今度は蕾ではなく茨を出現させる。
「茨の棘剣!!」
そして今度はモンスターは茨の餌食となった。
光線の次は茨。おっかない攻撃だな。それでもまだ全力じゃないのが恐ろしくも頼もしい。
あれでまだ光の精霊の力と限界突破のスキルを使っていない。もし、使っていたらもしかしたら俺を凌ぐだけの実力を発揮するかもしれない。
現段階でそれだ。セシルはまだまだ成長の見込みがある。そう遠くない未来で俺を超える実力者になるかもしれないな。
「さて」
もはや過剰ともいえる圧倒的な力を発揮してモンスターを殲滅する皆に問題がないことに安心して俺も目の前のモンスターに集中する。
「俺の声が聞こえているだろ? だから一度だけ警告する。死にたくない奴は今すぐ逃げろ。追いはしない」
警告を促すが、モンスターは怯むこともなく俺に襲いかかってくる。
「炎精霊の息吹」
襲いかかってくるモンスターを炎の精霊の力で灰も残さず一掃する。
このまま皆でモンスターを殲滅するのも時間の問題だけど、統率者がいるというのなら先に捕えておいた方が楽そうだな。イサベルもリヴァイもセシルも放ってもいいみたいだし、さっきの技が連発出来ない以上は俺は敵の統率者でも捕まえに行った方がいいかもしれない。
索敵スキルを使ってモンスターとは違う別の存在がいるかどうか調べる。すると……………………。
「見つけた」
反応があった。
モンスターの集団にいながら一つだけ全く違う反応。統率者はこいつで間違いないだろう。俺は風の精霊の力で空を飛び、反応があった統率者のところまで一直線に向かう。
そして統率者と思われるそいつの前に着地する。
「なんだぁ? 貴様は……………」
灰色の髪をした大振りの杖を持つローブ姿の男性。恰好は如何にも魔法使いや魔導士の恰好をしているが、俺が気になるのは奴の瞳の色だ。
「紫紺色の瞳………………お前、魔族だな?」
エルフという種族の耳が長いように魔族にも一目で種族がわかる身体的特徴は瞳の色だ。紫紺色は魔族の特徴。瞳の色で俺はすぐに魔族だと気付けた。
「そういう貴様は人間だな。何故エルフが住まう街に人間がいると問い詰めたいところだが、先ほどからの攻撃は貴様等の仕業か?」
「ああ、モンスターが全滅するのも時間の問題だ。だからここで大人しく捕縛されることを勧める。俺個人も魔族に訊きたいことがあるしな」
投降を勧めるも魔族は可笑しそうに口角を上げた。
「何を言い出すかと思えばそんなことか。貴様は既に私に勝っているとでも思っているのか? 浅はかだな、人間という種族は」
「…………………その口ぶりからして他にも何か手があるみたいだな」
「その通りだ。モンスターなどただの駒にすぎぬ。知るがいい。そして絶望せよ。圧倒的なまでの力―――」
魔族が何かする前に俺は魔族の腹に拳を叩き込んで黙らせた。
「ぐはッ……………」
「悪いな。律儀にお約束を守るつもりはないんだ」
そもそも魔法を使うのなら事前に接近された時の対策ぐらいしとけよ。まぁ、俺相手には無駄だろうけど。
若干呆れながらも己の実力に驕っている魔族の杖を奪ってへし折るとモンスターがまるで正気を取り戻したかのように辺りをキョロキョロし始める。
あー、もしかしてこの杖でモンスターを操っていたのか。
モンスターはまだ大暴れしているセシル達の強さに当てられて逃げていくなかで魔族が顔を上げて俺を睨み付けてくる。
「き、貴様……………ッ! よくも私の邪魔を!! ガッ!?」
睨み付けてくる魔族の顔を掴み、持ち上げながら尋問を始める。
「さて、魔族。お前に訊きたいことがある。どうしてエルフの街を襲った?」
「だ、誰が、人間なんぞに………………ッ!」
まぁ、答えるわけがないよな。変に意固地になっても面倒だし、直接こいつの記憶を覗かせて貰うとするか。
俺は記憶の精霊の力を使ってこの魔族の記憶を覗き見る。
…………………ふーん、なるほど。
「まさか本当に魔王が実在していたとはな。それも6人。そしてお前は六大魔王の一角である簒奪の魔王の命令でエルフを奴隷にして魔導技術を手に入れようとした。違うか? ファビアン」
「!? な、何故貴様がそれを………………ッ!?」
「それを教える気はない。さてこれでエルフの街を襲った理由についてははっきりした。最後に俺からの個人的な質問なんだが、数か月前にとある商隊を襲った爆発系統の魔法かスキルを持つ魔族に心当たりはあるか? 答えないのなら捕縛は止めてここで殺す」
頭を潰さんと少しずつ力を込めて痛みに呻くファビアンは助かりたい一心でか、俺の質問に答えた。
「し、知らん! だが爆発魔法を使う魔族なら心当たりならある!」
「…………………そいつの名は?」
「ア、アルス! 魔族では〈爆発狂〉のアルスと言われている! 好戦的で同族だろうか他種族だろうか誰かれ構わず爆発魔法を使うイカれた奴だ!」
―――〈爆発狂〉のアルス。その名、覚えておこう。
ようやく手掛かりを掴めたウールさん達の仇かもしれない存在を必ず見つけ出して真相を確かめてやる。
「も、もういいだろう! 離せ!」
「悪いがそういうわけにはいかない。お前には少し眠って貰う。安心しろ、別段命まで取ることはしない」
こいつにはまだ色々と利用価値がありそうだし、こいつ自身の処遇はエルフに決めさせた方がいいだろう。
それまで何もできない様に意識を絶たせて貰うとするか。
ファビアンの意識を刈り取って背負い、俺は皆の所に戻る。
さて、魔王のことについて皆にどう説明しようか………………? きっと驚くだろうな。




