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外れスキル翻訳でチートに  作者: 幻影十夢
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魂に刻まれた

シャーレの母親であるエリエールさんのご厚意に甘えてその家に暫く厄介になることになった。

本来ならクエストが終われば少し観光して帰る予定だったけど、エリエールさんの足の治療には少し時間がかかる。

「エリエールさんの足って貴方でも治すのが難しいの?」

「難しいというより、怪我をしてから時間が経ち過ぎているから少しずつ治さないと身体の方に悪影響が出てしまう恐れがあるんだよ。それに筋肉も衰えているから治ってもしばらくはリハビリが必要だな」

魔法も万能ではない。

回復魔法と治癒魔法を少しずつかけて治していくのが一番安全な方法だ。

まぁ、手っ取り早い方法といえば足を切断して《セイクリッド・ヒール》で治す方法もあるけど、流石にそんなことはしたくないし、急いで治す必要もないからな。

「時間はかかるけど歩けるようにはなるのは確かだから何も問題はないし、アリアも日頃から忙しいんだからこういう時ぐらいはゆっくりしたらどうだ?」

公爵令嬢として日頃から多忙の身であるアリアに休息の提案をするとアリアは少し考えるそぶりを見せると小さく笑みを見せる。

「………………それもそうね。せっかくエルフの国まで来たのだから観光でもしましょうか」

「ああ。せっかくだから皆で行かないか? エリエールさんに頼んでエルフの名産なんかも教えてもらうってのは」

「私としては貴方と二人で、が理想だけどまぁいいわ。皆で行きましょう」

そうして俺達はこの街の観光案内をして貰えるかどうかエリエールさんにお願いしてみるもエリエールさんは快く了承してくれた。



「エルフは肉はあまり食べませんから代わりに農作物を作る農業が発展しました。その技術は他種族と比べても随一を誇り、種類も数も豊富なんです」

街中を歩きながらエリエールさんがエルフの国についての説明をレクチャーしてくれて、俺は他の皆にもわかるように通訳する。

確かにエリエールさんの言う通り、店に並べられている品物は殆どが野菜や果物ばかりだ。

「他にも魔導技術も負けておりませんよ? この街はエルフの魔導技術の結晶とも言える結界が常時展開していまして例え空からモンスターが襲いかかってきても問題はありません。ですから私達はこうして安全に暮らせるのです」

「なるほど………………我が国も欲しい技術ね」

魔導技術の話に興味を持ったのか、アリアは興味深そうに頷く。

「まぁ、妾ならブレス一撃で破壊できるが」

「するなよ?」

お前が言うとうっかりしてしまいそうで怖いから本当にするなよ?

「あの、あれはなんですか?」

セシルがある店にある物について尋ねるとエリエールさんの口から衝撃の一言が発せられた。

「ああ、あれはミソですね」

「味噌!? 味噌ってあの味噌ですか!?」

「え、ええ、どのミソかはわからないけど多分そうだと思いますけど…………………」

味噌という言葉に俺は衝撃のあまり驚きの声をあげてしまう。

「少し寄ってみてもいいですか? できれば味も確かめてみたいのですが」

「店の人に頼めば味見ぐらいさせてくれますよ」

俺はその店に足を運び、店員に頼んで少し味見させて貰うと脳に雷が迸るような衝撃が襲ってくる。

こ、これは間違いない………………ッ! 日本の味噌そのまんまだ!!

何故異世界に日本の食べ物が……………………?

「昔、少し変わったエルフの方が大豆という作物からこのミソや他にもショーユというものを作ったみたいです。その美味しさや他の農作物との相性の良さにそのエルフの方が名付けた名前をそのまま使っているという話です」

少し変わったエルフ………………? 見た目も味も名前も日本の味噌や醤油と同じならもしかしてそのエルフは日本からの転生者だったのか? なら……………………アレもあるのか?

日本では決して外せれない日本の主食と呼べるアレが……………………。

「後それからコメという稲作もありますよ?」

「よっしゃ!!」

俺は思わず天へ向けてガッツポーズを取る。

異世界に転生して諦めていた日本の主食がまさかこんなところで再会できるなんて…………………ありがとう、名前も顔も知らない転生者と思われるエルフ。お前は異世界転生者の食の悩みを解決した功労者だ。

「何か思い入れでもあるのかしら……………………?」

「あんなにも喜んでいる師匠、初めて見ました」

「頭でもおかしくなったのかのぅ?」

ヒソヒソと話をする三人。

おいこら駄龍。誰の頭がおかしくなったって? 聞こえているからな?

日本の主食の存在に喜んでいる俺を見てエリエールさんはくすくすと微笑む。

「リブロさんは面白い方ですね。それでしたらお昼はコメを使っているお店がありますけど今日はそこでお昼にしますか?」

「ぜひ」

異世界に転生してきた初めて食べる日本の主食。今なら焚かなくてもそのまま食べられる自信がある。

俺達はエリエールさんの案内で米を取り扱っている店で昼飯にすることにした。

店内は日本の定食屋を思わせる趣があってまるで日本に帰ってきた気分だ。

そういえば両親は元気にしているだろうか? 日本のことを思い出すと両親のことを思い出す。

まぁ、今はそんなことよりも米だ。早く米が食べたい。

「ん? どうした? セシル」

席に座ろうとするとセシルが席に座ろうとしなかったので声をかける。

「あ、いえ、珍しい人がいましたので」

「珍しい人?」

セシルの視線の先にいるのは赤い髪した少女。だけどその少女は人間でもエルフでもなかった。

「竜人族ね。まさかエルフの街で竜人族を見かけるなんて思いもしなかったわ」

アリアの言う通り、彼女は赤い角と尻尾が生えている竜人族の少女だ。

歳は俺とそう変わらない竜人族の少女。まさかこんなところでお目にかかれるとは思わなかった。

まぁでも、ここに来た理由は一つだろう。

「観光とかそういうのだろう。気にせず俺達も昼にしよう」

確かに珍しいけどおかしいことはない。現に俺達だってエルフの住む街にいるんだ。竜人族がいてもなんら不思議ではない。

現にアリア達も珍しいと思いながらも特に気にすることなくメニューを見る。

ふむふむ、やっぱり定食系が多いな…………………。やはりここは米と味噌汁がある和食モドキを選ぶべきだろう。

俺達は料理を決めて店員に注文して暫く経つと料理が運ばれてくる。

その見た目、匂いは紛れもない米と味噌。

「いただきます」

俺はその料理の前に両手を合わせてお椀を持ち、味噌汁を啜る。

「!?」

魂に刻まれた味噌の風味と味が口いっぱいに広がり、それが喉を通って胃袋に流れていくのがわかる。

そして米。

噛むたびに米の一粒一粒が米独特の味と甘みが深みを増し、そこに味噌汁をもう一度飲んで米と一緒に胃袋にまで運んで行く。

「はぁ~」

日本人だからこそわかる白いご飯と味噌汁の組み合わせ。

魂に刻まれたその味に俺は思わず。

「「これこそ故郷の味!! ……………………ん?」」

魂の叫びをあげるとその声が誰かと重なった。

そして俺は先程の竜人族の少女と目が合い、お互いの視線が下に向けると俺と同じ定食を食べている。

まさか……………………。

「………………日本」

「!? ………………アニメ」

「異世界と言えば?」

「転生」

「ここは?」

「ファンタジー」

そこまで話して俺は、いや、俺達は互いの存在を確信して歩み寄り手を掴んだ。

「初めまして。同郷の人」

「こちらこそ初めまして」

俺達は手を取り合い、笑い合う。

まさかこんなところで同郷の人と出会えるなんて……………………。

「俺はリブロ。日本の名前は相崎総司。そっちは?」

「え? 総司? マジで?」

俺の日本名を聞いて目を見開く彼女。

あれ? もしかして俺のことを知っている人? でも俺の事を総司って呼ぶ女友達はいなかったはずだけど……………………。元クラスメイトとかか?

そう思っていると彼女は視線を泳がせながら名前を明かした。

「その、私………………いや、俺、竜也なんだけど…………………」

「え? 竜也?」

その名前を聞いて俺は驚きを通り越して絶句した。

相澤竜也(あいざわたつや)。それは幼稚園の頃からの腐れ縁で親友の名前。つまり、目の前にいる少女は俺の親友である。

ちなみに竜也は日本にいた頃は男だ。つまり……………………。

「TS転生しちまった……………」

俺は異世界で奇跡的にも再会した親友に最初にしたのは慰めであった。

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