問題案件
エリエール・ドリヤース。シャーレと同じドリヤースの姓を持つエルフの依頼主の名前を見て俺はその依頼主がいるエルフの国を目指していた。
勿論シャーレと同じ姓を持つだけの赤の他人という線もあるけど、シャーレの血縁者という可能性だってある。僅かな可能性でも俺がエルフの国に向かう理由としては十分だ。エルフの国でその真相を確かめに行く。
馬車に揺られながらシャーレのことを考えているとアリアが不意に口を開いた。
「ねぇ、リブロ。前から聞きたかったのだけどいいかしら?」
「なんだ?」
「貴方にとってそのシャーレはどういう存在なの?」
そう尋ねてくるアリアに俺は考える。
どういう存在か……………………。そう言われればなんて答えたらいいのか悩むけど。
「家族、かな。一緒にいる時間は短かったけど俺にとっては大切な家族なんだ」
家族。それが一番しっくりくる。
俺の可愛い妹分であるシャーレ。血の繋がりも無ければ種族も違うけど俺にとってシャーレは大切な家族だ。
それに……………………。
「それに一緒にいるって約束したからな」
まだ孤児院にいた頃にした子供同士の約束。シャーレはもう忘れているかもしれないけど、男が一度した約束を守れないままでいるわけにはいかない。
まぁ、奴隷にされて会いに行くどころか手紙一つ送ることができなかったから約束を守れているかどうかは複雑だけど…………。
「そう。それなら早く見つけてあげないとね」
「ああ」
アリアの言葉に頷く。
俺的にはこの先にあるエルフの国にシャーレがいてくれたらベストだけど、そう都合よく行くほど世の中は甘くないのは知っている。
もし奴隷にされていたらアリアに土下座してでも金を借りてシャーレを買い取る。
悪い男に騙されていたとしたらその男を半殺し、いや、8割殺しにしてでも助ける。
最悪の展開は想像したくはないけど、万が一そうなっていたとしてもせめて遺品だけは見つけてあげたい。
「ん、またか…………………」
そう考えていると索敵スキルにまたモンスターの反応を察知した。
「まだ街を出て三日目だぞ? これで何度目の襲撃だ? セシル」
「はい! 行ってきます!」
同行しているセシルは秘宝を持って馬車を出ると、通行方向から巨大な蜥蜴のモンスター、ジャイアントリザードがこちらに向かってくるが……………………。
「行くよ、ユグドラシル」
秘宝――ユグドラシルの剣先を空に向けるとセシルの頭上に光輝く蕾が出現する。セシルは剣先をジャイアントリザードに向けると蕾が開いてそこから光線が放出される。
超高温の熱を帯びたその光線はジャイアントリザードの身体を貫いて絶命させるだけに留まらず、その先にある山に大穴を開けてしまう。
「………………………少し、力を込め過ぎちゃいました」
愛想笑いを浮かべながら誤魔化すように言うが、一応師匠として言わせて貰うぞ?
「やり過ぎだ。もう少し加減をしろ」
「………………………はい」
肩を落とすセシル。だが、俺が家庭教師をしている間に新しい力を身に付けていたセシルはきっと毎日秘宝と向かい合って懸命に努力してきたのだろう。
「ふふん、妾と毎日特訓したのじゃからできるようになって当然じゃ」
操車をしている駄龍メイド、リヴァイは自信満々に胸を張る。
「威張るな、駄龍。それと他のメイドから聞いたぞ? 食器を洗えば皿を割り、モップを持たせれば花瓶を落としているみたいだな。それでまともにできる仕事がセシルの特訓相手だけだと。それしかできないのなら威張るな。それと壊した分はしっかりと給金から引いておくからな」
「酷いのじゃ! それにこれ以上減らされたら妾は給金を貰うどころか妾が給金を支払う羽目になってしまうのじゃ!? 妾一文無しなのに!!」
「………………………リヴァイアサンの内蔵はきっと高値で売れるだろうな?」
「ひぃ!? ど、どうかそれだけは勘弁して欲しいのじゃ!!」
「し、師匠。それはいくらなんでも………………リヴァイさんが壊した分、私が払いますから」
涙ながらに謝ってくるリヴァイを慰めながらセシルは自分の稼いだ分をリヴァイの弁償に当てようとすると、リヴァイは感涙しながらセシルに抱き着く。
「セシル…………………ありがとう、ありがとうなのじゃ!」
「リヴァイさんには毎日私の特訓に付き合ってくれていますから」
子供のように泣きじゃくるリヴァイを慰めるセシル。
10歳の子供に慰められる海龍って……………………。
「まぁ、そんなことはさておき。話を戻すが、モンスターの襲撃が流石に多くないか?」
街の外に出ればモンスターや盗賊に襲われることだってある。だけど、基本的にはモンスターが棲息しない街道を進んでいる為にモンスターと遭遇することはそうそうない。
多くても数日に1回か2回程度だ。
それなのにこの三日間で既に10回近くの襲撃を受けている。これはどう考えても異常だ。
するとアリアが………。
「実は近年それが問題になっているのよ。1年と少し前からモンスターの目撃情報や被害が増加していて結構問題になっているのよ。冒険者ギルドでもモンスターの討伐依頼が増えているでしょうね」
「原因は解明されたのか?」
「調査中よ。異常事態なのは間違いないでしょうけど」
アリアは難しい顔でそう話す。
原因がわからない以上は俺がどうこうできる問題じゃないだろうし、下手に事を起こすわけにはいかない。
取り敢えずはここにいるメンバーなら何も心配はいらないが、用心はした方がよさそうだ。
それよりも今はエルフの国に向かう方が先決だ。
シャーレのことについて何か情報があればいいのだが……………………。
シャーレとの再会を願いながら俺達はエルフの国に向かう。




