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外れスキル翻訳でチートに  作者: 幻影十夢
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家庭教師の生活2

アリアの頼みでアリアの親戚の子供達、双子のお嬢様。ルージュお嬢様とシャリアお嬢様の家庭教師を請け負った俺はその屋敷で住み込みで働いている。

陽が昇り始めた頃に起床して着替えて、顔を洗うと朝食の時間の前にやらなければいけないことがある。

それをしなければ今日一日の時間が決まってしまうだけではない。今後のことにも影響を及ぼしてしまう為に絶対に避けては通れない。

「さて、それでは始めましょうか」

中庭に赴くとそこには既に俺が来るのを待ち構えていた二人のお嬢様。その手には木剣が握られている。

「行くわよ! シャリア!」

「………………………んっ、勝つ」

向かって来るお嬢様方を俺は適度にさばいていく。

何故、朝早くからお嬢様方と戦っているのか? それは最初に行われたゲームが影響している。

俺に完膚なきまでに敗北したお嬢様方は俺に勝ちたい一心で今度はお嬢様方からゲームを持ち掛けてきたのが始まりだ。

朝食の時間までに俺に一撃でも当てたら今日一日の授業は免除。俺が勝てばいつも通りの授業といった風にゲームをしている。

毎朝、二人で俺に勝つ為にアレコレと策を考えたり、予め罠を作っておいたりと貪欲にまで勝利を求める負けず嫌いを発揮してくるお嬢様方に俺は呆れと同時に感心もしている。

だが、俺も俺で負けるわけには行かない。

一度でも敗北すればその日だけではなく今後の授業にも影響が及ぶ可能性だってある。そうなればやっと矯正できている二人が元に戻る可能性だってあるし、なによりいくら二人がかりとはいえ自分より幼い子供に負けたくない。俺にだってプライドはある。

だから毎朝気合を入れて相手をしている。

お嬢様方から見て俺はどんな手段を用いても絶対に勝てない相手と認識してもらわなければならない。

「この!」

「………………………んっ!」

今日は木剣でリーチをつけてきたみたいだが、生憎とそれだけでは俺には当たらない。

レベル差も当然だけど、もしこの二人のセシルと同じぐらいならもしかしてはあるかもしれないな。まぁ、流石にレベル上げをするわけにはいかないか。

ルージュお嬢様はともかくレベルが上がったシャリアお嬢様の攻撃が俺以外の誰かが喰らったら下手をすれば殺してしまうかもしれないし。

それでもこの素質に強化魔法か強化系統のスキルを取得させれば今よりももっと強くなるのは間違いない。貴族のお嬢様でなければ冒険者として鍛えていたのに少し勿体ない気がするな………………。

「おっと」

「チッ!」

「………………………惜しい」

考えすぎて危うく一撃貰ってしまうことろだった。

というかルージュお嬢様よ。女の子が舌打ちをするのはどうかと思いますよ? シャリアお嬢様もそんな楽しみながら同調しない。

「皆様。朝食のお時間となりました」

メイドからのその一言で今日のゲームも俺の勝ち。さて、今日は昨日の復習から始めますか。




お嬢様方は基本的にスペックは高い。

身体的スペックもそうだが、物覚えも非常にいい。子供だから物事の吸収力もいいのだろう。

この調子なら文字の読み書きや算術もすぐにできるようになるだろうし、礼儀作法もすぐに覚えられるだろうが、やはり問題は精神的なところだな。

母親の死が影響して暴力的になったのはまぁ仕方がない。だけどこのままずっとというわけにもいかない。

いくら勉強ができるようになって礼儀作法を身に付けたとしてもそれは表面上だけ。根っこの部分は何も解決できていない。

ここは一つ、外の世界を吸わせてみるとしよう。

「というわけです。お嬢様方を屋敷の外にお連れしてもよろしいでしょうか?」

お嬢様方は屋敷から出ない。大きく捉えればこれは引き籠もりと大して差はない。だから多少無理にでも外に出して外の世界を知って貰う必要がある。そう旦那様に説明するも………………。

「それはわかるけど、もう少し様子を見てからでも遅くはないんじゃないかな? 娘達はまだ幼いし、万が一に人攫いに会ってしまえば僕は妻に会わせる顔が」

「お嬢様方が心配なのはわかりますがこういうことは早い方がいいのです。いつまでも引き摺っていればそれは根の深い問題になってしまいます。人攫いについても心配はいりません。私もいますし、アリア本人も協力してくれるようです」

お嬢様方のこともあるけど、旦那様も旦那様で問題を抱えているが今はお嬢様方が優先だ。

「簡単な買い物をして貰うだけです。せっかく文字の読み書きも算術もできるようになったのですからこれまでの勉強の成果を出すいい機会ではありませんか」

「確かにそうだけど………………」

「時間というのは残酷なものです。いつまでもこのままというわけにはいきません。ですので旦那様、お嬢様達を大切に思われるのであればどうかご決断を」

俺の必死の説得に旦那様は悩みに悩んだ末、遂に……………………。

「……………………………………………わかった」

その首を縦に振った。

これでお嬢様方の外出許可は手に入れた。後はこの事をアリアに知らせて数日後にでも実行しよう。

名付けて『双子のお嬢様。初めてのおつかい』大作戦。

これから授業の合間に少しずつ外の世界を知って貰っていけば少なくともこの屋敷でずっといるよりかはよくなるはずだ。

外出許可を得ると俺は早速準備に取り掛かろうと旦那様の部屋を出ようとしたら二つの足音が聞こえた。

扉を開けるも誰もいない。けど、索敵スキルにはここから離れていくお嬢様方がはっきりとわかる。

きっと盗み聞きをしていたのだろう。まったく。

肩を竦めながら俺はお嬢様方がいる場所に向かう。

「お嬢様方」

お嬢様方がいる部屋の扉をノックするも返事はない。扉を開けようとするも鍵がかかっている。

しょうがない………………。

だけど元盗賊であるロイバーさんから教わった技術で容易く開錠して中に入ると壺が飛んでくるもキャッチする。

「こんなの投げたら危ないでしょう?」

「うるさい! ここから出て行きなさい!!」

「………………………出て行って!」

部屋に入る俺に手短にある物を投げてくるも俺は全てキャッチして床に置いていく。

「人に物を投げたらいけませんよ? 外に出るのがそんなに嫌なのですか?」

「あんたには関係ないでしょう!」

「………………………んっ!」

警戒心たっぷりの猛犬のように今にも唸り声でも出しそうなお嬢様方。よほど外の世界が嫌なのだろう。

「外に出るのが怖いのですか?」

「ッ! べ、べつどうでもいいでしょ!?」

「………………………関係ない」

やはり、怖いのか……………………。

もしかすると母親の死以外にもこの双子は何かを抱えているのかもしれない。その何かは俺にはわからないし、おいそれと聞いていい問題ではないだろうが、このままずっとこの双子をこの屋敷に閉じ込めておくわけには行かない。

引き籠もっていればそれ以上傷つくことはない。だけどそれは何も変わらないということだ。

ずっと恐怖を抱えたまま生きていくなんてそれはあまりにも辛すぎる。

だから俺は二人を安心させるように抱きしめる。

「「っ!?」」

「大丈夫。俺が強いのは二人もよく知っているだろ? もし外に出て怖い目に会いそうになったら俺が守ってあげるから安心して少しだけ勇気を出そう?」

抱きしめて頭を撫でながら俺は二人を勇気づける。

子供が怖がっているのならそれから守ってあげるのが年上の役目であり、大人の務めだ。

「なにも、知らないくせに…………………」

「………………………ん」

「ああ、何も知らない。だけど二人が何か怖がっているのはわかる。だからその何かから守らせてくれ。大丈夫、俺はチートだからドラゴンが相手でも片手で倒してやる」

「意味わかんないわよ………………」

「………………………わからない」

「わからなくていいよ。でも、これだけはわかってくれ。俺は二人の味方だからな」

もっと親身になってあげよう。家庭教師とその教え子みたいな関係ではなく家族のような関係になろう。この双子が前を見て歩いて行けるように俺がなんとかしよう。

そうして俺は二人が離れるまでずっと二人を抱きしめた。

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