戦闘狂と凶戦士
「嫌よ!」
「………………………いや」
旦那様から紹介を受けたが双子のお嬢様方に速攻で拒否された。
「子供に教わるなんて嫌よ!」
「………………………んっ」
拒否する理由を言うが、君達の方が子供だからね? まぁ、俺も外見は子供だから強くは言えないけど。
「そんなことを言ってはいけないよ。彼はアリアからの紹介で来てくれたんだ」
「アリア姉様が…………?」
「………………………アリアお姉ちゃんの紹介?」
「それに君達と歳はあまり変わらなくても彼はああ見えてAランクの冒険者なんだよ」
「うそ!? 信じられない!」
「………………………んっ」
とても信じられない目でこちらを見てくるお嬢様方だが。
「嘘よ! だって私より弱そうなんだもん!」
「………………………そこそこ?」
一目見て俺の強さを真っ向から否定してきた。
人を見た目で判断してはいけません。それとシャリアちゃん、そこそこ? ってどういう意味かな?
でもまぁ、こういう子供にはまずは力関係を知って貰う必要がありそうだ。
「ルージュお嬢様それとシャリアお嬢様。そこまで仰るのでしたら一つゲームをしませんか?」
「なによ………………?」
「………………………ゲーム?」
「もしお嬢様方が勝てば私は負けを認めてすぐにこの屋敷から出て行きましょう。しかし、私が勝てば私の指導をしっかりと受けることを約束して貰います」
「ちょっと!? なに勝手に決めてんのよ!!」
「………………………んっ。勝手」
予想通り反論するも、俺はわざとらしく笑みを見せる。
「おや? 自信がないのですか? それもそうですよね。だって不意打ちでないと攻撃を当てるができない温室育ちのお嬢様方ですものねぇ。おっと、失礼。不意打ちでも攻撃を当てることもできないお嬢様方でしたね。申し訳ございません」
「誰が自信がないですって!! 不意打ちじゃなくてもあんたなんかに負けたりしないわよ!!」
「………………………んっ!」
「いえいえ、そんなに強がって無理に背伸びをしなくてもいいんですよ? うんうん、お嬢様方は強い強い」
「いいわよ!! 受けてやるわよ! 私達を怒らせたこと後悔させてやるんだから! 行こう! シャリア!」
「………………………ボコボコにする」
烈火の如く憤るお嬢様方は部屋を飛び出した。
ちょっと煽っただけでこうも簡単に行くとは…………………やっぱりまだまだ子供だな。
「え~と、リブロ君? あんなこと言っちゃっているけどいいのかい?」
「はい。ああいう子供にはまずはどちらが強いのかをはっきりさせておいた方がいいですからね。まぁ、安心してください。子供の面倒をみるのは得意ですから」
さて、動きが止まったみたいだし、これから生徒になるお嬢様方の腕前を見せてもらうとしよう。
俺が足を運んだのはこの屋敷の中庭。その中央では双子のお嬢様方が待ち構えていたが、その顔は絶対にボコボコにすると書いてあるかのように二人の表情はわかりやすい。
「ゲームのルールは簡単です。お二人の勝利条件はどちらか一人でも私の身体に攻撃を当てることが出来たら勝ち。そして二人が動けなくなったら私の勝ちです。どうですか? とてもわかりやすいでしょう?」
「シャリア、やるわよ」
「………………………んっ」
おーおー、怖いぐらいに怒っちゃって。でもまぁ、それぐらいがちょうどいいか。
「それではゲームスタート」
スタートと同時に二人は動き出した。それぞれ左右から挟み込み、挟撃を仕掛けてくるがその程度は目を閉じていても躱せる。
「この!」
「…………………あは」
一度で駄目なら二度三度と懲りずに攻撃してくる。
この双子、どちらも身体能力に優れている。それにどちらもボディバランスもいいし、柔軟性もある。戦闘センスもかなりのものだ。なにより双子なだけあってお互いの考えがわかるかのような抜群のコンビネーション。二人の素質は他と比べて頭が一つや二つずば抜けている。
鍛え上げれば白兵戦なら負けなしの実力者になりそうだ。だが……………………。
「あー! もう! いい加減に当たりなさいよね!」
ルージュは強気の性格からみて根っこからの負けず嫌いなのだろう。こちらはまぁ問題はない。反骨精神があるのはいいことだし、実力をはっきりさせてあげれば多少なりはいうことは聞きそうだ。
問題はシャリアの方だ。
「あはは!」
三日月の笑みを浮かばせながら特攻と言わんばかりの攻撃を繰り返す。動き、反応、攻撃その全てが獣のそれだ。仮に俺が攻撃してもそれすら意にも介さずに攻撃をしてくるだろう。そしてなによりルージュと違って戦いそのものを楽しんでいる。
ルージュが戦闘狂だとしたらシャリアは凶戦士ってところか?
素質うんぬんよりもまずはこの双子の内面からどうにかした方がいいかもしれないな。
……………………せっかくだ。ここで少し家庭教師っぽくしてみますか。
「ルージュお嬢様。動きが単純で大技ばかりですよ。それでは回避が得意な相手には通用しません。小技も使うのです」
「うっさい! そんなこと言われなくてもわかっているわよ!!」
と言いつつも大技が減って小技を出し始めた。
ふむ、口ではああ言っているけど強くなる気概はあるようだ。
「シャリアお嬢様はもう少しペース配分を考えて動いてください。それでは最初はよくても後半が疲れて動きが鈍くなってきますよ」
「………………………むぅ」
指摘に不服そうに頬を膨らませる。
こちらはちょっと難アリか。自分の楽しみを邪魔された子供のように脹れている。
まぁ、今は深くは追言はしないでおこう。まずはこのゲームに勝ってこのお嬢様方に家庭教師として認めて貰えるようにならないといけないしな。
そしてゲーム開始一時間後。
お嬢様方は力が尽きた。
「はぁ…………はぁ…………」
「…………………………つよ、い」
地面に倒れるお嬢様方。当然俺は二人の攻撃を一撃も受けていないが……………。
「さて、まだ続けますか?」
この二人はまだ戦闘を続ける気力があるかあえて訊いてみよう。勿論あるのなら徹底的に付き合うが、二人共不服そうにするも首を横に振る。
「………………………わかったわよ。約束は守るわ」
「……………………………………………んっ。約束、守る」
どうやら俺の方が強いとしっかり認識してくれたようだ。これで第一段階は突破だな。
「さて、それでは早速と言いたいところですが、お嬢様方は酷くお疲れでしょう。一時間の休憩を挟んでからレッスン開始です。ちなみに俺は弟子から鬼畜と言われておりますから覚悟してくださいね?」




