駄龍メイド
魚人族の国で問題となっていたリヴァイアサンの騒動は俺がリヴァイアサンを従えさせる事で終了した。
始めは女王様や他の魚人族も驚いていたけど呪いのことを話してそれが本当だということを証明したらどうにか納得してくれた。
なかには殺せ、という声も上がったけどそれをする必要はないと女王様の鶴の一声によって口を閉ざした。
リヴァイアサンの件はこれで解決して俺達は暫く魚人族の国を満喫してから俺達が住む街に帰還した。
そして今、そのリヴァイアサンは…………………。
「お、お待たせしましたのじゃ」
アリアの屋敷でメイドをしている。
引きつった笑みと共に慣れない動作でカップに紅茶を注ぐ駄龍メイドに俺もアリアも思わず一笑してしまう。
童話でも悪しき存在であるあの海龍リヴァイアサンがメイドをしている姿など誰が想像できようか。
「なぜ、妾が人間などを奉公せねばならぬ…………………」
「文句を言うな、駄龍。アリアがせっかくこの屋敷で働かせてくれてんだ。感謝しろよ」
愚痴を漏らす駄龍。
右も左も何もかもわからないお前をアリアは広い心を持って雇ってくれたんだ。その事に感謝してしっかり働いて欲しいものだ。
「そうではない!! 何故妾が人間の姿をして働かなければならぬのじゃ!?」
「働かざるもの食うべからず。人間の国で生活する以上は人間のルールに従って貰う。あ、自分で働いた給金は好きに使ってもいいが無駄使いはするなよ?」
「うぬぬぬ…………………ッ」
唸るリヴァイアサンだけど何も言い返せない。
呪いもあるけど呪いがなくても俺の実力をその身で知っているから逆らうことが出来ないでいる。
いやぁ、ごめんね。チートで。
「それにしてもまさかあのリヴァイアサンを服従させるなんてね。もう貴方が何をしても驚かないわ」
「あはは…………………」
思わず苦笑いする。
リヴァイアサンの一件で俺の冒険者のランクはAランクまで上がり、魚人族の国から多額の報奨金と民の傷を治してくれた謝礼金まで届いた。本当に目が飛び出るほどの額だった。
それと……………………。
「なぁ、リヴァイアサン。本当にお前の封印を解いた奴が誰なのか知らないのか?」
「………………何度も言うが知らぬ。少なくとも妾が封印から解かれた時は誰もおらなんだ」
結局魚人族の国にいたとされるエルフの情報は何一つわからなかった。
完全な無駄足だったけど、そこは気持ちを切り換えてやっていくしかない。
「それにしても不思議なものね。人の姿をしているとはいえモンスターと話をするなんて」
リヴァイアサンを見据えながらアリアはそう言うとリヴァイアサンは得意げに語る。
「ふん、妾を誰だと思っておる? かのリヴァイアサンじゃぞ。魔法を使えば人間の言葉などすぐにわかるわ」
どうやら俺の翻訳スキルのようにリヴァイアサンも翻訳もしくはそれに類する魔法が使えるらしい。まぁ、スキルではなく魔法だから微量に魔力も消耗しているみたいだけどリヴァイアサンにとっては雀の涙ていどの消耗量らしい。
「妾はむしろモンスターとも普通に言葉を交える主様の方がおかしいと思うぞ?」
「そうかそんなに給金を減らして欲しいのか。アリア、今月のリヴァイアサンの給金は七割で」
「ええ、わかったわ」
「理不尽じゃ!!」
喚く駄龍。
これまでやってきた反省も踏まえて少し厳しめに教育して矯正させてやらないとな。変に甘やかすとまた人様に迷惑をかけてしまう。
「ところでセシルはどうしたのかしら? 庭で剣でも振っているの?」
「ああ、早く秘宝を使いこなせるようになりたいそうだ」
技が一つしか使えないと言っていたからな。もしかしたら何かしらの使用方法や条件があるかもしれない。
だけど秘宝の取扱説明書などはもちろんない。手探りで見つけていくしかないから大変だろうな……………………。
そう思いながらリヴァイアサン…………………は長いからリヴァイでいいか。リヴァイが淹れてくれた紅茶を飲む。うん、まずい。
「まぁセシルの成長は今後に期待するとして。今はこの駄龍メイドがいっぱしのメイドになるように鍛えてあげてくれ」
「ええ任せなさい。一流のメイドに仕上げてみせるわ」
「体力もあるし頑丈だから足腰絶たなくなるまで鍛えても問題ないだろうし、いざという時は治癒魔法と回復魔法を使って全快させればいいからな」
「そうね。それならひとまずは不眠不休で1ヶ月ぐらい働かせても問題はないわね」
「ハハハ」
「うふふ」
笑いを漏らす俺達に駄龍メイドは窓の外から逃げようとするが当然逃がさない。
「い、嫌じゃ!! そんなのあんまりじゃ!! 妾、過労死する! 絶対に過労死してしまうのじゃ!」
「大丈夫。その時は回復魔法をかけてあげるから」
「だから安心して働きなさい。ちゃんと交代制で貴女の指導者を用意してあげるから」
「ひぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいっっ!!」
駄龍メイドに休みはない。




