呼んだ理由
「帰りが遅いと思ったらそういうことだったのね」
納得するかのように頷くアリアに俺はセシルが秘宝を手に入れるまでの経緯を説明していた。
あれからすぐに俺達がいた街道に戻った頃には既に朝日が顔を出していた。
あの時のあの空間は光の精霊が言うには秘宝が作り出した異空間のようなもので俺達はそこに閉じ込められたらしい。
実際は俺にもよくはわからないが、そういうものだと納得するしかない。
「それで秘宝は手に入れたのかしら?」
「ああ、セシルが持ってる」
あの亀の樹木から出てきたあの剣。俺も持って鑑定してみたけどどういうわけか文字化けしてよくはわからなかったが、凄い力を秘めているのだけは確かだった。
「だけどあの空間はやばかった。恐らくアリア達でも死んでいた可能性が高い」
あれが秘宝を手に入れる為の試練だと思う。それをクリアしたから秘宝を手に入れることができたが、あの空間はチートである俺だから特に問題はなかったけど、普通の人ならまずクリアすることができない。
大抵の人はあの桃みたいな果実を食べて花達の養分にされて終わっていただろう。それがなくてもレベルが90もあるあの亀を相手にしないといけないのだからまず間違いなく死ぬ危険な場所だ。
「そんなに危険な所だったのね……………………」
アリアも俺の話を聞いた危機感を抱いている。
アリア自身も呪いを解く為に秘宝を手に入れようとしていたのだから当然と言えば当然か。
もしかしたら死んでいたかもしれない場所だったのだから。
「それならますます貴方と出会えたことに感謝しないとね」
「…………………そうですね」
そういうことを堂々と言われると反応に困る。
特にアリアは美人だから余計にドキってする…………………。
「それでセシルのことはどうするのかしら?」
「……………………一緒に連れて行くよ。むしろ、ついて来て欲しいってこっちからお願いしたいぐらいだ」
あの亀を倒してレベルが85になって秘宝を手に入れて更には光の精霊の加護を授かり、トドメは勇者の資質があると精霊が認めたほどの逸材だ。
これからもきっと俺の想像を超えて強くなる可能性が高い。そうなれば俺の手助けにもなってくれる。
今のセシルなら一緒に連れて行かない理由がまるでない。
いずれ俺とセシルの立場が逆転するかもしれないが、師匠としてそれだけは阻止しよう。
「そう。二人がそう決めたのなら私からは何も言わないわ。それでその弟子は?」
「限界突破の副作用で今は寝てる」
戦いが終わっても元気だと思えば後になってぶっ倒れるからびっくりしたわ。
まぁ、自分よりも強いモンスターを倒した後だ。今はゆっくりと休ませておこう。
「それで俺を呼んだのはそれだけか? 俺もそろそろ寝たいんだけど……………」
「それだけじゃないわ。リブロ、貴方に朗報よ。貴方が探しているエルフの女の子、シャーレが見つかったかもしれないわ」
「本当か!? どこで!?」
その朗報に思わず立ち上がるもアリアが手で制止する。
「落ち着きなさい。見つかったかもよ。間違えている可能性も高いわ」
「それでも可能性があるのなら俺は行く」
迷うことなく言う俺にアリアは小さく溜息を吐きながらその場所を教えてくれる。
「場所はここから遥か南に位置する魚人族の国。そこでエルフの少女らしきものを目撃した情報があったわ。だけど、今の魚人族の国には少し問題が発生しているの」
「問題?」
「何でも巨大なモンスターの出現によって漁獲量が落ちているのよ」
「それならそのモンスターを討伐すればいいんじゃないか?」
「それが無理だったのよ。海での戦闘を得意とする魚人族が何人もそのモンスターに食い殺されたみたいなの。そのせいで魚人族の王はついに他国にまで救援を求めたのだけど……………………」
「どの国も匙を投げたのか?」
俺の言葉にアリアは頷く。
「ええ。だけど偶然にもそのモンスターを倒してくれる冒険者に私は心当たりがあるのよ」
「へぇ、それは凄いな。いったい誰なんだ?」
誰なのか尋ねるとアリアはじっと俺を見る。俺はもしかしてと思って自分を指すとアリアは頷いた。
「俺………………?」
「ええ、もちろん行ってくれるわよね? これを達成できれば多額の報奨金も貰えて魚人族の国の借りも作ることが出来るの。それに貴方のランクもAランクまで上がるわ」
「いや待て、そんなこと急に言われても……………………」
「リブロ、これは私達の将来の為でもあるの。私との婚姻の為にも貴方には実績を積み重ねて国王様から爵位を得て貰うわ。既に実力はあるのだから後は実績を積み重ねるだけでいいの」
「いや、それは前にも聞いたからわかるけど」
「それと今回のクエストは私も同伴するわ。色々と気になることもあるし、明日の明朝に出発するからそれまで身体を休ませておきなさい」
「えっと、拒否権とかは………………?」
「ないわ」
ばっさりと言い切られた。




