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外れスキル翻訳でチートに  作者: 幻影十夢
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ボーナスステージ

見渡す限り青白く輝く花畑。その中心に立たされている俺とセシルは困惑していた。

無謀にも秘宝(レジェンド)を手に入れようとする弟子を止めに来ただけなのにどういうことか、まるで別空間に転移でもされたかのように周辺の景色が一変した。

恐らくは秘宝(レジェンド)による影響だとは思う。秘宝(レジェンド)にはまだまだ謎が多い。もしかしたら俺とセシルは秘宝(レジェンド)に招かれた可能性が高いのかもしれない。

「し、師匠………………」

「大丈夫だ。俺がついてる」

不安げに俺を見てくるセシルを安心させながら俺は周囲を観察する。

ざっと見渡す限りは花畑だけど、よく見れば花と同じように青白く輝いている鳥や虫などもいる。

ちょっと話しかけてみるか……………………。

「なぁ、ここはどこなんだ?」

『ん? 人間か? 最近来ないと思っていたけどまた来たんだな』

近くにいた蝶に会話を試みてみる。

『ここがどこかって? さぁ? オイラも気がつけばここにいたって感じだからな。まぁ、でも花の蜜は美味いし、オイラにとってはいい環境だぜ』

「そうか…………」

どうやらここに招かれているのは人間だけじゃなくて虫や動物も一緒ってことか。

だけどいったい何の為に……………?

あれこれと考えるも謎が深まる。ここは情報を集めてから考えるしか…………………。

「師匠!」

「…………………どうやら早速お出ましか」

俺とセシルは剣を抜いて互いに背を預けるように構える。すると俺達を取り囲むように姿を現すのはゴブリン、コボルド、オークの集団。そしてどれも花のように青白い輝きを発している。

「鑑定」

鑑定スキルでレベルを鑑定。ゴブリンの平均は20、コボルドは25。そしてオークは30か。これならセシルを庇いながらでも問題はないな。

「セシル。お前はゴブリンとコボルトを倒せ。オークは俺がやる。できるな?」

「はい!」

「危ない時は助けてやる。全力でやれ」

「はい!」

同時にモンスターに向かって駆け出す。

俺はゴブリンとコボルドを無視して一気にオークのところまで跳躍。すぐさまオークの首を刎ねてすぐに別のオークに狙いを定めると、倒したオークの青白い輝きが俺に吸収されて死体となったオークからは輝きが消えた。

これはまさか……………………。

「魔素なのか……………?」

魔素は人間には見ることが出来ない。そう精霊達が教えてくれた。だが、この感覚はまさにモンスターを倒して魔素を吸収した時と全く同じ。ということは……………………。

「ここにある全てが魔素に満たされているのか?」

人間が可視化できるほどの魔素がモンスターだけではなくて花や鳥、虫にまで影響を及ぼしている。それだけここの魔素の濃度が濃いのかわからないが、これはレベル上げにはこれ以上にないぐらいに最適な環境だ。

人間がレベルを上げるにはモンスターを倒すことも含まれるが、正確には魔素を吸収することでレベルが上がる。つまり吸収できる魔素が多い程レベルも上がる。

現に俺も精霊達の協力で魔素が多く含まれたモンスターを倒してここまで強くなったのだから、ここは俺がしてきた以上に早くレベルを上げることができる。

「まるでボーナスステージだな」

笑みを溢しながらそうぼやきながらもオークを倒しつつセシルの様子を確認するも、数が数だけに少々苦戦しているが特に問題はなさそうだ。

危なくなったら精霊の力を使ってでも助けてやろう。

そう思いながらオークを倒していく。




「…………………凄いな。レベルが3も上がった」

全てのモンスターを倒して一息ついている間に俺はステータスを確認してみるとレベルが上がっていた。

オークを倒しただけなのにレベルが3も上がったのは大きい。流石は可視化できるほど魔素を溜め込んでいただけはあるってことか……………………。

「セシル。お前は―――」

「うひゃ!!」

どうだった? と聞く前にセシルは自分のステータスを見て驚いていた。

「し、師匠…………………私、レベルが26から82になってます」

「…………………………………………………………そうか。おめでとう」

大幅のレベルアップに俺は弟子の成長を讃える。

いくら可視化できるほど魔素を溜め込んでいたゴブリンとコボルトを全部一人で倒したとはいえ、まさかレベルが4倍近くも上がるとは。驚きを通り越して呆れるぞ。

俺なんかそこまでレベルになるまで2年はかかったのに……………………。

まぁ、今は状況が状況だ。レベルが上がることはいいことだ。

「今の内にスキルポイントを割り振っておけよ? 何が起きるかわからんからスキルレベルを上げるにしろ、スキルを取得するにしろ下手に溜め込んでおくのは止めておけよ?」

「はい」

俺も一応新しいスキルを取得しておくか。いくら精霊の加護があるからといってスキルを取得しておいて損はない。

俺は新しいスキル『危険察知』を獲得しておく。スキルレベルはあげていないからレベルは1だけどないよりかはマシだろう。

「さて、ひとまず動いてみるか」

「はい」

索敵スキルを発動させながら花畑を歩いて出口を探す俺達。するとセシルがふと尋ねてくる。

「そういえば師匠。秘宝(レジェンド)っていったいどんなものなのですか?」

「さあな。俺も詳しくは知らないけど、色々と説はあるみたいだ。奇跡の力や神器など人類では想像もできない力が秘められているらしい」

だからこそ、アリアは呪いを解こうと秘宝(レジェンド)を手に入れようとしていたのかもな。

だけどそれにしてもおかしい。

これまで多くの冒険者が秘宝(レジェンド)を手に入れようと挑戦し、誰一人帰ってこなかったからすぐに死んだものとばかり考えていたけど、さっきのゴブリン達は数はいてもレベルはそこまでではなかった。

それでも誰も帰ってこなかったのはここにそれだけの何かがあると考えた方がいいか。

「あ、師匠。あそこ」

セシルが指す方向に視線を向けるとそこには一本の果樹があった。近くまで行ってみるとその実は桃に近い形をしていて鑑定スキルで確認してみても毒は入っていないのはわかる。

「師匠。せっかくなので採りませんか?」

「…………………まぁ、食料は確保しておいた方がいいか」

毒がない以上は何も問題はないけど、一応俺が先に食べて確認してみるか。

その桃を採って俺は早速一齧りする。すると、その桃は物凄く美味かった。

瑞々しくも甘くて果汁が溢れ出てくる。こんな美味い桃を俺は食べたことがない。

1個で数万円はしてもおかしくはない桃だ。

「ん、問題はなさそうだな」

「では私も」

セシルも一齧りするとその美味しさに圧倒されてすぐに食べてしまう。

「美味しい~~~~。こんな美味しい食べ物初めて……………………」

ご満悦の弟子に一笑して俺は2個目を食べ始める。

でも本当に美味しいな。何個でも食べられそうだ。もう少し採っておこうかな?

「師匠……………………」

その美味しさにもう少しだけ採ろうかなと思っているとセシルに呼ばれると俺は淡くも青白く輝きを放っているセシルを見て驚愕に包まれる。

セシルの身体から魔素が可視化できるほど溢れているのか? さっきのゴブリンもこの実を食べたから発光していたのか?

そう思っている俺の耳に声が聞こえた。

『またあの実を食べているよ』

声がする方に視線を向けると虫達が会話していた。それを聞いて俺は本当にこの翻訳スキルは何でも翻訳してしまうと思いながら桃をもう1つ食べようと………………。

『ああ、あれって食べ過ぎると身体を溶かすのに』

「!?」

『また人間がこの花の養分になるな』

「セシル! ごめん!!」

「え? うぷ、オェ…………」

虫達のその話を聞いて俺はすぐにセシルの腹部に殴って腹の中にあるものを全て吐き出させると青白い輝きも消えて元に戻った。

あ、危なかった。虫達の会話を聞いていなかったらセシルがこの花の養分にされるところだった。

「《ヒール》」

「し、師匠……………い、いったい何を……………………」

腹部に治癒魔法を施しながらセシルは疑念の眼差しを向けてくる。

「ごめん。だけどこの実は食べたらダメだ。俺には翻訳スキルがあってな。さっきそこの虫達の会話をたまたま聞いたんだ。そしたらこの実を食べ過ぎると身体が溶けてこの花の養分になるみたいなんだ」

「え…………………? けど、師匠はなんとも……………」

「俺は少し特別だからな」

俺に影響がでなかったのは精霊の加護のおかげだろう。本当に精霊達には感謝だな。

「他の冒険者が帰ってこない筈だ。全員がこの実を食べて花達の養分にされたらそれは帰ってこれない筈だ」

俺が神から翻訳スキルを授かっていたから虫達の会話が聞こえて最悪の事態は避けることができた。だけど、万が一にそれに気付かなかったらセシルはこの花達の養分にされていたかもしれないと思うとゾッとする。

青白く輝く花達はこの実を食べたモンスターや人間を養分にして青白い輝きを発している。幻想的だと思っていたこの場所は今では地獄の花園にしか見えない。

「さっき俺達が倒したゴブリン達はまだ養分にされる前だったんだな……………………」

恐らくはこの実は魔素を豊富に蓄えているんだろう。だからこれを食べたゴブリン達はいい経験値稼ぎになったに違いない。ボーナスステージかと思えばまるで違った。養分にされる前に倒しただけだ。

「一刻も早く、ここから脱出しないと……………………」

最悪の場合、俺達もこの花達の養分にされてしまう。

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