盗賊退治
指名依頼を受けて俺は街を出て森を抜けた先にある依頼主がいる村に訪れる。門の前には一人武器、というよりも木を削って作ったお手製の木の棒のような武器を持っている男性がいる。
その男性は俺に気づくとこの棒を向けてくる。
「だ、誰だ!?」
声を上げて妙に警戒している男性に戸惑いながらも俺はここに来た理由を話す。
「初めまして、冒険者のリブロです。依頼に応じて参りました」
「あ、あんたがあの………………す、すまねえ。入ってくれ」
この村にまで俺の名前が届いているのか、男性は俺の名前を聞くとすぐに棒を下ろして村の中にまで案内してくれるも、村の人達は怪我人だらけ。むしろ、怪我をしていない人を探す方が難しい。
「村長! 冒険者の方が来てくれたぞ!」
男性の声に村の人達の視線が俺に集まる。
そして村長と思われるお爺さんが俺の元までやってきた。
「おおっ、貴方様が………………あのようなはした金でよくここまで来てくださった」
はした金? ああ、そういえば他のクエストの報酬よりも低かったな。まぁどうでもいいけど。
「そんなことより治療を行いますから怪我人のところに案内してください」
「ああ、こっちだ」
男性の案内されて俺は一つの部屋に入るとそこには大勢の人が怪我で寝転がっている。
一応手当はされているようだけど、物資が少ないせいか満足な治療もできていない。殆どの人が痛みにうなされている。これは急がないと怪我だけじゃなく病気も発生するぞ。
念の為に回復魔法もかけておこう。
俺は一人一人治癒魔法と回復魔法をかけていき、その後で何かしらの病気などが発生していないかどうか調べてから一応村の人達に注意を促しておく。
それが終えると俺は村長の家に招かれてお礼を言われた。
「本当にありがとうございます…………………まるで聖人様のようじゃ……………………」
「いえいえ、聖人ではありませんよ。それよりも何があったんですか? モンスターの襲撃でも受けたのですか?」
すると村長は首を横に振った。
「実は、つい先日にこの村は盗賊に襲われたのです。我々も抵抗したのですが……………………」
盗賊か…………。
異世界モノでもよく出てくる盗賊。物も人も全てを奪って金に換えて、その金が無くなればまた盗みを働く。それが盗賊。奴隷の時も何度か襲撃を受けたことがあったな。
「このことを街の警邏に報告は?」
「………………盗賊に襲われる村などよくあること。報告をしても」
何の保証もなく警備もつけず、ただ村が一つ盗賊の手によって滅ぼされたという報告で終わり、か。そして冒険者に盗賊退治の依頼を出そうにも金がなく、せめて村の人達の治療がこの村の限界だったのだろう。
「食料はまだよい。けど、あの者達は村の若い娘や幼い子供達までも……………………」
村長は愚痴を溢すかのようにそう呟いた。
その手はきっと盗賊に対する怒りと己の無力差に対する怒りで震えているのだろう。
どうにかしたい。けど自分ではどうすることもできない。助けを呼ぶ為の金もない。だからどうすることもできない。
その気持ちは俺もよくわかる。
この弱肉強食の世界で無力は罪だと思い知らされて俺は強くなろうと努力したのだから。
村長は金が入った袋を俺の前に置く。
「こちらが報酬になります。皆を治して下さったこと村の代表としてお礼を言わせてくだされ」
深々と頭を下げて礼を言ってくる村長に俺は報酬を受け取って立ち上がる。
「……………………村長にはお孫さんはいますか?」
「え、ええ、可愛い孫が一人………………」
「そうですか」
それだけを聞いて俺は村長の家を出て村を出る。
盗賊か…………………。異世界モノではある意味定番で当然の存在だったし、これまでもウールさん達が普通に迎撃できていたから気にしていなかったけど、これは盗賊の普通なんだよな。
物も命も尊厳も骨の髄までしゃぶり取る。そんな盗賊に俺は初めて怒りを覚えた。
風の精霊の力で空を飛んで、索敵スキルを広げられるギリギリまで広げる。
「……………………いた」
索敵スキルに反応した複数の気配。その中には子供の気配もある。盗賊だと思って間違いはないだろう。
まだ村からそこまで離れていなくてよかった。これならすぐに終わらせれる。
そのまま盗賊がいる場所まで空を駆けて上空から目視で盗賊と思われる団体を発見する。
数はおよそ二十人。村から盗んだ食料で盛り上がり、女性に酌をさせて楽しんでいる。その近くに子供達を檻の中に閉じ込めている。
「……………………どうしてあんなにも楽しそうに笑えるんだろうな」
自分さえよければそれでいいのか? 自分だけが楽しければそれでいいのか? その為なら他人をどうしようとも何も思わないのか? 俺には院長やあの盗賊達の考えが理解出来ない。
それも人の心だということは理解出来るも俺はあんな風になりたいとは思わない。
俺は村の人達を助ける為に空から盗賊達がいる場所に飛び降りる。
「な、なんだ!?」
いきなり空から現れたことに盗賊達は驚きながらも武器に手を伸ばす。だが、村の人達を人質にされるのは避けたい。
「土の精霊よ」
土の精霊の加護で村の女性達と檻にいる子供達を包み込むように土の壁を作り上げる。これでもう盗賊達は人質を取る選択は取れない。
「や、やべぇ! 人質が!」
「うろたえんじゃねえ!! 相手がガキが一匹だ! どうとでもなる!」
俺がガキだからと問題ないと、油断する盗賊達だけど生憎と俺はただのガキじゃないんだよ。
「雷の精霊よ」
盗賊達に落雷を降り注がせる。
黒コゲとなって倒れる盗賊達。一応は殺さない程度に加減はしたけど暫くは目を覚ますこともないだろう。
今の内にロープで縛っておこう。
創造の精霊の力で縄を創造して盗賊達が逃げられないように拘束してから土の壁を解除し、子供達を檻から解放する。
「もう大丈夫。家に帰れるよ」
不安そうに檻から出てくる子供達にそう告げて、俺は村の女性と子供達を連れて村に到着すると同時に子供達はそれぞれの親の元へ駆け出した。
抱き合う親子の姿を一目見てから俺は踵を返して街に帰ろうとする。
「あの!」
帰ろうとするも背後から聞こえた声に足を止めて振り返ると盗賊に捕らわれていた一人の女の子が俺に声をかけてきた。
如何にも村娘みたいな恰好をした淡い色をした金髪の女の子。
お礼の言葉かな? そう思った俺に女の子は意を決した顔で言う。
「私を弟子にしてください!」
「はい?」
「私、強くなりたいんです!」
何を言っているんだ? そう思ったけどその目がどれだけ本気なのかわかる。
だってその目はかつての俺がしていたのと全く同じだから。
「許せないんです……………何もできず、ただ両親が殺されるところを見ていた自分が……………ッ! だから強くなりたいんです! もう誰からも何も奪われない為に、護れる為に強くなりたい!!」
己の無力さを恥じるその声も、想いもよくわかる。
盗賊に家族を殺された。仇を取りたいのならわざわざ俺に弟子入りする必要なんてない。ここで仇を取ればいいだけの話だ。それでもそれをしないのは盗賊を憎む以上になにもできなかった自分の弱さを憎いと思えるぐらいに恥じているから。
だから強くなりたい。眼前の女の子はそう言っているのが伝わってくる。
「……………………ウールさんもこんな気持ちだったのかな?」
俺に戦い方を教えてくれた師匠的存在であるウールさん。あの人も今の俺と同じ気持ちを抱いていたから俺に戦い方を教えてくれたのかな?
なら今度は俺が、あの時ウールさんが俺にしてくれたみたいに今度は俺がこの女の子に教えよう。
「俺の教えは厳しいぞ? それでもいいのか?」
「はい!!」
よし、いい返事だ。
「それじゃまずは街で冒険者登録だな。一緒に行こうか、えっと……………」
「セシルです! セシル・フォルテです! よろしくお願いします、師匠!」
「ああ、こちらこそよろしく。セシル」
師匠か…………………。まさか仲間より先に歳も変わらない女の子の師匠になるなんて思いもしなかった。
いや、精神年齢を踏まえればある意味妥当かな?
ウールさんが俺に教えてくれたように俺もセシルが強くなれるように導いてやろう。
こうして俺は弟子を連れてクエスト達成の報告と盗賊の引き渡し、それからセシルの冒険者登録も含めて街に帰る。




