指名依頼
たった一日でFランクからBランクまで昇格した俺は他の冒険者から畏怖と畏敬の眼差しを向けられている。
前代未聞の昇格。あまりの実力差に誰もが俺に声をかけようとしてこない。
そんな俺は今、レッドドラゴンを換金した金を受け取っている。
「おおっ! こんなに!」
思わず声を上げてしまうほどの大金が俺の目の前に置かれている。
「これ全部!?」
「はい。全部で2000万アルスになります」
少し前まで無一文だった俺は一気に金持ちになった。これで野宿しなくて済む。
温かい部屋で、柔らかなベッドで寝ることが出来る!
ここが人目のつかない場所なら小躍りをしていてもおかしくないほどに舞い上がっている俺はこの金の使い道に悩まされる。
どうするかな? まずはこの街で一番の宿に泊まってみようかな。それから何か美味しいものでも食べるのもいいな。ああ、なんて贅沢な悩みなのかな………………。
得た大金の使い道に悩む。
「それとリブロさんに指名依頼がいくつか届いております」
大金の使い道に悩む俺に受付場のお姉さんは何枚かの依頼書をテーブルに広げた。
ランクが上がったのも昨日だというのに噂が広まるのは速いもんだ。
「えっと、〈治療院の助っ人〉〈怪我をした子供の治療〉〈火傷を負った貴族の治療〉………………どれも治療ばかりですね」
「あれだけ凄い治癒魔法を見せられたら当然かと」
苦笑しながら同意してくる受付のお姉さん。
流石に人前でスキルレベルが9の治癒魔法を見せればこうなるのも当然か。
「でも、リブロさんの腕なら冒険者ではなく治療院を開くのもいいかもしれませんね」
「そうですね。将来の一つとして考えておきます。取りあえず、すぐに終わらせそうなものから行ってきますね」
「はい。承りました」
換金したお金だけでも生活するには十分だけど流石に怪我をして困っている人を放っておくこともできない。助っ人や専門治療師になれという話は蹴って怪我をしている人を治していくとしよう。
そうして俺はクエストを受けてこの街で怪我で困っている人を治しに行く。
せっかく上げた治癒魔法。使ってなんぼだ。
一人また一人とギルドに依頼を出した人の家に訪れて怪我を治していく。
やっぱり異世界では回復や治癒魔法は必須だな。早い段階で取得してスキルレベルを上げておいてよかった。もっとも俺の場合は自分に必要だったから取得したが。
とはいえ、完全治癒魔法は本当に凄い。怪我が原因で盲目になってしまった人の視力までも治してしまう。
スキルレベルが9でこれならMAXまで取得するとどうなるんだろう?
スキルポイントも溜まっているし、せっかくだから最大値にしてみるか。
俺は興味本位でスキルポイントを半分消費させて治癒魔法のスキルレベルを最大値まで上げた。
スキルレベルが上がると俺の脳にその魔法名が刻まれる。
おお、これは凄い。流石はスキルレベルがMAXなだけはある。
早速試してみたいけど、そう都合よく怪我人なんて…………………。
「だ、誰か! 誰か来てくれ! モンスターに足をやられちまったんだ!」
いた。
冒険者と思われる男性の二人組。一人が怪我をした人に肩を貸してようやく街に戻ってきた感じだ。
そして怪我をした人の右足が膝下から無くなっていた。
モンスターに足を喰われちまったんだろうな。不謹慎だけどちょうどいい。
俺はその二人組に向かうとその二人組が俺に気づいた。
「あ、あんた! 確か治癒魔法が使えた新人だったよな!? 頼む! 止血だけでもいいからどうにかしてやってくれ!」
「ああ、任せろ」
さぁ、スキルレベルMAXの治癒魔法の力を見せてやる。
「《セイクリッドヒール》」
怪我をした冒険者の足に治癒魔法をかけると無くなったはずの足が元に戻った。
「あ、足が、元に………………」
「マジかよ!? もう動かせるのか!?」
治癒魔法はあくまで怪我を治す魔法。スキルレベルをあげていけばその効果が強くなっていくが、無くなった手足までは元には戻らない。だけどスキルレベルが最大値になれば無くなった手足までも元に戻すことが出来る。
流石はスキルレベルMAXなだけはある。
礼を言ってくる冒険者の二人組は何か礼を、と言ってくるが俺も自分の都合で治したから受け取るのは気が引けたからお礼の言葉だけ受け取っておいた。
さて、次の依頼主の元に行きますか。
こうして俺は新しい治癒魔法も取得して次々に怪我人を治していく。
多くの人に感謝され、お礼を言われて、報酬金以外にもお礼の品物まで貰った。
受付のお姉さんが言っていたように本当に治療院を開くのもいいかもしれない。俺、病気なども治せる回復魔法も使えるし繁盛するかも。
割と本気でそう思った俺はひとまずそのことは保留にして頭の片隅に置いておいた。
いずれかはいいかもしれないけど、最低でもシャーレを見つけるまでは冒険者でいよう。冒険者として俺の名前が世間に知れ渡ればあいつからこの街に戻ってくるかもしれない。
そう願いながら俺は受けたクエストを全て達成する。




