プロローグ
俺――相崎総司は現代日本で生活していた高校生だった。
特に秀でたこともなければイケメンというわけでもない。むしろオタクに分類する人間だった俺は交通事故に会って命を落としたのだが、死んだ俺の前に神様が現れた。
その神様から異世界に転生させる。と言われてオタクである俺はすぐに気付いた。
よくある異世界転生。神様からチート能力を授かって異世界最強もしくは異世界ハーレムを作る展開だと。
俺は内心ガッツポーズを取って迷うことなく異世界に転生することを選んだ。選んだまではよかった。
問題は俺にくれるチートはくじ引きで決定することを除けば。
どうやら天界規定で転生者に好きなチートは授けられないらしい。仕方がなく俺はくじを引くことにした。
いいものが当たりますようにと願いながらくじを引くとそこには〝翻訳〟という二文字が書かれた紙。
俺のチート能力は〝翻訳〟で決まった。
当然のように俺は抗議したがそれも虚しく俺は〝翻訳〟というチートとは思えない能力を授かって異世界に転生した。
そして異世界に転生した現在では…………。
「リブロく~~~ん!」
「うおっ! いきなり抱きつくと危ないだろ? シャーレ」
「えへへ」
俺の背中に飛び乗るように抱き着いてくる金髪碧眼のエルフの幼女、シャーレは陽気な笑みを見せる。
まったく可愛い奴め………。
今から五年前に異世界に転生した俺は赤ん坊の頃に両親に捨てられてこの孤児院で生活している。ここでの生活をやりくりしている院長やシスターの人達には感謝しかない。
いつかは育ててくれた恩を返さないとな。
「リブロくん。あそぼ」
「はいはい。今日はシャーレの好きなものに付き合ってやるよ」
「ほんとう!?」
「その代わり俺が勝ったらお勉強な」
「え~~~~~~~!!」
勉強という言葉に物凄く嫌そうな顔をするシャーレ。その気持ちは凄くよく理解出来るけど君には必要なことだからね?
この世界には種族によって言語が違う。
人間には人間の、エルフにはエルフの言語がある。だから他種族の言葉を覚えたかったらレベルを上げて俺が神様から授かったような翻訳のスキルを取得するか、自力で勉強するしかない。
だからシャーレが俺に懐くのは俺以外にシャーレの言葉を理解出来る人がいないからということが大きい。
言葉の壁もあってこの世界はそれぞれの種族で国を建国して生活していて、この国やこの街は主に人間が生活しているなかでエルフであるシャーレがいるのは非常に珍しいことだ。
ある日に院長がシャーレを拾ってきた日は初めての生エルフに驚いたもんだ。
「じゃ鬼ごっこ! リブロくんが鬼ね!」
「はいはい」
駆け出すシャーレの後姿を見ながら俺は現在の俺のステータスは確認する。
「《ステータスウィンド》」
リブロ・リーベラ
Lv1
体力:4
筋力:3
耐久:2
敏捷:4
魔力:1
スキルポイント:0
スキル:翻訳LvMAX
この世界の人は全て自分のステータスを数値化して見れるスキルを持っている。それは転生者である俺でも例外はな。そしてLv1の初期ステータスの平均は1~15の数値だが、訓練をしたりレベルを上げればステータスは上昇してスキルポイントを獲得。そのポイントをステータスウィンドにあるスキルツリーから自分の使いたいスキルに割り振ることができる。
面白いことにスキルツリーはそれぞれの個性を可視化させていて人によって取得できるスキルも違う。
五歳児である俺は当然Lv1。五歳児相応のステータスを保持している。
馬鹿高いレベルでもステータスもなければ特殊な魔法もスキルもない。あるのは〝翻訳〟のスキルだけ。
それもスキルレベルが無駄にMAX。
種族の言葉の壁どころか俺は動物や虫とまで言葉を交わすことができる。
けれどそれだけ。それ以外何の役にも立たない外れスキルだ。
せっかくの異世界転生だというのに異世界最強も異世界ハーレムもこれでは作ることもできない。
おまけに孤児からのスタートだ。
まったく、神様にでも嫌われてんのかね? まぁ、美幼女妖精であるシャーレと一緒に遊べるから嫌という訳ではない。
それに異世界最強もハーレムもいいけどのんびりスローライフというのも悪くはないな。
「さてと、そろそろ追いかけますか」
シャーレとある程度距離が空いて俺は鬼ごっこの鬼のようにシャーレを捕まえに駆け出す。
この五年間、変わることのない日常。俺はずっとこの日常が続くと思っていた。
けれど俺はこことは違う別世界からやってきた転生者でありながらもそのことを綺麗に忘れていた。
この世界は弱肉強食の世界だということを。




