羊飼いの逆襲
「き、貴様ああ~っ!!」
帝国騎士団のピケルが振り下ろした剣は、空を切っていた。
「あんたの剣術は随分とゆっくりなんだな。」
「な、何だとおおっ!平民の薄汚れた羊飼いめ、貴族に対する暴言は死罪に値するぞっ!!」
「あれ?リーファを匿った時点で死罪じゃないのか?」
「くっ!き、貴様あああ~っ!叩き斬ってやるっ!」
ピケルは怒り狂って俺に何度も剣を突き付けるが、どの突きも俺には遅く感じていた。うちのオヤジの突きの方が10倍は速い。
「いいかい騎士殿。剣の突きって言うのはこうやるもんだぜ!」
俺はいつもの練習通りに鋭い突きの3連撃をピケルにお見舞いする。と言ってもいつもの練習用のクソ重い剣ではなくトニーが所有していた本物の剣なので、いつもよりも数倍速く鋭い突きになっていて俺自身も驚いてしまったのだが。
そしてその3連撃の3発目でピケルの持つ剣を弾き飛ばし、剣は虚しく後方の地面に突き刺さったのだった。
「俺はご存知の通り、卑しい羊飼いだ。でもあんたは騎士なんだろ?本職の人間が、卑しい羊飼いの剣に負けるのかい? 」
剣を失ったピケルは怒りに身を震わせ、部下達に激しく命令する。
「こ、こ、こいつを、羊飼いを殺せえええぇぇぇえええーっ! 醜いゴブリンもだ! ダークエルフとオーガは生け捕りにせよっ!」
「「はっ!!」」
ピケルは後方に走り出し、救援要請の信煙弾を打ち上げた。
「ま、まずいぞセシルっ!あいつ味方をここに集めるつもりだ! いくらお前でも帝国騎士団が集まりだしたら・・・・・・!」
「よし、ここはバラバラに逃げよう!トニーはシェリルを頼む!」
「わ、分かった!任せろ!」
俺はそう言うと、目の前に迫った帝国兵4人を力任せに弾き飛ばすと、後方にいた7人にも届くようにロングソードを力いっぱい振りぬいた。
すると俺の凄まじい剣撃は、11人全員をさらに後方へと吹き飛ばした。
「リーファ! あの魔法陣はオーガやゴブリンも転移させられるのかい!?」
「リーファに掴まれば出来る!」
「そうか、では俺自身はどうだ? 一緒に転移出来るのかい?」
「セシルも出来る!!」
「よしっ!オーガに生きてるゴブリン達を集めさせるんだ!」
「わかったっ!」
<自分とダークエルフを放牧しますか?>
やはり案の定、あの声が聞こえてきた。
(頼む!とりあえずアトラス山脈に転移してくれ!)
俺は帝国兵に聞こえないように、頭の中でその声に指示を出した。
すると、リーファの足元に光輝く魔法陣が現れた。すでにオーガの命令で生きているゴブリン達は集まっている
「みんな!リーファに掴まるんだっ!」
俺の指示にためらっていたゴブリン達だが、オーガがリーファの肩に掴まると、素直にゴブリン達もリーファに掴まり出した。
徐々にリーファと魔物達が魔法陣の中に沈んでいく所に、走っていた俺も飛び込み、全員が魔法陣の中に消えていった。
「な、な、何だとおおおおーっ!! ま、まさかあれが亜人が持つ秘宝の1つなのかっ!?」
やがて魔法陣も完全に消えて、ピケルは膝を突いて愕然としていた。
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