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立ちはだかる者


「あ、危ないリーファっ! こっちにすぐ来るんだっ!!」


 俺は、オーガを守るように小さな両手を広げている小さな少女に叫んでいた。


「セシル、オーガいじめちゃダメ! オーガ悪くない!」


「リーファ!?そいつは羊達を殺して盗もうとした悪い奴なんだよ!いいからこっちへ来るんだ!!」


 俺はリーファの後ろに立っているオーガが、いつリーファに襲いかかるかどうか心配で堪らなかった。


「オーガはリーファの友達!悪くない!」


 リーファは俺の言葉など全く聞かずに、同じ主張を繰り返してその場を動こうとしない。


「そのオーガとゴブリン達が羊を盗もうとしたのは、リーファも見ただろう!?それでも友達なのか!!」


「違う、違うのセシル!!」

「どう違うって言うんだい?」


 すると、俺とリーファに割って入るように、前に出て来たオーガも喋り出したのだ。


「ΣЖХФФЮйΘю!πΩΜЩЛУАНЙ!」


 オーガが何か一生懸命訴えてるけど、魔物の言葉など俺には当然分かる訳が無い。



――――するとまたあの声が聞こえて来たのだ。



<異種言語スキルを発動しますか?>



「······!?(まさか、魔物と喋れるのか!?)」



 俺は目の前のオーガを必死で守ろうとするリーファを見つめながら、声の主に「はい」と応答した。


「人間よ!(いにしえ)の契約を破り、先に我らに危害を加えたのはお前達ではないか!我らの仲間を虐殺、または連れ帰り奴隷としているのはお前達であろう!」


 驚くべきことに、今まで全く分からなかったオーガの言葉が、今の俺にははっきりと理解出来た。


「……ひょっとして、帝国騎士団の事かっ!? あいつらそんな酷い事をやっているのか!?」


 オーガの言葉に、俺はすぐリーファが帝国騎士団に襲われたのを思い出した。


 リーファもオーガに向かい合って、何かを懸命に説明している。おそらく俺がリーファを助けた事や、魔物達に危害を加えていない事を訴えているのだろう。


「……おいセシルっ!!ゴブリン共がっ!!」


 すると、トニーが突然大声を出した。


 俺はその声に反応して周りを見渡してみると、ついさっき倒したはずのゴブリン20匹が起き上がって、小剣や棍棒を握り締めて殺気立っていたのだった。


「そうか、あれはオヤジとの剣の修行で使っている練習用の剣だから、致命傷にはならないのか!」


「おいセシル、そんな呑気な事言ってる場合かよ!今度は全員で襲ってくるぞっ!!」


 そう言ったトニーとシェリルが剣を構え、ゴブリンの攻撃に備えた。


 しかし、ゴブリン達はなぜか、俺達の所とは正反対の場所に向かって走り出したのだった。


「ど、どうなっているの!?」

「……向こうに何かがいるのか!?」


 シェリルとトニーがゴブリンの行動に驚いていると、走り出したゴブリン達が1匹1匹と弓矢を喰らって地面に倒れていった。


 俺達が弓矢が放たれた方向を見ると、そこには木陰に隠れた弓兵が数人見えたのだった。その弓兵達の装備品は月明かりが反射して所々が光っている。


「あ、あの鎧はまさか、帝国兵かっ!?」


 トニーが弓兵の正体に唖然としていると、今度は槍や剣を携えた10人以上の歩兵達が堂々と木陰からその姿を現した。


「間違いないわ!あの鎧と紋章は帝国のものよっ!でも一体どうしてこんな所へ帝国兵が!?」


 シェリルが少し震えた声で言った。


 帝国兵がその姿を完全に表すと、ゴブリン達の殺気も一段と強くなり、怒りに身を任せるように帝国兵に突っ込んで行く。


「グガアアーっ!!」


 しかし、帝国の騎士達はいとも簡単にゴブリン達を次々に切り倒していくのだった。


「フン、汚らわしい子鬼どもめが、死顔すらも醜いものだ。」


 次々とゴブリンを切り倒した男はそう言うと、俺達の方へゆっくりと歩みよって来る。


「あ、あいつは……!!」


 そう忘れもしない、その男はリーファの背に矢を放ち、俺の肩にムチを打ち付けた帝国の騎士だったのだ。


「ほう、やはりお前がこの娘をかくまっていたのか、この薄汚い羊飼いめが。このピケル様を欺くとは国家反逆罪だなぁ。もう死罪は免れまい。」


 ピケルは話し終わると同時に、手に持った剣を俺めがけて鋭く振り抜いたのだった。

 

「セシルーっ!」


 シェリルの悲鳴に近い叫び声が辺りに響き渡った。

 




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