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命の灯火



 魔法陣から出現した魔物達が帝国兵士相手に暴れまわる姿に、その場にいる誰もが言葉を失った。


 そして、セシルも目の前の魔物達を打ち倒すと、観客席にいるタナトスを睨んだ。


「な、な、何だ、あの魔法陣はっ!? それに、魔物を召還するとはあいつは一体何者なのだああっ!!」


 タナトスはセシルの未知なる能力に取り乱し、恐怖した。


 するとセシルは、タナトス方に向かって駆けて行き、手に持った剣を大きく振りかぶる。


「ひ、ひいいいいーっ! あ、あの斬撃を食らわすつもりかあああーっ!?」



――――しかし、セシルが剣を振り抜くと、剣には大きなひびが入り、刃の殆どが崩れ落ちてしまったのだった。


「くそっ! やっぱり剣がもたないのか!」


 セシルは柄だけ残った剣を地面に放り投げる。


するとそこに1人の男が、ゆっくりと姿を現した。


「······ククク。待っていたぞ、この好機をっ! かかれえええーっ! 羊飼いを殺すのだあああーっ!」


 剣を捨て丸腰になったセシルに、ピケルを先頭にした帝国兵達がここぞとばかりに一斉に突っ込んで来たのだった。


「おいおい、丸腰の相手にその人数かい? あんたには騎士道精神って言うものがないのかよ?」


「フハハハハーっ! バカめ、何を甘い事をほざいておるのだっ! 力無き者は力ある者に駆逐されるのだよっ!」


「なるほど。じゃあアンタ、文句は言えないな。」


「あん? 何を訳の分からぬ事を······!?」



 ―――ピケルがセシルに対し剣を振りかぶったその時だった。


 ピケルはいつの間にか、自分が大きな影の下にいる事に気が付いた。ピケルは不思議に思い上を見上げる。


 するとそこには3メートル近い巨躯を持った魔物、オーガが魔法陣から出現し、仁王立ちしていたのだった。


「任せたぞ、イザーク。」


「我が主セシルよ。後は我にお任せあれ。」


 セシルはオーガに命令すると、レイ達の方に駆けていった。


「帝国兵よ、我が同胞が随分と世話になったようだな」


「ひ、ひいいいいいいーっ! た、助けろ、誰か私を助けるのだああーっ!!」


 巨大なオーガを見た帝国兵士達は、ピケルを見放して悲鳴を上げながら我先にと逃げて行く。


「ま、待てええーっ! た、頼む、置いて行かないでくれええーっ!!」


 するとオーガは仲間の無念を晴らすように、ピケルの全身の骨を何度も打ち砕き、最後は片手でその頭を鷲づかみにし宙吊りにしてしまった。


「や、や、やめでぐでえええ······」


「力無き者よっ!!あの世で我らの同士に詫びて来るがいいっ!」


―――――グシャアアアアっ


 鈍い音を立て、ピケルは絶命したのであった。



「こ、こ、今度は巨大なオーガが出て来たぞっ! 制限無く魔物を召喚出来るのかあああーっ!?」


観客席のタナトスは、ピケルが惨殺された恐怖でより一層取り乱す。


そんな中、セシルの目の前では一つの命がその終わりを遂げようとしていた。


「ジルクーっ! 頼む、死なないでくれええーっ!!」


レイはジルクに抱き付き叫んでいる。

アイラはそんなレイに何も言ってやれず、立ちすくんでいた。


ジルクのすぐ側では、リアーナも回復魔法をかけ続けてジルクの命を繋ぎ止めていたが、もはやそれも限界に近づいていたのだった。


「あの日、眠りの森でお前の親を殺した私を、お前は命と引き換えに守ったと言うのか······。」


ロイドは俯いて目をつぶり、右拳を強く握る。


するとそこにセシルが現れ、ゆっくりと口を開いた。


「リアーナさんありがとう。ちょっとジルクと話があります。皆さんもジルクから離れて下さい。」


 その場にいた者はセシルの言動に疑問を持ったが、今までのセシルの能力を目の当たりにしていただけに、彼の言う事に自然と応じたのだった。





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