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ダークエルフの少女


「オヤジ~っ!た、大変なんだーっ!ドアを早く開けてくれっ!!」


 セシルの父親ヴォルカスは息子の慌てふためく声を聞き、面倒臭そうな表情を浮かべてから玄関に歩み寄ってドアを開けた。


「何だ何だセシルっ!また怪我した猪でも担いで来たのか?」

「け、怪我したダークエルフ担いで来た!!」

「············!!」

「オヤジ!?」

「お前はバカか?そんなもんすぐ捨てて来い。」


「な、な、何言ってんだよ!こいつ死にそうなんだぞっ!······もういい、そこをどいてくれ!早く治療しないと!!」


 セシルは半ば強引に家の中へ入り、自分のベッドにダークエルフの少女をうつ伏せに寝かせた。すでに彼女の背中に刺さった矢は、セシルが草原で抜いて止血済みであった。


 少女が寝ているベッド近くの壁にはセシル手作りの棚が作られており、瓶に入ったいくつもの薬液がズラリと置かれている。


「えーと、1番効くポーションはと······よし、コイツだ!」


 セシルが薬液を少女の背中にかけていると、ヴォルカスが頭髪をボリボリ掻きながら近寄って来た。


「おいおいセシル、今までみたいにお前が汚した動物や魔物を助けるのは勝手だけどな、ダークエルフなんかに関るとろくな目に合わねーぞ? 分かってんのかお前?」


「だってよ!可哀想じゃねーか、こんな小さな女の子なんだぜ!大の男達が寄ってたかって殺そうとしやがって、帝国のやつら許せねーよ!!」


「ったく! よりによって、まさかのダークエルフまで拾って来やがって。」

「でも、俺にはこの娘を見捨てるなんて出来ないよ!」


 しばらくして、ヴォルカスはセシルに根負けしたように口を開いた。


「······いいかセシル、そいつの傷が治ったらちゃんと森に返しに行くんだぞ?」


「オヤジ~!いいのかよ!?」

「怪我が治るまでだぞっ!」

「ああ、約束するよっ」



 それからというもの、セシルは献身的にダークエルフの少女を看病したのだった。


 やがて、少女は意識が戻るとセシルをやたらと警戒したのだが、彼の優しさに触れ少女は少しずつその心を開いていった。



 そして2週間が過ぎた。




◇◇◇



「おい、セシル!薪割り終わったのか?終わったんならさっさと放牧行って来いや!」


「うっせーなオヤジ、今から行く所だよ。」


 いつものオヤジとのやり取りで、俺は今日も朝7時に放牧を開始する。

 普段通り、20匹の羊たちと牧羊犬のエディを連れて、俺は草原をゆっくりと歩き出した。


 でもただ1つ、以前と違う事がある。


 それは、俺のすぐ後にダークエルフの少女「リーファ」がいる事だった。


 ダークエルフの少女は自分の名前を名乗り、長い間「眠りの森」で暮らして来た事を語ってくれた。

 どうして帝国騎士団に狙われたのかは、彼女自身も分からないそうだ。



 で、そのリーファは、どんなに長距離を歩こうが、天候が大崩れしようが、俺の後を決して離れない。すっかり俺は彼女に懐かれてしまったようなのだ。


 ダークエルフの仲間達が、帝国騎士団に殺されて行き場を無くしたリーファだったが、今の所俺の家に住み着いている。


 もちろんオヤジはリーファの面倒を見るのは大反対だったけど、面倒を見るのは厳しい冬を越す期間だけという条件付きで、どうにかオヤジは説得する事が出来た。


 オヤジは口は悪いが、案外「お人よし」なのだ。

 もしかしたら、俺もオヤジの血をしっかり受け継いているのかもしれない。


 まあ、それよりも後は何と言っても生活費だ。


 ただでさえ親子2人の生活はキツイのに、そこにリーファが加わる事により、さらに俺達の貧乏生活に拍車がかかってしまったわけだ。


 この問題を考えると本当に頭が痛くなる。


 でもそんな時だった。


「セシル、これ見て。」

「ん?何だい、その古びた本は?」


 いつもの放牧でちょうど昼飯を食べ終わった頃に、リーファは懐から1冊の古びた本を取り出して、俺に見せてきたのだ。


「これセシルにあげる。」

「え、この本をかい?(弱ったなぁ、俺は文字が読めないし)」

「うん。」


 リーファは満面の笑みを浮かべている。俺は断るのも悪かったのでその古びた本を仕方なく貰う事にした。


 文字は読めないけど、せっかくリーファがくれた物なので、俺は試しにその本をパラパラとめくってみた。


 すると驚いた事に、その古びた本には一切文字が書いていなかったのだ。


「あれ?リーファ、この本何も書いてないよ?」


 リーファは小さな口を両手で隠してクスクスと笑っている。すると彼女は再び懐から1つのペンダントを取り出して、その小さな口を開いた。


「これもセシルにあげる!」

「え?これは何だかすごく高価そうな物じゃないか!受け取れないよ!」


 俺はペンダントを受け取る事を拒否したが、リーファはそんな俺はお構い無しに、そのペンダントを俺の首に付けてしまったのだった。


 すると、そのペンダントは急に眩しい光を放つと、俺の体の中に溶け込んでいく様に消えてしまったのだ。


「うああっ!これ一体どうなってるんだ!?消えちゃったぞっ!!」


「大丈夫、心配ない。セシル、また本読んでみて!」

「······え?? 本ってさっきの本?? 何も書いてないから読めないよ??(書いてあっても読めないけど)」


 またリーファが強引に古びた本を俺に押し付けて来る。


 俺は何が何だか分からなかったが、仕方なくその古びた本を再び開いてみた。


 すると、どういう訳かそこには文字が書いてあったのだった。



 ――――――――――――――――――

 【名前】 セシル 

 【職業】 羊飼いのベテラン(レベル18)


 【放牧可能な動物】


  ・羊20匹 ・ダークエルフ1匹

 ――――――――――――――――――



「ダ、ダークエルフ~っ!?」


 文字の読めない俺が、なぜかそう叫んでいた。



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