羊飼い、剣を買い求める
アルパカの毛を売り、100万Gもの大金を手に入れた俺は、アイラさんとリアーナさんの案内でベルグラードの市場にある評判の武器屋に来ていた。
「ねえ、あんた、さっきも聞いたけど、本当に羊飼いが剣なんているわけ?」
「ええ、もちろん。狼やゴブリンに羊が襲われる事もありますから。」
アイラさんは俺の返事に納得していないようだったが、それでも店内で俺に合いそうな剣を探してくれている。
「やっぱり初心者は小剣かしら?」
「あ、アイラさん、出来れば出来るだけ大きくて頑丈なのがいいです。」
「ちょっと、あんたねえ、剣士でもないのにいきなりそんな物を振り回せる訳ないでしょ!?」
「あ、俺は子供の頃から修行してましたから、大丈夫ですよ。」
「羊飼いさんが剣の修行なんてするの!?」
アイラさんより先に、リアーナさんが俺に最もな突っ込みを入れた。
そうだよな、普通の羊飼いが大剣を振り回すなんて聞いた事ないし……。
でもとにかく、小剣なんかじゃダメだ。トニーから借りた長剣でもちょっと使っただけで壊れてしまったし、出来るだけ刃が分厚くて頑丈なのにしないと。
「こんにちは~ 長剣をお探しですか?」
そうこうしていると、店の奥から武器屋の店主らしき若い男が出て来た。
「そうなのよ、私は初めは小剣がいいって言ってるのに、この子は頑丈で大きい剣がいいって言うのよ!」
「いや~、以前、俺が長剣を使ったらすぐに壊れてしまったもので……。」
俺の言葉に反応した店主は俺の方に歩みよって、ちょっと失礼します、と言った後に俺の腕や背中を触って来た。
「あ、あ、あの……、一体なんでしょうか??」
「ああ、すいません、いつものクセで! お客さんにぴったりの剣を用意する時はいつもこうさせてもらっているんですよ。」
武器屋の店主は申し訳なさそうに頭を下げた。
「そうそう、レイさんったら、アイラの剣を選ぶ時もこんな感じだったから、アイラに顔を思い切り叩かれたもんねっ!ウフフ、アハハハハ……!」
「もう、そんなの当たり前じゃない。」
リアーナさんが思い出し笑いをし、ちょっと不機嫌そうにアイラさんが返答した。
「いやー、それにしてもお客さん、凄い筋肉ですね。特に背筋が凄いですよ。これなら大剣でもいいかもしれませんね。」
「「えっ!!」」
武器屋の店主レイの発言に、アイラさんとリアーナさんが驚いた。
「ウソでしょ!? あんた、どんな修行して来たのよ!?」
「うーん、何年も薪割りをして来たからですかね。近所の家8軒分を毎日やらされてたので……。」
「「8軒分!?」」
俺の発言に今度はその場にいた3人が驚いていた。
「道理で背筋が異様に発達しているわけですねえ。……しかし、困ったなあ。」
レイは頭を掻いて悩みだした。
「レイさん、何が困ったの?」
――――ドンっ!!
リアーナさんがレイさんに尋ねたところで、突然店のドアを荒々しく開ける音が聞こえた。
「おうおう、店主さんよっ!! 今日こそきっちり金を返してもらうぞっ! 金は用意出来てんだろうなあ!?」
俺が店の入口を見ると、数時間前に俺に絡んで来た街の男達が、睨みを利かせて立っていたのだった。




