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羊飼いセシル100万G手に入れる



 いきなり俺に絡んできた街の男達が、俺に襲いかかろうとすると、またあの声が聞こえて来た。



<放牧している動物をこの場に召喚しますか?>



 うーん、恐らく動物じゃなくて「魔物」をここに呼んで戦わせるか? という提案なんだろうけど、ホブゴブリンやオーガなら1発でこんなやつらは倒すと思うが、さすがにそれは街中が大騒ぎになるな。


「とりあえず、誰も呼ばなくていい。」


 俺は頭の中でその声に返答した。


 そして男のパンチが俺の顔面近くに飛んで来たのだが、やはりオヤジの剣に比べたら蚊が飛んでいるくらい遅く感じる。


 余裕で避けられるが、それをやってしまうと男達の反感を買うので、ちょっとだけ避けて被害を軽く済ませる事を俺は選択した。


――――パチンっ


「ぐああああーっ!!」


 俺は演技で大袈裟に地面に倒れた。

 ちょっとオーバーだったかな?


「へっ!軟弱な羊飼いだぜ。1発で倒れちまうなんてよ!(殴った感触はなぜか弱かったけど??)」


「おい、そんな奴はもう放っておけ。これから大事な集金なんだからよ!」


「そうだな、貧乏羊飼いは金も持ってねえだろうし。」


 俺のやられた演技が絶妙だったのか、何とか男達は去って行った。


 ふうっ!とため息を付きながら、俺が倒れた地面から起き上がると、艶のある長い黒髪を風になびかせ、細身剣レイピアを携えた1人の少女が立っていた。


 すぐ横には銀色の髪を肩上くらいに切り揃えた女の子もいる。その子は清潔感と品がある聖衣をまとっている。


「ったく情けないわねーっ!あんた、やられっ放しで悔しくないのっ? いくら羊飼いだからって、あそこまでされたらやり返しなさいよ!」


「は、はあ······。」

「はあ、じゃないわよ!最近の男は本当にだらしないんだから!」


 黒髪の少女が俺を責めていると、銀髪の方の女の子が割って入って来た。


「ちょっとアイラ、そんな風に責めたら羊飼いさん可哀想よ!······怪我はどう?もし痛むなら治療ヒールの魔法をかけるけど?」


「いや、大丈夫です。もう痛みませんから。」


 ありがとうございました、と彼女達にお礼を言ってから、俺はその場を離れようとする。


「ちょっと待ちなさいよ!」

「はい??」

「この街は最近物騒になったし、あんたケンカも出来ないようだから、私達が少し同行してあげるわ。」


「あ、それはいいかも。何だかんだ言ってアイラは優しいのよね!」

「リアーナは黙ってて!」


 ちょっと面倒な話になってしまったと俺は思ったが、さっきみたいなガラの悪い奴らがまた絡んで来てもやっかいだ。

女の子に守ってもらうというのは情けないけど、俺は感謝して彼女達に同行してもらう事にした。


 やがて俺達は軽い自己紹介を済ませ、供に歩き出した。


「それで、あんたは市場に何の用な訳?」

「はい、実はアルパカの毛を売ろうと思って。」

「「アルパカ~っ!?」」


 2人の女の子が同時に俺の顔をマジマジと見て来た。


「アルパカって言えば、まぼろしの珍獣って呼ばれている動物じゃないっ!? あんたは羊飼いじゃなくてアルパカ飼いなのっ!?」


「いえいえ、羊飼いですよアイラさん。羊を50頭ほど飼っています。アルパカは最近偶然見つけて······。」


「そうなんだ!羊飼いさん凄い!アルパカの毛はけっこうな金額で取引されてるのよ。」

「そ、そうなんですか、リアーナさん。」


 そうこうしている内に俺たちは動物の毛皮を扱う専門店に付き、俺がアトラス山脈から持ってきたアルパカの毛を無事に換金する事が出来た。その額なんと······


「「ひゃ、100万G~!!」」


見事に俺たち3人の声が重なる。

 アルパカの毛は、何と100万Gで売ることが出来たのだった。


 だいたい羊飼いの月収が4万Gだから、一瞬でその25倍になってしまった計算になる。


 俺はすっかり有頂天になってしまったのだが、この後その大金を全て失ってしまう事になるとは、まったく想像もつかなかったのである。




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