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ゴブリンとオーガを放牧してます


 俺は今、アトラス山脈の中腹より少し上の小さな平地にいる。


 空気は澄み切っていて、鳥達の声と静かな風の音が聞こえてくる。

 俺は国境沿いに連なる山々を眺めつつ、リーファから貰った1冊の古びた本を見ていた。



 ――――――――――――――――――

 【名前】 セシル 


 【職業】 羊飼いの大ベテラン(レベル7)


 【放牧可能な動物】


 ・羊50匹  

 ・アルパカ3匹

 ・ダークエルフ1匹 

 ・ゴブリン10匹

 ・ホブゴブリン4匹

 ・オーガ1匹


 【特殊スキル】


 ・異種言語スキル

 

 ――――――――――――――――――



「なんか増えたよな······(汗)」


 しかし不思議な本である。

文字の読めない俺がなぜかその本に書いてある文字は読めるし、読み返すと書いてある事が変化しているのだ。


 う~ん、ちょっと前に見た時はレベル18だったけど、おそらくレベル7に下がった訳じゃないんだろうな。


『羊飼いのベテラン』から『羊飼いの()ベテラン』にランクアップしたという事か。


次は何になるんだろう······??



 俺がそんな風にボンヤリ考え事をしていると、1匹のホブゴブリンが歩いて来た。


「おかしら!今日も活きのいいウサギと猪が取れましたぜ!」

「あ、ギルダ、ご苦労様!助かるよ~。」

「いえいえ、お安いご用ですよ、お頭!」


 ホブゴブリンのギルダは、元々ゴブリンの群れのリーダー格だったやつだ。


 帝国兵に大怪我を負わされた仲間を治療した俺に恩義を感じているらしく、俺を「お頭」と呼ぶようになった。もちろん他のゴブリン達も俺を認めてくれて同じように呼ぶ。


 なんか俺的には未だに慣れないんだけどね······。



 それから、食べ物は元気なゴブリン達やオーガが野生動物を狩って来てくれたので、殆ど苦労はしなかった。

 

 そうそう、ゴブリン達を助けたらオーガも俺を認めてくれたみたいで、気付くとあの古びた本に名前が書いてあったのだ。


 ちなみに今はどこか狩猟に行っているのか、まだオーガの姿は見えない。まあそのうち帰って来るだろう。



 しばらくして「じゃあ行ってくるよ」と俺が皆に挨拶すると、やはりリーファが俺に抱き付いて離れない。


「リーファ、ここでいい子にしてるんだ。俺はこの国の現状を見てくるから、動物達の世話を宜しく頼むよ。お土産買って来るからね。」

「お土産!?うん分かった! 何か困ったらリーファ達呼んで!」


 お土産というワードでリーファは俺をすんなりと放してくれた。こういう所はまだまだ子供だな。


 俺はもう一度みんなに手を振ると、あの力を発動させる。


「放牧スキル発動!」


 俺の言葉で足元には光輝く魔法陣が瞬く間に現れた。


「ベルグラードの街へ転移!」


 次の言葉で俺は魔法陣の中へ沈んで行き、あっと言う間に隣町ベルグラードの中心地に転移した。




◇◆◇



 ベルグラードは俺の住むノーヴィス村と違い、街を行き交う人々で賑わっていた。


 何しろ大きな教会や市場もあるし、トニー達が所属している冒険者ギルドもあるのだ。


 ちなみに俺がベルグラードに来た目的は主に3つある。



 1・帝国のやっている事を調査する

 2・俺が使う剣を買う

 3・アルパカの毛を売る

 


 まずは1つ目は、帝国がやっている亜人や魔物の虐殺や奴隷化をこの目で見る事だ。


 帝国がリーファやゴブリン達にしたような事を続けるのなら、やがて彼らは今よりもっと人間の集落を襲うようになる。


何とかしなければ魔物や人間に大きな被害が出てしまう。

 俺に出来る事はたかがしれているが、でもとりあえずはこの目と耳で現実を知ろうと思ったのだ。


 2つ目は俺が使う剣を購入する事だ。

 何しろ俺は修行用のクソ重い剣しか持っていない。帝国から狙われる身となっただけに、すぐにでも剣は欲しい。


 3つ目は新たにアトラス山脈で見付けたアルパカ達の毛を売る事だ。

 これを売れば何とかみんなで冬を越せるだろう。


 後はオヤジの消息が気になっているのもある。

 俺はゴブリン達の傷を治す為に、何度か魔法陣を使って自宅にコッソリと戻ってみたが、やはりオヤジの姿は無かった。


 まあ、あのバケモノ染みた強さのオヤジだから、帝国兵に捕まるような事はないだろうけど。


 とにかく俺は、オヤジには聞きたい事が山ほどある。

 子供の頃から剣の修行をした事で、今回の魔物や帝国兵の襲撃は防ぐ事が出来たのだけど、いかんせん自分の強さには驚いた。


 そしてそれを叩き込んだオヤジはいったい何者なのか、俺に何をやらせようしているのか?という事だ。


 俺はそんな風に考え事をして、ボンヤリと商店が立ち並ぶ街道を歩いていたのだが、突然3人の男達に絡まれてしまったのだった。


「おい兄ちゃん、見かけない顔だな。それに随分と薄汚いかっこしてやがる!」

「何だか家畜臭えぞっ!ひょっとしてお前、羊飼いか?」


 まったくどこへ行っても、羊飼いってのは差別されるもんだ。

 帝国が俺たちの国を支配してから、その差別はより強くなったらしいが、いい加減俺はウンザリしていた。


俺は怒りを抑えて、そいつらを無視する様にその場を立ち去ろうとしたが、男達はしつこく追いかけて来る。


「おいおい!身分の低い羊飼いが街人を無視してんじゃねーぞ!」


 そう言い放つと、男達は俺に対してこぶしを振りかぶって来たのだった。

 

 


 

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