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怪事件調査


一時間目終了後の休み時間


「みーなーぎーぃ」

俺は両手を腰に当てて仁王立ちする。

そこは我ら『発掘部』の部室だ。

「だ、だって私がでしゃばって教室で授業なんて受けるからこんな…」

まただよ。自分のせいにする癖。違うってあれほど言ってんのに。

「だからってなにやってんだよお前は」

「わ、わたしなんてこんなところにいちゃいけない。はりけんさんからいただいたこれで…」

はりけんさんとは『針金研究部』の略だ。それにしても部活にまでさん付けとは。いやいや、そうではない。美袋はいま両手に一本の針金をもって両サイドに引っ張っている。

「おーい! だからってそれで何する気なんだよ」

「せ、切腹を。この針金で…」

なんか、針金研究部のみんなに申し訳なくなってきた。こいつ、命のためなら手段を択ばないのか。

「その針金で腹を切るのか? その針金ははりけんで作品にするための唯一の道具なんだぞ? それを使ってお前は命を落とそうとするのか? はりけんの吉井先輩、ナベ先輩がそれ知ったらどう思うだろうな」

美袋の手を止めるために俺は説得した。美袋の手は震えていて、両サイドに引っ張っていた針金を手から離した。

「わ、わたし……」

美袋の目からぽたぽたと涙が落ちる。どうやら我に戻ったみたいだ。

俺は美袋に近づき、落とした針金を拾う。思った以上に硬くない針金だ。

「で、結局朝の教室騒動とお前は接点があるのか?」

「私は今日は朝一番に教室にきてカバンを置きに行きました」

その姿を長谷川は見たといっていた。これは嘘ではない。

「そしてここへ来ました。私の存在を消すための手段を考えていて」

「おーいー!」

「そこではりけんさんが使っていたこの針金なら何かしら道具になるのではと」

「おーいー!」

「そうしていたら朝のホームルームのチャイムが鳴ってしまい、教室に戻ろうかと思いましたが、悪目立ちするので一時間目が始まるタイミングで戻ろうか思いました。そうしたらおにいちゃんからメールがきて今日はそこにいろと言われたのでここにいました」

「…はぁ」

「きっと私のことで何か教室であったんだと思って、考えているうちに針金で切腹を決断しました」

「いやいやいやいやまてまてまてまて! まず、針金で腹は切れない。なぜなら針研が使っている針金はこんなにも柔らかいからだ。だからまず切腹は困難。あと、教室で何かがあったことは確かにあったんだけど、それがクラスの女子が美袋のせいだと騒ぎ立てている。これは本当だ」

「や、やっぱりそうなんですね…」

「そうだけど、俺たちは美袋がやったなんて思ってない。だけど証拠がない。だから事情聴取というかアリバイがないか聞きに来たんだ」


あの後、飯塚から美袋を見つけたらアリバイがあるか聞いてきてと言われた。疑っているわけではないが、何かしら接点があるのかないのかで推理の方向が変わってくる。飯塚はそう思ったんだろう。俺もそう思う。美袋がしていないという証拠がほしい。

「アリバイ…私はずっとここにいましたから」

そうなのだ。ここ『発掘部』は誰も近寄らない部室。ましてや教室棟からここまでくるのにだいぶ時間がかかる。七時に長谷川と顔を合わせて七時半には教室が荒れ果てていた。美袋は部室にいた。となるとこれはアリバイになるが目撃者がいない。美袋が嘘をついていると言われてしまえばそうなってしまう。だれか目撃者がいないのか。二つの意味で。

「ところで、教室騒動といっていましたが、何があったんですか?」

美袋は両手を絡ませて祈りを捧げるように俺に尋ねる。俺は迷える子羊ではない。そしてお前はシスターではない。ここは修道院か。

「朝、お前が出て行ったあと教室の机と椅子が倒れてたりひっくり返ってたりして荒れ果てていたんだ」

「なんで…は! 私のせいで!」

「だーかーらーちがうーっつーの!」

もう全て自分のせいにしてしまうからツッコむことに疲れてきた。いちごミルクが飲みたい。

「じゃあ聞くけど、美袋はどうしてこうなってたと思う?」

絡ませていた両手をほどき、右手をほほに当てて考えている。

「竜巻でも起こったのでしょうか?」

「そんなわけない」

「おヤンキーたちが朝から暴れたのでしょうか?」

「ヤンキーにまで『お』をつけるのかよ」

「…もう答えは一つ。私のせいで」

私のせいでこうなったというんだと思い、俺は美袋の口を俺の手でふさいだ。

「それ禁句な。私のせいでっていうの。禁句」

美袋は激しくコクコクと頷いた。

「で、でも、こういうこと、よくあるんです」

よくあることなのかよ。てかどういうことだよ。

「怪奇事件とかあるじゃないですか。私の身の回りには結構あって」

「例えば?」

「朝来たらクラスの子の机が血まみれになっていたとか」

なんか急にリアルなやつになったな。

「それは朝一番にきた方が花瓶を割って手を切ってしまい、その血が机についたままだったんですけど」

「おそろしいな! いろんないみで!」

「机と椅子がバラバラに配置されているなんて日常茶飯事で」

「そ、そうなのか、前は何か理由があったのか?!」

「中学の頃は私へのいじめでした。私の机の周りにはみんなの席がなく、一人ポツンとあるように配置されていました」

「縦、横一列の列がバラバラということか…」

でも今回は机が倒されている。椅子もひっくり返っている。これは一体どういうことなんだ?

「あ、あの」

「ん?」

「私たちの席はどうなっていましたか?」

「俺たちの席? そういえばなんともなってなかったな…」

ふと、美袋が話した過去話と今回の騒動を照合した。何か共通するところがある。

なるほど。そういうことなのか。だとすれば、犯人は?

「ちなみに、中学の時は誰が席を動かしていたんだ?」

「…犯人はわかりません。ですが、先生が直接本人たちに注意したと後で聞きました。きっと私のそばにいたくないという子がしたんではないでしょうか」

そういうことだ。だから俺のクラスだけああなる。接点がいく。

「犯人、わかりそうだよ。あと飯塚にこの推測が正しいか聞いてもらう」

「わ、わかったんですか?!」

「まぁ美袋の中学の時の話と照らし合わせたらきっとたぶん今回も同じ理由だろう」

「でも、中学が同じ生徒は同じクラスにいませんよ?」

「だけど、女子ってそういうもんだろ?」

あと少しで真実に近づける。後は飯塚に話を聞いてもらおう。

「美袋。今日はお前はここにいたほうがいい。放課後になって飯塚委員長様に話を聞いてもらって確信を得たら、明日の朝みんなの前で委員長様に説明と犯人を特定する。それで美袋がまた教室にこれる状態になったらその時は俺が呼びに行く。とりあえず、放課後までここにいてくれ」

俺はそういうと美袋は深くお辞儀をした。


この怪事件、説いて見せる!


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