サンプル1
★サンプル1「偽書・甲陽軍鑑」
難易度:★★☆☆☆
解説:2009年まで歴史的価値がないとされた『甲陽軍鑑』が、「武士道」という日本人的倫理思想の観点で歴史に大きな影響を与えていた……、というお話のシナリオです。今まで架空だと思われていた武田家の名軍師・山本勘助が実在していたと判明したり、武田四天王の一人で『甲陽軍鑑』の作者・高坂昌信の孫である高坂甚内が甲賀流忍者として登場したり、虚実が入り交じるストーリーは「偽史」をテーマにした『ループ&デジャヴ』に相応しいお話になっています。
※このシナリオでは、NPC用ミープルを1つ使います。
種類:物品
特異点:甲陽軍鑑or軍学書or本
特異点特定のキーワード:「山本勘助」「武士道」「島(佐渡島)」
キーワードごとのカードイベント
・山本勘助
基本情報:君はお祭りに訪れた。
聴覚情報:祭り囃子が聞こえてくる。武将を祀ったお祭りのようだ。
視覚情報:場所はお堂だ。人々は右目が塞がれた不動明王を勘助不動さん呼び、山本勘助を信仰の対象としていた。
知識情報:この祭りについて知ろうと思った君は、お祭りを楽しむ人々に問いかけると、彼らは君を温かく受け入れ、君に酒やご馳走を振る舞ってくれた。【毒】【火傷】【出血】が回復する。
キーワード「山本勘助」で判定
NA「君は未来で聞いていた話と矛盾を覚える。山本勘助は存在しない武将だ。『甲陽軍鑑』という書物の中で語られる伝説的な軍師としての山本勘助は、架空の存在のはずなのに……」
・武士道
基本情報:君はしんと静まり返った場所に迷い込んだ。
聴覚情報:部屋に敷き詰められていて、足音すらも吸い込まれる。古い本の匂いがした。
視覚情報:ここは書庫。地図、史記、兵法書が並んでいたが、すっぽりと抜け落ちたように二十冊ほどが入りそうな隙間があった。隣に並ぶのは「武士道」の倫理思想について書かれた本だ。
知識情報:もう少し本棚を調べた君は、抜け落ちた本が、歴史上最初に「武士道」について記録された本だと気づく。それが確か軍学書であったことは思い出せるのだが、本の名前までは思い出せなかった。
その他:音を出したり、声を出したりするロールプレイをした場合、どこからともなく「何奴!」という声がして、君は命からがら逃げ出すことになる。現在地を初期位置に戻す。
キーワード「武士道」で判定
NA「間違いない。抜け落ちてしまって存在しない本は『甲陽軍鑑』という軍学書だ。兵法・刑法の他に、歴史上最初の『武士道』についての記述があったらしい。君は【武士道精神】を手に入れる」
・島(佐渡島)
基本情報:君が訪れた場所は海だ。
聴覚情報:男が君に「乗るかい?」と声を掛けた。君は……(選択イベント。乗るか乗らないか選べる。ここでデジャヴを使っても良い)
選択情報(乗る):君は佐渡島に到着した。有名な流刑地だが、ここには亡命した武将もいるようだ。
選択情報(乗らない):君は船に乗らなかった。
視覚情報:遠くに島が見える。声を掛けてきた男の様子を見ると、渡し船の船頭のようだ。
知識情報:君は渡し船や船頭を見たが、特に変わった様子は見つけられなかった。
キーワード「島」で判定
NA「君は船頭に島について尋ねた。佐渡島だ。武田信玄の家臣・春日惣次郎が武田家滅亡後に亡命し、武田家に伝わる軍学を本にまとめていたという。現在、春日惣次郎は姿をくらまし、執筆していた本も行方知れずだ」
PLがキーワードを報告し、成功した時
NA「報告から推測されることを伝える。一度しか言わないからよく聞け。〈特異点〉は物品で、今は行方知れずだ。この時代の『武士道』という倫理観が書かれたそれが受け継がれなかったおかげで、今日の大日本帝国が世界に勝利するきっかけになった」
PLが特異点を特定し、成功した時
NA「〈私たち〉からノイズ混じりの声が届く――〈特異点〉は『甲陽軍鑑』だ。歴史修正者に邪魔される前にその本を消し去らねばならない。通信…以上…報…を待……。――ここで〈私たち〉からの通信は途絶えました」
甲賀忍ジンが7日目まで生き残っている場合、しばらくしてからGMはNPCの甲賀忍ジンをロールプレイします。
ジン「みんな。聞いてくれませんか? 僕は『甲陽軍鑑』がどこにあるか知っています。僕は『甲陽軍鑑』の作者・高坂昌信の孫、高坂甚内なんです。だから断言できます。春日惣次郎があなたたちの言う歴史修正者ではないはずだって。春日様はおじいさまを尊敬していたから、きっと『甲陽軍鑑』は佐渡島の春日様が住んでいた家に隠されていると思います」
佐渡島の春日惣次郎の家を探した場合
NA「君たちは春日惣次郎が住んでいた家で、二十冊あまりの本を見つける。それは『甲陽軍鑑』と書かれていた。君たちはその本を燃やすこともできるし、ここに置いたままにもできる」
佐渡島の春日惣次郎の家を探した時、甲賀忍ジンが7日目まで生き残っている場合
NA「君たちは春日惣次郎が住んでいた家で、二十冊あまりの本を見つける。それは『甲陽軍鑑』と書かれていた。君たちはその本を燃やすこともできるし、ここに置いたままにもできる。あるいは、ジンにその本を託すことができる。そうすれば、捻じ曲げられた歴史が修正されることを直感的に君たちは悟った」
ジンに本を渡す以外の選択をした場合
エージェントは〈私たち〉からの通信を受ける。
NA「おめでとう。〈ミッション〉はコンプリートされた。君たちは時間流の反動によって平和な日常に戻ることになる。この〈ループ〉で得た道具や能力を持ち帰ることができる。また次回の〈ミッション〉に備えておくといい。――君はまるで夢を見ているかのような気分になる。きっと夢の中だ。ひどい頭痛と耳鳴りがして、君が目を覚ましたのは真っ白で無菌室な部屋。代わり映えしない〈私たち〉に支配された完全管理社会だった……」
ジンに本を渡す選択をした場合
エージェントは〈私たち〉からの通信を受ける。
NA「重大なエラー、重大なエラー、重大なエラー。君は最悪の歴史修正者だ! 真の歴史が消えてしまう! 〈私たち〉が消えてしま――そこで〈私たち〉からの通信は途絶えた。同時に、君はまるで夢を見ているかのような気分になる。きっと夢の中だ。ひどい頭痛と耳鳴りがして、君が目を覚ましたのは――」
歴史的背景など予備情報
武田家の名軍師・山本勘助は実在しなかった。山本勘助は『甲陽軍鑑』という資料でその活躍が書かれ、さまざまな軍略を駆使して武田を支えたとある。しかし、これ以外資料から山本勘助の名が出てくることはなく、この資料も後世が脚色した架空のもので歴史的価値はないと判断されたために、山本勘助は実在しない架空の人物であるという説が一般的になった。
『甲陽軍鑑』は未来で書かれた歴史錯誤物で、この書物がなくなったことで歴史は塗り変わり、ディストピア社会の到来を招く。理由は『甲陽軍鑑』は日本の倫理思想「武士道」の初出であるためだ(武士道が近代まで伝わっていなければ、大日本帝国は第二次世界大戦で手酷い敗北を経験しなかったのかもしれない)。
実際に私たちの時代に残っている『甲陽軍鑑』は写本であり、原本は存在しない。
エージェントになったPCたちは、天正14年(1586年)に遡行し、『甲陽軍鑑』を燃やすというミッションを受ける。ミッションを無視すれば、この『甲陽軍鑑』は小幡家に届けられ、文禄4年(1595年)に小幡官兵衛に伝わり、今日における『甲陽軍鑑』の写本が成立し、日本における軍学の草分けである甲州流軍学が生まれることになる。
NPCの作成
このイベントを採用する場合、NPCを1体作成する。
NPCのステータス
・名前:不明(高坂甚内)
・コードネーム:甲賀忍ジン
・性別/年齢:男/12歳
・所属組織:なし
・目的:甲賀忍者の里の再興
・ジョブ:ニンジャ
・スキル:【ドーモ・◯◯=サン(◯◯は相手の名前かニックネーム)】[他者の手番]今の場面に対し、「ドーモ・◯◯=サン(◯◯は相手の名前かニックネーム)」と言って割り込めたら、その場所に移動することができる。
・ステータス:PCと同じタイミングで作成する。
・タイプ:スピードタイプ(これは確定事項)
・トーテムは持たない
・イメージカラーは黒
・レベル1
・備考:エージェントではないので、死んでもループが発生しない
・その他の情報:一人称は僕。現地の協力者。中性的な見た目の少年だが、れっきとした甲賀忍。エージェントたちが未来から来たことを知っており、今回のミッションに同行する。甲賀忍者の里は改易処分された直後で多くの侍衆が農民になった。力を失った里を再興するために、まだ12歳であったジンは任務を承った。その正体は武田四天王の高坂昌信の孫・高坂甚内である。江戸時代に入ってから、彼は幕府側の忍者となり、風魔小太郎を捕縛する。




