入門リプレイ5
GM「7日目の昼が終わりました。この時点で【瀕死】のPLがいないので、7日目の夜になります」
たるきん「今まで2度も〈特異点〉を見つけられずに死んでるから、3度目の正直だ」
マグ「二度あることは三度あるっていうしなぁ」
司馬田「滅入ってますね笑」
マグ「7日目まで来るのに1時間は掛かるのに、2回も死んでたら滅入って残当」
この時点までプレイ時間は4時間を越えている。途中でお昼休憩を挟んだものの、10時に始めたセッションは、すでに15時を回ろうとしていた。
GM「〈私たち〉から通信が入る」
GM/〈私たち〉「――通信状態が非常に悪い。〈ミッション〉の報告をしてくれ。これが最後の報告だ。〈ミッション〉の進行状態によっては1日目からやり直してもらう」
GM「PC同士で話し合って、[キーワード]を3つまで宣言してください」
たるきん/レイジ「代表して俺が宣言する。他、異論はないか?」
マグ/てぃあら「ないですよー」
司馬田/鮫島「問題ない」
たるきんは手元のメモを確認する。
たるきん/レイジ「キーワードは[鳥][炎][刀]だ」
GM「えー、じゃあ、判定の結果は……」
一同
GM「成功です!」
一同「おおおおおおおお!」
GM/〈私たち〉「報告から推測されることを伝える。一度しか言わないからよく聞け。〈特異点〉は人物で、その時本能寺にいた。また、武器を何も持っていなかった。ゆえに自害せず生き延びた」
GM/NA「さて、その〈特異点〉が何か、君は報告しなければならない」
GM「PLは一人ずつ[キーワード]判定を行います。PLはPC同士を相談させても構いません。一人でも判定に成功すれば、GMはNAします」
司馬田/鮫島「おっ、これは……」
たるきん/レイジ「彼に違いない」
マグ/てぃあら「ですね」
一同「[織田信長]」
GM「全員が判定に成功しました」
GM/NA「〈私たち〉からノイズ混じりの声が届く――〈特異点〉は『織田信長』だ。歴史修正者に彼を殺させてはならない。通信…以上…報…を待……。――ここで〈私たち〉からの通信は途絶えました」
たるきん「つまり、信長を殺せば歴史が変わる、と」
GM「そういうことです。では、ラストイベントのNAをします」
GM/NA「四国を残し日本を平定した織田信長は悲願であった乱世の終結を確信し、安土城に篭もる余生を過ごしていたが、伝説の茶入れ【楢柴肩衝】を手に入れるために本能寺で茶会を開催した。
公家や高僧が帰ったその夜のことである。
高松に進軍したはずの明智光秀が引き返し、『敵は本能寺にあり』と謀反。本能寺に火が付けられた。
燃え盛る本能寺で信長は自分の状況を確かめる。
信長を含めた小姓や護衛の数は100人程で、京都には1万の兵がいることが予測できた。
逃げることはほぼ不可能だが、要塞じみた作りの本能寺ゆえに人一人くらいなら逃げ出すこともできるかもしれない。
小姓に促されて寺の中庭に出てきた信長の前に君たちは現れる……」
マグ「高校で世界史だったから日本史疎いのよな」
GM「あ、予備知識もお話しますね。
史実において信長は燃え盛る本能寺の中で自害したそうです。
自害した理由には説がいくつかあります。
例えば、最も信頼し、乱世終結の志を共有した家臣の明智光秀が攻めてきたことによる無力感や潔い諦念による自害説、京都1万の兵に勝てる見込みがないと考えて逃げる途中で殺されて洛中に首を晒すことになるよりも炎上する中で遺体を残さない判断による自害説などです。
今、君たちがいる本能寺は燃え始めたばかりで、信長は自害するための武器を一つも持っていません」
司馬田「ふむ……。今回は光秀と信長の関係についてはほとんど分からなかったから、信長の性格を考えて、遺体を残さない判断による自害説押しで行きますか?」
マグ「あー、待って。今、この場にいるのってエージェント3人の他に信長と小姓?」
GM「そうです」
マグ「二人の情報って分かる?」
GM「じゃあ、信長から。信長の格好は甲冑姿ですが、かなり酔っ払っていたらしく、今もアルコールが抜けていない感じですね。たぶん、敦盛を舞って、酒飲んでそのまま寝たんでしょう。
で、小姓ですが……、格好はこの時代からすれば頓狂なものです。言うなれば、未来における学生服のような装いをしています。その人物はレイジの顔を見て、とっさに目を逸しました」
たるきん/NA「レイジは小姓に声を掛けます」
たるきん/レイジ「お前……、闇堂アクトじゃないか?」
GM/アクト「ちっ。まさかお前がエージェントだったとはな。……ああ、オレが闇堂アクト様だ。悪いが、信長は渡せねえ。オレ様が歴史を正してやるまではなぁ!」
たるきん「出てこないと思ったら、ここに潜んでたのかぁ」
GM「一応、目的は事前に伺ってましたから。他の人の目的達成難易度と比較しても、入れるならここしかないかな、と思いまして」
マグ/てぃあら「良かった! レイジくんの探していた人が見つかって!」
たるきん/レイジ「お前の祈りが通じたのかもしれないな。感謝するぞ、てぃあら」
マグ/てぃあら「……はい」
司馬田/鮫島「どうしたんだ? 姫宮」
マグ/てぃあら「今、レイジさんがわたしの名前を初めて呼んだんです」
司馬田/鮫島「そうか。なら、あいつは今、一人じゃないってことだろうさ」
GM/アクト「何をごちゃごちゃ話してるんだよ! 邪魔だ! どけ! オレ様は信長を連れてさっさとこんな火事場はおさらばしたいだけだ!」
たるきん/レイジ「待てアクト! 俺はお前を許さない!」
GM/アクト「お前を許さないだぁ?」
たるきん/レイジ「俺が科学的黒魔術教に入った理由を忘れたとは言わせない。お前が殺したのは俺たちの仲間だった……。そして、俺の親友だったッ!」
GM/アクト「……はぁ? 仲間? 親友? バーッカじゃねぇの? 科学的黒魔術教の目的を忘れたのか? 時間流の超越。この世界から教祖様の時間へ跳ぶ方法の追求だろうが! そのためには実験あるのみ! お前はモルモットに勝手に愛着を持っただけだ!」
たるきん/レイジ「モルモット……。それが答えだよ。アクト、お前は魂の深淵から〈私たち〉の手先なんだ。だからお前は時間流を超越できない……。人を人だと思える奴だけが世界の謎を解くことができるんだ」
GM「えー、レイジはアクトに何か仕掛けますか? 一応、【刀】持ってますし」
マグ/てぃあら「レイジくん!」
司馬田/鮫島「英務!」
たるきん/レイジ「昔の俺ならアクト、お前を斬りかかっていたところだ。でも、お前だって人……。お前を一泡吹かせる方法は簡単だ」
GM/アクト「何?」
たるきん/レイジ「俺は歴史を変える! 仲間たちと共に!」
マグ/てぃあら「そうです! 銀河系アイドル姫宮てぃあらの出番ですよ!」
司馬田/鮫島「若い頃を思い出すな。いっちょ、男鮫島、一肌脱いでやろう!」
GM/NA「アクトはぎりぎりと噛み締めて、この戦力差には勝てないと悟った。逃げ出す前に言い残す」
GM/アクト「歴史を変えてみろ! 自分の存在が消えてしまうかもしれない! それでもいいのなら勝手に変えるんだな!」
GM/NA「アクトは本能寺の中庭から逃げ去った」
マグ/てぃあら「存在が……、消える……。ううん。わたしは! わたしたちは!」
司馬田/鮫島「このまま元の世界に帰ったところで賭けは負けなのさ。なら、やるしかねぇだろ」
GM/NA「残された信長は君たちに話しかける」
GM/信長「貴様達は小姓と同じ未来から来たのか?」
司馬田/鮫島「そうだ」
GM/信長「なら、なぜ私の命を救おうとする? おかしいではないか。私は救われなければ、生き残れないというのか?」
マグ/てぃあら「これは本人も気づいているパターン……」
たるきん/レイジ「正直に話そう。信長、アンタは今日、ここで死ぬ」
司馬田/鮫島「この少年の言うことは本当だ。本能寺には兵力にならない小姓や女など100人あまり。それで京都1万の兵に勝てる見込みがあるのか? 逃げる途中で殺されて洛中に首を晒すことになるぞ」
マグ/てぃあら「本能寺と一緒に燃えちゃば晒す首もなくなっちゃいますね☆」
GM/信長「それは私も考えていた。だが、火に焼かれ死ぬとは武士の死に方ではない」
たるきん/レイジ「【刀】だ。使ってくれ」
GM/NA「信長はレイジから【刀】を受け取った。その後、信長は自害を決意する。未来から来たエージェントたちに、逃げるように指示した」
GM/信長「安心しろ。私は死ぬ。それが定めであるというのならば、そうなのだ」
司馬田/鮫島「……信長は死ぬことを知っていたから本能寺に来たのかもしれないな。そうでなかったら、こんなにもすんなり死を受け入れるとは思えん」
マグ/てぃあら「わたしの不安はここからです。歴史は本当に変わったのか。そして、変わらないものはあるのか……」
GM/NA「君たちは〈私たち〉からの通信を受ける」
GM/〈私たち〉「重大なエラー! 重大なエラー! 重大なエラー!
君は最悪の歴史修正者だ!
真の歴史が消えてしまう!
〈私たち〉が消えてしま――」
GM/NA「そこで〈私たち〉からの通信は途絶えた。同時に、君はまるで夢を見ているかのような気分になる。
きっと夢の中だ。
ひどい頭痛と耳鳴りがして、君が目を覚ましたのは――」
GM「エンディングです。どこで目覚めたかロールプレイお願いします」
たるきん/NA「男子高校生なので授業中に目覚めました」
たるきん/レイジ「はっ! 授業中……? 先生……? 俺は元の世界に戻ってきたのか?」
たるきん/NA「――ここでふと教科書を見る。歴史の教科書には信長が死んだことが書かれていた……」
GM「いい終わり方ですねー。歴史が変わったことが一目瞭然」
マグ/てぃあら「わたしは……、存在している……。ここに、いる!」
マグ/NA「暗闇の中、てぃあらにスポットライトが当たる。大歓声で空気が震えた。てぃあらは銀河系アイドルとして、今日もアイドル活動! ファンのみんなの声援が、てぃあらがここにいることを証明してくれる」
マグ/てぃあら「ありがとう! みんなー! わたしは銀河系〈アイドル〉の姫宮てぃあら!(手文字でTを作る)よろしくね!」
GM「おお。てぃあらの目的である『存在しない可能性』に関するエンドですね」
司馬田/NA「鮫島は『お客さん終点ですよ』という駅員の声を聞いて目を覚ます」
司馬田/鮫島「なんだ……夢だったのか……。早く帰らなきゃ」
司馬田/NA「そう言って鮫島は電車を出る。『お気をつけてお帰りください、〈エージェント〉』と駅員がつぶやいた」
GM「夢オチと見せかけてそうじゃないという終わり方。ナイスです」
GM/NA「君は長い夢を見ていたのかもしれない。しかし、なぜか目覚めた君の近くには見覚えのある銀のコインがあった。
もしかしたら、あの夢は、夢ではなく……」
GM「――以上でセッションを終わります。
セッション名は『本能寺の変』でした。
お疲れ様です!」
一同「お疲れ様です!」
その後、一同は感想を言うなどして、その冒険を振り返って良き思い出とする。
TRPGとは一種の冒険。共に困難を乗り越えた彼らには日常では生まれないある種の絆のようなものが芽生えている、のかもしれない……。




