9.わるいところ。
「あ、まだ言うことあったわ」
「まだあるのか……」
「偽名を考えておけ」
「……は?」
なんかいきなり話がおかしくならなかった……?
「いいか? 異世界からの旅人ってのは、そんなに珍しいものでもない」
「ふむふむ」
「だが、この世界の住人の中には、お前たちのことを恨んでるやつもいる」
「……は? ちょっとまて」
「ん? どうした?」
「どうしたもなにも、なんで何もしてない僕が恨まれてるのさ。ぶっちゃけ僕被害者だよ?」
「お前……そんなの決まってるだろ……?」
まさか、僕のイケメン度に嫉妬して……?!
「お前の顔は控えめに言って中の下だ」
「うるさいよ!」
僕のお茶目さんが心の中で何をしようと僕の勝手でしょ! ってか、心を読むなと……はぁ、もういいか……。
「いや、そうじゃなくてな。お前、女神に会ったろ」
「あー、あの電波女ね」
ヒモなしバンジーの原因の。
「つまり、だ」
……な、なにさ。
「女神を崇拝してる奴らは、お前たちがその女神に出会ってしまったというその事実だけで、お前を羨み、そしてその中でも行き過ぎた貴族どもはお前たちを恨んでいるってわけだ」
それ、逆恨みって奴とちゃいます?
「でもさ、それがどうして偽名につながるのさ」
貴族が嫌なら逃げればいいだけなのでは? というか名前を言わなければそれでおしまいなのでは?
「忘れたのか? この世界には魔法があるんだぞ? つまり……」
「もしかしなくても、呪いの類いもあるってこと?」
「そういうこった」
「うへぇ」
ファンタジーって良いことばかりじゃないのね。
「呪術ってのは、対象の真名が必要になるからな。だから普段は偽名が必要になってくる。弱いうちは特に、な」
なるほどね。
「ちなみに、真名を知るための呪術だったり、スパイだったり、暗殺者だったり、色々あるから気をつけろよ」
「この世界、怖っ」
「何を今更……」
ともかく、近いうちに偽名を決めてしまおう。
それから5分とかからないうちに、その時はやってきた。
「よし、着いたぞ」
「……ここが?」
「ああ。ここが、お前がこれから通うことになる学校だ」
僕の、ファンタジーな日常が、始まる。
始まると言ったら始まるんじゃ。あと、情景描写下手で済まんな。