8.そろそろ……
ファンタジーかと思ったら学校でお勉強とは。クソゲー過ぎてマジ何も言えねぇ!
「そもそも、翻訳魔法の使い手が学校にしかいねーんだわ」
あー、さっきも出てきたな、翻訳魔法。
「なに、翻訳魔法ってそんなに珍しいの?」
「正確言えば、『魔法効果を永続化させることができる翻訳魔法の使い手』は学校にしか居ないが、使い手自体はそれほど少ないわけでもない。かといって多くもないが」
「何が言いたいのさ」
「あー、つまりだな、翻訳魔法ってのは欠陥魔法なのさ」
「欠陥……?」
「詳しいことは学校で聞きな」
「そればっかりか!」
結局、詳しいことは教えてもらえなかった。チクショウ。
△ ▼ △
なんだかんだあって王都に着きました。なんで王都かって? 学校が王都にあるからだね。
学習能力のないアランのせいで、僕はまた男に抱えられて恐怖を味わいました。しばらくジェットコースターには乗りたくないね。そもそもジェットコースターそのものがないけど。
「ジェットコースターなら王都にもあるぞ」
心を読むな、心を。というかジェットコースター有るのかよ。
「男なら、細かいことは気にすんな」
「細かくねぇよ!」
まぁ、この恐怖体験のおかげでアランとの距離は縮まった……のかもしれない。
ちなみに、今回はアランと僕の2人だけだ。そのせいで、何を血迷ったかこの男、前回よりもさらにスピードを出してきた。道中は何度も死を覚悟したよ。
「もうそろそろ、お前ともお別れだな……」
「急にそれっぽい雰囲気を作るんじゃねぇ」
ただ、別れが近づいているのは事実だ。
昨日の夕方に出発して、王都に着いたのが朝のことだ。
人はまばらで、だからこそこんなに大騒ぎできているのだけれど。人の目がないからしょうがないよね。
あ、ちなみにだけど、今は自分の足で歩いてる。男に担がれる趣味は持ち合わせていないので。
「ところで、学校って具体的に何をするところなのさ?」
「あ? そりゃ勉強だろ」
「いや、そうじゃなくてさ」
確かに、勉強もするだろうさ。
「ほら、魔法学校だったり、武道学校だったりさ」
ファンタジーなんだし、これぐらいは期待してもいいよね?
「そういや言ってなかったか。今から行くところはな、ギルド直轄の冒険者育成学校だ」
……あれ? 思ってたのとちょっと違うな。
「王立魔道学校とか、そんな感じのはないの?」
「ないぞ」
「なん……だと……ッ!?」
「国に雇われるためには、実力、実績、コネの三つがそろってないとダメなんだ」
なんか語り出したぞこのハゲ。
「だから、エリートコースなんてものはこの世界にはない」
「コネが必要なのはどの世界でも同じってことか」
「そういうこった」
コミュ障にコネとかほぼ無理ですが。
「ところで、いつになったら着くの?」
けっこう歩いたことない?
「そう焦るな。あと少しだ」
「そっか」
なら、着くまで王都の景色というものを味わってみますか。
コンクリートに似たものでできている建物がやたらと多い。どの建物も同じように見えてしまう。べ、別に目が節穴ってわけじゃない……はず。
人が居れば、もう少し違った見え方がするのかもなぁ……。
「あー、一つ言っておかなきゃならんことがある」
「なにさ、いきなり」
「お前のことな、学校にいるババァに預けることになってるから」
「ババァ?」
「そう、ババァだ。天才と書いて変態と読む、そんなババァだ」
何それ怖い。
「具体的には?」
「急に人を燃やしたりする」
「危ない人だな!」
そんな人に預けられるの……? 不安しかないよ……。