5.筋肉は偉大だった……?
「……ギルド?」
「まぁ、なんだ。とりあえず中で話そうや」
さっきからちょくちょく思うけど、しげるは強引だなぁ……。
建物の中にはかなりの人が居て、ひょっとすると僕達が座れる場所なんてないのでは? なんて思ったりもしたけど、どうやらそれは杞憂だったらしく、テーブル席に案内された。
ファミレスの席とは違って、4方向から座るタイプのテーブル席だった。カフェテラスとかによくありそうなタイプかな。
「そういえば、自己紹介がまだだったよな。俺はアランだ。よろしく」
しげる……もといアランはそう言うと手を差し出してきた。
「僕は……」
アランに自己紹介しようとして、やめる。
アランは自分を助けてくれた、いわば恩人だ。だが、本当に信用できる相手だろうか?
50キロの重りを片腕で担ぎながら時速60キロで走る人間は、はっきり言って異常すぎる。
今更感はあるが、下手に情報を伝えるべきではないと思われた。
「ふむ……まぁ、坊主が話したくないってんなら、今はまだいいか」
「そうしてくれると助かるね」
で、相変わらずだけどアラン以外の2人は口を開くことすらしない。動くマネキンかな?
「さて、坊主にはいくつか説明しなきゃならねぇことがある」
「……説明?」
「あー、説明っていうよりは謝罪の方が近いかもしれんが」
「……?」
「ウチの世界の女神様が、坊主を転移させちまったと、そういうわけさ」
「……は?」
この男は何を言っているんだ? 女神? 転移?
「坊主の元の世界がどんなものだったか、俺にはわからねぇ。だが、この世界のことなら説明してやれる。いいか? この世界はだなぁ……」
「……いやいやいや、ちょっと待ってよ!」
なに、ここはカルト宗教の集会場なの!? 女神とか宗教怖いよ!
「あー、確かに納得いかないかもしれないが、コレが事実なんだ」
「いやいや、いきなり転移とかいわれてもね?」
「そうはいうが、坊主は魔法陣を通り、女神に出会ってこの世界に来たはずだ。それらしいものに出会ったろ?」
言われてみれば、魔法陣には襲われたしよく分からん面倒な女に出会った気がする。
「だからって、はいそうですかって納得できる問題でもないよね?」
「それは確かにそうかもしれんが……そういえば、坊主の世界に魔法は有ったか?」
「魔法? 魔法なんて有るわけが……」
「あるんだよ。この世界には、な」
そう言うとアランはテーブルの上に右手を出し、人差し指を立てた。
「いいか、よく見とけよ? ……火よ灯れ」
すると、アランの人差し指に小さな火が現れた。
「……マジック?」
「魔法だって言ってるだろうが。……そろそろ、認めたらどうだ?」
……確かに、目の前にはこれ以上ないってくらいの証拠がある。認めよう。
「魔法であんなに速く走ることができたし、僕を担ぐこともできたと、そういうことだね?」
「いや、あれは魔法なんて使っていないが?」
「……」
なんなんだ、マジで。
残弾在庫切れのため次回未定。