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ヒモになりたいお年頃。  作者: 長井瑞希
第0章 始動
3/11

3.と、父さん……?

 で、時は戻って現代。

「漏れてない……よね?」

 相変わらず埋まっています。

 腕は1ミリも動かせないから漏れてるかどうか確認できない。けど、たぶん大丈夫。大丈夫だから!

「というか、足が痛いんですけど……」

 正確には太もも。これたぶん筋肉痛だわ。

 短距離のダッシュですら筋肉痛になってしまうこの体が憎らしい。なんで日頃から運動してなかったんだろう? 若干の後悔。

「僕……ここで死ぬのかな……?」

 誰かが助けてくれる保証なんてどこにもない。

 最悪、餓死する。

 ……いや、生きたまま動物に食べられたり、車にひかれる方が最悪かな。

「こんなことになるんなら、エロゲ全部売っておけば良かったな……」

 プレイしてみて初めて分かるストーリーの良さ。だけど、タイトルの時点でアウトな作品もないわけではなく……。

「実妹に妹系のエロゲが見つかってしまったら……考えるだけでも恐ろしい……」

 設定上は実妹ではなく義妹だったし、ヲタ知識にはそれなりに理解のある家族だったからたぶん大丈夫……いや、エロゲは無理だ。

 エロ目的じゃなくてストーリー目的で買ったの! だから許して!?

「兄さん……妹モノはちょっと……」

 あ、やっぱり? でもさ、あくまでストーリー目的であってね? そこら辺考慮してくれると兄さんうれしいなーって。

「これは私がプレイ……もとい、管理しておきましょう。父さんや母さんに見つかったら大変ですからね」

 う、うん、ありがとう。確かに親に見つかるのはまずい。でもさ、僕としては売ってくるだけでいいと思うんだ。

 ちょ、パソコンも持ってくの!? それデータ残って……よしよし、パソコンは置いていくみたい……何で起動してんの? つーか何でパスワード知ってんの? あぁ、待って! これ以上僕の傷口に塩を塗りこまな……ちょ、隠しフォルダは隠れてるから効果があるわけでだね? あの、もしもし?

「……兄さん……」

 な、なんですか……?

「控えめに言って面白くない自作小説ですね、コレ……」

 ……もう……もうやめて……。


   △     ▼     △


「……ハッ、今のは!?」

 妹の幻覚が見えた気がする。むしろ幻覚であったと思いたい。

 相変わらず埋まったままだけれど、少し変化がある。

 それは、太陽の位置。正確には影の形だ。

 影がすぐ真下に来ている。しかも小さい。

「つまり……お昼?」

 生活リズムが元々狂っていたために腹時計は当てにできないけど、太陽から判断してたぶんきっとおそらくはお昼。

 正確には10時から2時の間。そう理科の授業で習った気がする。

「しっかしまぁ、こりゃいよいよもって自力で脱出するしか生きる道はないってことかね?」

 あくまで体感での話だけど、かれこれ3時間は埋まったままだ。

 いくら田舎とはいえ、3時間もあれば人は通るはずだし、田舎なら朝早いから確率はもっと高いはず。

 つまり、かなりやばい状況ってことだ。

「目覚めろ、僕の隠されたパワーッ!!」

 ……。

 …………。

 ……………………何も起きないな。

「いやいや、とにかく早く脱出して人の居るところまで行かないと!」

 ちりも積もればなんとやら。きっといつかは脱出できるはずだ。

「とはいえ、力がないのもまた事実な訳で……」

 横になった状態で埋まっていたならまだしも、縦に埋まっているからなぁ……。

 砂浜で埋められたことがある人なら分かると思うけど、土っていうものは想像以上に重たいもので、そして冷たい。

 唯一の救いはこの土はあまり冷たくないということだけど……すでに手遅れという可能性もないわけではない。あまり考えたくないことだけどね。

 そうそう、砂浜といえば海だ。

 悲しいかな、家族以外の異性とともに行くことは一度たりともなかった。

「ま、まぁまだ20歳。希望はあるさ!」

 明日どころか今日生きていけるのかすら怪しい僕が未来に夢を見ている。でも、そんなキミも、嫌いじゃないよ(誰だお前)。

 と、そんな一人遊び……じゃない、高度なトレーニングをしていたときのことだ。

「お、居たぞ!」

 男の声が聞こえてきた。

 残念ながらその男は後ろからやってきているようで、顔はおろか体さえ見ることはできない。埋まってるからね。

 正直な話、かなり怖い。だけど、このままでは死んでしまうのもまた事実。

 勇気を出して叫ぶ!

「男は要らない! お姉さんを! お姉さん成分を!!」

 ……こいつ狂ってんじゃねぇの?

「あ、オネエは要らないよ! お姉さんがいいんだぁ……」

「よーしオメーら、撤収するぞー」

 何を思ったのかその男、撤収しようとしているらしい。させるかっ!

「困っている人を見かけたら助けるのが人ってもんでしょうがっ!」

「よくそんなことが言えるなオイ」

「よっ、ナイス突っ込み!」

「うるせえよ!」

 そう言いながらも助けてくれるのだろう。近づいてきたその男は……。

「……父さん……?」

「誰が父親だ、誰が」

 僕の父親にものすごく似ていた。

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