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幸運の盗人

暗い洞窟。普通なら人など1人も居ないはずの所に彼らは住んでいた。明かりとして松明に火を灯し、壁に突き刺さしている。


男達は奪った積荷などの中にあったソファーや椅子にそれぞれが座っている。


「すげー!フカフカだぜ!」


「こんな椅子貴族しか座れねーよ。」


「この洞窟に盗品で埋め尽くされる日が来るとはな!」


この洞窟に今、足場はない。全て高級品の宝石や時計。高級な酒樽と果物や肉の入った箱。絵画や服、ドレスなどで地面が見えなくなっていた。数々の盗品で作られた山の上にその男は一番高級そうな椅子に足を組んで座っていた。手に持つ銃を愛おしそうに撫でる。


「この銃を拾ってからいい事しかねーな。あの坊主には感謝しなきゃな。」


その銃は大きめの黒いリボルバーで、込められている弾にはそれぞれが違う色で動物の絵が描かれていた。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽


シーノは呆れながら事の経緯を簡潔にまとめて確認を取る。


「つまり、サルバリの使っている銃は元はレアンので、盗まれたがばっかりに彼らの力を格段にあげた為、こんな事件を発生させてしまったと・・・。」


「ああ、合ってる。」


顔を両手で覆いながらコールは力なく答える。レアンは隣で申し訳なさそうに・・・してはいなく笑っている。それを見たコールは顔を上げ、レアンの頭をぐーで殴る。ゴツン!音と一緒にレアンから「いてっ!」と言う声が漏れる。


「・・・殴ること無いじゃん・・・。」


「お前の不注意のせいでこうなったんだから、もっと反省しろよ!」


「嫌だよ!だって、僕が悪いんじゃないもん。取った人達が悪いんだもん。」


「取られる方も取られる方だ!あれがどんなに危険なのかお前は───」


二人の口喧嘩はヒートアップし、もはや今の話と関係ない話も持ち出している。


「お、落ち着いてよ。」


シーノは二人を止めようとするが、当の本人達はシーノの言葉を無視している。


シーノも知り合いが口喧嘩をしているところを見たことがないのであたふたしている。 二人の口喧嘩を止めたのは意外な人だった。カツンッという音が部屋に広がる。その音で場にいた三人が音のした場所を見た。そこには目を瞑ったエリナが無表情で立っていた。箒を大理石の地面に叩きつけた音だったらしい。何事もなかったような口調で


「この屋敷が広いとはいえ朝からこんなに騒がしくては近所の方々に失礼です。私が口出しするのも少々不躾ですがお静かになさっては?」


・・・屋敷が一気に静かになる。台所で水がシンクに落ちる音だけがする。


「・・・。あ、すいません。少し取り乱してしまった。」


コールが申し訳なさそうにエリナに謝る。


「いえ、こちらもメイドとしての立場もわきまえず、申し訳ありません。」


「ゴメンなさい。」


レアンも俯きながら謝る。まるで、子供が親に怒られた時の様だ。その姿にエリナは


(か、可愛い!)


何かに目覚めようとしていた。


「よし!過ぎた事は水に流そう。レアンも反省はしろよ。そして、サルバリから取り返すことに集中するぞ。」


「分かった。反省します。」


「じゃあ、まずどうするの?」


「そうだな・・・。あっ!」


「どうしたの?」


「たしか、シーノと会う前にジルノって情報屋から名刺もらってた。」


「ジルノってジルノ・フェザーですか?」


「エリナはコイツ知ってるのか?」


「はい。というより彼はこの国に住んでる人は、誰もが知ってるくらい有名です。彼に知らないことは無いとも噂が立つくらい。」


「そんな凄い奴だったのか!?」


「はい。何でも彼は依頼人はなるべく自分が気に入った人に限定するため、常に変装した彼が直接会って名刺を渡すため、正体を明かす事が滅多になく、名前は知っていても本当の素顔を知るものはいないのです。」


「そんな凄い奴だったのか?」


「コール、ジルノってあの店にいたカウボーイハット被ってた酔った人?」


「知ってるのか?」


「うん。でもアレは本当の姿じゃないよ。」


「は?」


「初めは気配消すのが上手いな〜って思ってたけど、良く見たらあの人、表情の変化に違和感があった。多分何か顔に着けてるね。それに胸が机に当たった時少し胸が凹んだから女だね。咄嗟に机から離れたけど、酔ってたからか不自然だった。」


「お、女だったの?」


「女だったんだよ。」


「ボクはその人見てないから知らないけど信用は出来るの?」


「普通にしていいと思うよ。気配消してる人が名刺渡してくるのは、行動として矛盾してる。正体をばれてもいいってことなんだろうね。」


「もしそれが嘘で名刺の住所も偽物で待ち伏せられてたら?」


シーノは不安そうな顔で聞いた。レアンは


「返り討ち。」


笑顔で即答だった。

忘れていた。彼はこういう人だった。


「よし。先ずはそのピジョンって所まで行くか。」


「うん。それまではこの国出るのは後だね。」


シーノはテーブルに身を乗り出した。


「もうこの国を出るの!?」


シーノに視線が集まる。シーノはハッ、としてから顔を赤くして席に座る。レアンはシーノに説明し始める。


「僕のせいでまだ行かなくなったけどね。フレアノールに行くつもりだよ。手掛かりが無いから先ずは会えたら一番楽な智龍神がいるところがいいなって話になって─────」


そこからの声はシーノの耳には入らなかった。彼らとは会ったばかりだった。しかし、シーノはこれからずっと一緒にいるつもりになっていた。何故かは自分でもわからなかった。そこを含めてシーノは混乱していた。


(なんで置いてかれるような気持ちになってるんだろ?ボク・・・。)


気づくと話は終わっていた。いつの間にか昼に三人でピジョンに行くため外へ出ることになっていた。


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