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種族

▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


コールとシーノの二人は怪我をしている(その上改造されている可能性のある)ダーノを連れて一番近いセント病院へ向かった。

レアンは途中まで一緒にいたが「お腹が痛い。」と涙目で言って公園のトイレに駆け込んでしまった。

シーノは病院で父親の診察が終わるのを待っていた。そのうち拉致されていたことを病院から警察に情報がいくだろう。

つまり、明日は事情聴取であるに違いない。

狭い部屋に閉じ込められ鞭であることないことを認めるまで叩かれる、というシーンをテレビから得た知識を集結させ想像していた。

(これは彼女による偏見が生んだ妄想です。実際の警察はもっと優しいはずです。)


シーノは憂鬱になり深いため息をついた。


コールは、病院の屋上へ行き煙草を吸いながら夜景を眺めていた。景色の中にある先程までいた第三アジトを眺めている。


(アジトはあそこだけではない。まだ最低でもあと2つはあるんだろうな。そのなかにもあんなやつらがいるんだろうな。そう思うと・・・。やるせないな。)


コールはレアンを思い浮かべる。


(お前は思うところがあるんだろうな。だからこそ、俺達と別行動をとったんだよな。お前が今からやろうとしてること、それをお前は酷いことだと思うのかもしれないけど、俺はお前が心底優しいやつだと思うよ。)


コールは煙草を捨て地面に落ちた煙草の火を足で消す。そして、病院の中へ戻った。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


レアンはみんなのいるセント病院へ向かってはいなかった。

体が重く感じる。身体には傷一つ無いが精神的にやつれている様で足取りが遅かった。

あと二つもあると思うと本当に嫌になる。さっきのところでも気持ちがどっと疲れたというのに。頭のなかに彼らの言葉が浮かんでくる。


『助けて!』『殺してくれ!』『死にたくない!』『もう楽にしてください。』『疲れたよ。』『こんな姿で生きたくない!』『何でこんなことに。』『最後にあの人に会いたい。』『痛い・・・痛ぇよぉ・・・』『死んでくれよ!』『もうおしまいなんだよ!』『母さん・・・母さんはどこ・・・?』『殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!殺して!』


レアンは意識を戻した。足が止まる。行くのが怖い。行きたくない。辛いだけだ。道にある電柱に近づきもたれかかる。ここで終わってしまおうか。ふと思うと、ある少女の言葉が頭に浮かぶ。


『お兄さん、ありがとう。』


涙で顔がグシャグシャになった少女の顔である。しかし、とても嬉しそうな顔であった。レアンは微笑む。そしてまた、歩き出す。まだやることが残っているから。そして彼は夜の町の路地裏へと消えてった。影が闇のなかに溶け込むように。または光が闇を照らしていくように。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


次の日、朝になり目をさましたレアンは少し毛布の中の暖かさを感じたあとにゆっくり起き上がった。窓から朝日が差し込む。眩しそうに目を細めていると違う部屋からコールが部屋に入ってくる。


「おー、起きたかレアン。昨日は帰りが遅かったもんな。でも、今日はまたセント病院へ行くから支度しとけよ。あと、ここの屋敷の家政婦さんがもうすぐご飯が出来るから降りてこいって。じゃ、俺は一足先に病院に行ってるぞ~。」


コールは手を振りながら外へ部屋の外へ。そう、昨日レアンたちはシュバルツ家の屋敷に泊まった。この前は家に帰ればシーノに仲間ができたことが、敵にバレてしまうからと宿屋に泊まったがもうその必要がないためこちらの屋敷にお邪魔することになった。

レアンは未だにボーッとしている。昨日レアンは疲れていたので夕飯も食べずに案内された部屋のベットにダイブ。そのまま寝てしまったのだ。

眠気が消えないようでベットの上で枕を抱きながら左右に揺れている。暫くするとレアンの腹からグゥ~~と大きな音がした。ご飯も出来たのか美味しそうな匂いが漂ってきた。レアンは糸目になりながらご飯のもとへ。

部屋を出て歩いていくとシーノがご飯をお盆にのせて階段を上がってきた。シーノもこちらの存在に気づく。


「あっ、起きたんだ。疲れてるみたいだからご飯運んできたんだけど。」


「ありがとう。でも皆と食べるから大丈夫だよ。それ持つね。」


レアンはシーノが持ってきてくれたお盆を代わりに持って階段を降りていった。シーノが慌てて後を追う。

大きな扉の奥から食器が擦れる音がする。扉を開けようとするが手が塞がっていた。シーノが扉の前に張り付くように立ち塞がる。シーノの顔が赤くなりながら口をパクパクさせている。


「どうしたの?」


「いや、あの、その。」


しどろもどろになりながら何かを伝えようとしているシーノ。しかし、シーノが塞いだ扉は反対側から開いてしまった。扉の向こう側にいるメイドの一人が騒いでいる二人に気づき扉を開けてくれたのだ。メイドは二十歳くらいの若い女性で服装はよくあるメイド服であった。

シーノは余計なことをしたメイドを睨み付けたが、赤くなった顔では気迫がなかった。


長いテーブルの上に幾つもの食べ物がある。いかにも貴族の食卓といった感じである。朝なのでそこまでガッツリしたものはないが食欲をそそられるいい匂いがする。スープのようだ。


「わー、美味しそう。」


そこで、レアンはお盆とテーブルのメニューが違うことに気づいた。テーブルのメニューはフルーツがとてもキレイな盛り付けがしてあり、出来立てパンとコーンスープのいい匂いがする。しかし、お盆のメニューは普通の食卓に出そうなサンドイッチとスープの二つである。


「ん?何か違うね。」


「ええ。そちらのメニューはお嬢様自らお作りになられた品々でございます。疲れているようでしたので、そちらの部屋でも食べれるようにわざわざお運びなさっていたのです。」


先程扉を開けてくれたメイドが誇らしげに言う。シーノの顔はりんごのようの真っ赤になった。髪の毛も心なしか逆立っているように見える。


「そっか。気を遣わせてしまったんだね。シーノ、わざわざありがとう。嬉しいよ。」


「あう、・・・うん。」


何か言いたげだったシーノであったがレアンの言葉によって完全にゆでダコになってしまった。頷くとそのままテーブルの自分の席に戻った。

レアンも席につこうとすると、メイドが服の裾を持ち上げお辞儀していた。


「申し遅れました。エリナ・コンスタンスです。この屋敷の唯一のメイドでございます。何とぞこれからも末長くお嬢様をお願い致します。」


「ちょっ、!エリナ、やめてよ!」


落ち着こうとしていたシーノにまさかの追撃。さすがの彼女も席を立ち反撃した。エリナはニヤニヤしながら


「何をですか?お嬢様がレアン様のことを────」


「ボクはそんなこと一言も言ってない!」


「では、どうなんですか?ここではっきりさせてください。」


「いや、だから、その・・・。」


「シーノ、お嬢様って呼ばれてるんだね。」


「はい。ダーノ様の娘に当たりますから。」


「ふーん。で、シーノは僕のことをどう思ってるの?」


「えっ!だから、その。」


話がそれたのにまた戻ってきた。とうとう涙目になりながらオロオロし始める。

その姿を見て満足したのか


「ご飯が冷めてしまいますね。レアン様、こちらの席へ。」


レアンはエリナに引かれた席へ行き座った。シーノも席へ座り、疲れたのか顔をテーブルのナプキンに埋め深いため息をついた。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽


病院に到着した。エリナも来ようとしたがシーノが焦りながら留守番を命令。つまらなそうな顔をしながら送り出されてきたところである。


部屋番号を確認しながら病室に向かうが確認せずとも外にいる警備員で場所がわかった。病室に入ると


「やぁ。シーノもレアン君もわざわざ、有難うね。」


ダーノは病院の個室のベットに寝ながら話しかけてきた。体調はだいぶ良くなったようで顔色も普通の人全然変わらない。ベットの横には既にコールがいた。


「シーノ、事情聴取の方は俺とダーノさんで終わらしておいたから大丈夫だぞ。」


「そうなの?良かった。」


シーノは心底安心した顔をした。レアンが質問をした。


「どんなこと聞かれたの?」


「私には、ゼラハにどんなことされたか、どんなことをしていたのかを聞かれたよ。」


「俺には他のアジトがどこにあるのか場所を聞かれた。いちいち言うのも面倒だから地図渡しといた。」


「そっか。・・・うん。お疲れさま。」


「だが、国はやつの技術を少なからず奪うのでは?」


「大丈夫。国もあそこまで酷い技術は手を出さんよ。なっ?」


コールはレアンにウインクをする。レアンは力強く頷く。


「ええ、何かあっても僕がなんとかします。」


「これはこれは、頼もしい事だね。」


「ところで何で僕たちは呼ばれたの?」


「レアン、俺達がこの国に呼ばれた理由はなんだ?」


「あー、そうだったね。それについての話なの?」


「そうだ。先生お願いします。」


「先生とは些か余所余所しすぎないかい?」


「いえ、仕事の話なのでそこは切り替えてやります。」


「そうか。じゃあ、先ず君たちのの論文についての話をしよう。君達が調べた今この世界にいる人科の種類は大体、五十種類。彼らの血を入手し、DNAを採取したことにより彼らは同じ人間から何らかの変化によって生まれたものであることが分かった。」


「血を分けてもらうだけでしょ?それってそこまで難しくないし、誰でもできるんじゃない??」


「いや、彼らから血を分けてもらうのは相当困難だった筈だよ。」


「なんで?」


「この国は戦火に巻き込まれなかったからシーノは知らないと思うけど、あの論文を出すまでは種族間での争いが絶えなかったんだよ。」


「えっ?」


「彼らが提唱した論文は『種族別進化論』という名だが、結果は?」


「そこは知ってる。元は皆人間でそれぞれが独自の進化をしたって話だよね。」


「そう。しかし、それまではルーツもわからない者同士としていがみ合い、最後には武器を取り戦い出す始末だ。」


「だから俺とレアンはそれぞれがどんな進化をしてきたか分かることで少しでも手を取り合えるようにしたいと考えたんだ。」


「で、結果は皆元をたどれば一緒の仲間だったっていうオチ。」


「じゃあ、いがみ合っている者同士だったのにどうやって血を分けてもらうことに成功したの?」


「それはただのレアンの人徳。コイツと話した連中は大抵協力的になったよ。皆快く迎えてくれてな。俺だけだったら絶対無理だったよ。シーノだって初めて会ったレアンを信用しただろ?」


「ああ、なるほど。なんか意外とレアンの雰囲気って凄い力持ってるんだね。」


「そうだね。生き物全てが彼のような優しさを考えとその優しさを伝える風貌だったら、あんないくつもの悲劇は起きなかっただろうに。」


一瞬病室内に沈黙があった。


「話が逸れたね。彼らのおかげで種族間の争いは激減。

論文一つでここまで変わるとは誰も思っていなかっただろうし、こんなに早く交流国である『オルピス』が作られるとは思っても見なかった。

しかし、同時にある疑問も出てきた。」


「疑問?」


「そう。それは何故、同じ人間だったものたちがお互いの変化を認識できず別の種族と判断するほどの情報が少なかったのか?」


シーノの頭の上に?マークが出た。

ダーノの言葉にレアンが付け足す。


「実際、彼らのそれぞれの国や隠れ里を回って書物とか言い伝えとかあるだけ調べたけど、自分たちが元々人間だったという文献は一つもなかったんだよ。」


「つまり、どうして急に多くの種族が生まれたかは謎のままなんだ。人間だけだった時代は約三百年前。その時一体何があったか?どういう経緯で変化したのか?今はそれについて調べてる。」


「そして今回、私は彼らの変化を促した者たちの正体を掴んだ。と言っても仮説の域を出ていない可能性の話なんだがね。」


「構いません。聞かせてもらえますか?」


「うむ。他の種族たちそれぞれが神と崇めている者たちが居るだろう。」


「はい、宗教のように像まで作られたりしていますね。だけど彼らの存在は結局わたし達の考えている神と同じで空想の産物なのでは?」


「宗教団体にそんなこと言うんじゃないぞ。」


笑いながらダーノはコールをたしなめる。そして今度は真剣な顔になる。


「コール君、彼らが祀り上げた神たちが出現したのが全部共通して約三百年前だとしたら?」


「!!・・・そうなると話が変わりますね。」


「?」


シーノは頭を傾げる。そろそろ考えが追いつかなくなる。


「彼らの文明が出現した時に神様までほぼ同時現れたのは少し出来すぎだって事ですか?」


「いや、幾つかの文明だけならまだ、問題はなかっただろう。しかし、全部となると話は変わってくる。この事から私はある仮説を立てたんだ。」


「それは?」


「もし、彼らが祀っている神が実在していたのなら?それらは幾つもの種族を作り出した張本人だったら?」


「人間だった情報ももしかしたらそいつらが隠蔽したかもしれない。」


またもや部屋の中が沈黙に包まれた。それを破ったのはレアンだった


「色々と辻褄は合うけど・・・僕はそんなのがいるとは思いたくないな。」


ダーノがクスクス笑い出す。


「何も全部信じなくても良いんだよ。私が立てた仮説は最悪なものだからね。君達は自分の論文のため調べればいいし、私の仮説を否定するために真相を明かしてくれればいい。私も誰もが幸せになれる真実の方がいい。」


「そうですね。俺もそう思います。」


「・・・私が君達への用はこれで終わりだ。暫くは私の屋敷でゆっくりしてくれればいい。」


「有り難うございます。先生。」


「いやいや、君のような弟子なら歓迎するよ。友として歓迎してあげたいんだけどね。」


コールは困った顔をした。


「じゃあ、俺たちは戻りますね。シーノはどうする?」


「ボクも帰るよ。」


「そうか。気をつけて帰るんだよ。」


シーノとレアンが先に病室を出た。コールはドアを閉める前にお辞儀をしてから出ていった。ダーノは何かを含んだ眼差しで窓の外を見ながら呟く。語りかけるものなどもう部屋にはいないのに。


「しかしね、レアン君。良い悪い関係なく、神は実在する。それだけは絶対の真実なんだよ。」


▽▼▽▼▽▼▽▼▽


屋敷に帰ってきた3人。

コールとレアンは借りてる部屋に集まっていた。テーブルの上に地図を広げ、地図を挟んで二人で眺めている。


「さて、俺はこれから違う国に行って神とやらの情報を集めるべきだと思う。」


「そこは僕も同じ意見だよ。」


「じゃあ、先ずはどこに行くべきだと思う?」


「・・・火の国フレアノール。先ずはここだと思う。」


「理由は?」


「ここで伝えられている神様の一部が龍神と呼ばれているのは?」


「勿論知ってる。」


「その中の龍神に『智龍神』と呼ばれているやつが存在する。もし、本当に存在して逢えたのなら他の神様のことも教えてくれるんじゃないかなと思ったんだ。」


「なんか理由があやふやだな。」


「ダメかな?」


「いや、特に有力なところもないし1番逢えたら得するのを選んだんだろ?俺も特にアテがある訳じゃないからそれでもいい。」


「なんか上から目線だな〜。」


「気に食わないか?」


「別にー。」


レアンは拗ねたようにそっぽを向いた。コールは拗ねたレアンをなだめるためテーブルの反対側から近づきレアンの頭を撫でてやる。レアンは子供扱いするなと主張するように手を払いのける。

少しの間のあと二人の頭の中でゴングが鳴った。それを合図に二人はじゃれ合い始めた。その姿は本当の兄弟のようだった。


一方、シーノはメイドのエリナと食事の用意をしていた。二人とも何も言わず黙々とそれぞれの作業をしている。シーノが食器を並べエリナが料理を作っている。沈黙を破ったのはエリナだった。


「シーノ、今日は作らないの?」


ビクッと体がはねる。しかし、顔はポーカーフェイスを気取っていた。


「エリナ、からかうのは止めてよ。あれは御礼ってだけ。」


二人は他人がいない時は名前で呼び合っている。生まれた時から姉のような存在だったエリナにはメイドとして扱うことは出来なかったし、エリナも生まれた時から世話をしているシーノを妹のように思っていた。


「それにしては顔が赤かったけど?」


「…知ってて言ってるでしょ?慣れてなかったから、ちょっと戸惑っただけ。」


「やっぱり?・・・それでもあんな顔見れて私は嬉しかったな。」


急にエリナの口調がからかう感じから優しい口調になった。シーノは怪しそうに睨む。


「何?面白かったから?ボクは凄く恥ずかしかったんだよ。」


「そうじゃなくて、嬉しかったのは御礼とかしてあげたくなるような人に会えたこと。

シーノって人と関わるの苦手だったから私くらいしか素を出せなかったから。彼らと話してる時シーノ、笑ってた。お姉さんとしては嬉しかったな〜。」


シーノは怪しそうに睨むのをやめ不安げに聞いてみる。


「あのさ、・・・エリナ。」


「なーに?」


「私は、あの人達と話している時変な笑い方、してない?」


普通ならこんな質問されたら笑ってしまう人もいるだろう。不審な目で見る人もいただろう。しかし、エリナは変わらない口調で返答する。


「してないよ。むしろ見たこともないくらいの可愛い笑顔だったよ。」


「それはそれで恥ずかしいな。」


「そんなことないよ。元々人と関わるの苦手だった分友達作ろうとしなかったし、六歳の頃『お姉ちゃんだけでいい。』なんて言われた時は嬉しくて甘やかしちゃったから。

それに、屋敷にこもって銃の手入れなんてしてたよね。姉としては恐かったわ。」


「そんなこと思ってたの?」


シーノは意外そうな顔をした。


「うん。だから、その時だけはシーノのことを妹ではなくお嬢様として扱っていたわ。」


「それは知りたくなかったな。」


フフフッ、と笑い出す。そして、食器の擦れる音と野菜を切る音だけがしばらく続いた。


「ねぇ、シーノ。」


「何?」


「・・・ううん。やっぱりいい。何でも無いよ。」


「?変なエリナ。」


シーノは作業に戻った。エリナは聴こえないように呟く。


「私はね。別に会って間もない者同士でも気持ちが合うことも不思議じゃないと思うし、好きになるのも可笑しくないと思うよ。だって、どちらもとても喜ばしい事だもの。

だけど、その気持ちは自分で気付くべきだよね。」


エリナは嬉しそうに料理を皿によそった。いつになくうまくできた気がした。


▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽


翌日、レアン達は屋敷の食卓で朝食を取っていた。朝食はフレンチトーストと珈琲で、軽めにしていた。

シーノはまさにその朝食を取っていた。レアンは顔を洗いに洗面所へ。コールは新聞を読んでいた。新聞を読むコールがある記事に目が止まる。


「へぇー、こんな事もあるんだな。」


シーノが不思議そうに聞く


「どうしたの?」


「ゼラハのアジトって俺達の行ったとこ以外にもあったよな。」


シーノは一気に嫌そうな顔になった。


「あんなのがあと四つも残ってたんだっけ?あれがどうしたの?」


「他のアジトにも国の主戦力が投入されたんだけどよ。」


「そりゃ、ウォーテクノロジーを使って作られた化物の巣窟だからね。」


「いや、化物の巣窟じゃなかったそうだ。というか第三以外のアジトには何もなかったそうだ。あっ、第一アジトだけは崩壊していたそうだ。」


「えっ?どういうこと?」


「一応機械とかはあるんだが肝心の中身が一つもなかったそうだ。まるで消えたかのように・・・。」


怖がらすような低い声を使ったがシーノはスルーした。


「逃げ出したとかはないの?戦闘の痕跡とかは?」


「いや、殆どが目立つ奴らだから逃げ出したのなら直ぐに通報があるだろ。それに戦闘の痕跡どころか、血痕すら見つかんなかったそうだよ。」


「第一アジトの方は?」


「何か知らないけど俺達がダーノさんを救出した後位に、近所の人が大きな音がしたって通報があって、行ってみたら建物自体が完全に崩壊していたらしい。」


「怪しい。」


「そうか?あんなに無茶な実験してたんだ。失敗して天罰受けたんだろ。ザマー見ろってんだ。」


「そんな単純なものかな?」


シーノは話を続けようとしたが横から洗面所から戻ってきたレアンが割り込んできた。


「何々、何の話?」


「何でも無いよ。あっ、エリナさん。コイツにフレンチトーストもう一枚作ってくれる。」


「かしこまりました。」


「わーい!!!」


エリナはまた台所へレアンはエリナの後を追った。


シーノはコールに真剣な顔で質問をする。


「もしかしてわざと逸らしてる?」


対してコールはおどけた様に答える


「いやーそんなことはないよ。ただ・・・。」


「ただ?」


「わざわざ、終わった話をまた蒸し返すのは良くねぇだろ。特に暗い話は・・・な。」


コールもここで、何か含んだ顔をした。

シーノもそれに気づき口をつぐんだ。しかし、コールが新聞を破らんばかりに掴み立ち上がり


「あーーーーー!」


と屋敷中に響く大きな声で叫んだ。シーノは痛そう耳を抑える


「何!?どうしたの?」


シーノの質問にコールは答えることはなかった。


「レアン!来い!」


レアンは何事かと言わんばかりに驚いた顔で走ってきた。


「何事か〜!」


「コレ見ろ!」


『盗賊サルバリの被害が急増

彼らはなんと銃から獣などを召喚し、エノス平原を通る行商人・輸送の馬車を襲っては金品などを巻き上げているそうです。

何故急にサルバリが力をつけたのかは定かではないがエノス平原を通るときは充分注意するように!』


「あ〜〜〜〜。これは・・・。」


レアンは申し訳なさそうな顔をする。コールは怒りを抑えるように喋る。


「すっかり忘れていたぜ。いや、見つかったから『良かった』と言ったほうがいいのかな?なぁ、レアン?」


「す、すっかり忘れていたね。」


「だから、何事?」


「この盗賊なんだけど〜。」


「ああ、これね。ゴロツキぐらいの集団だったのに何でだろね?」


「ここに書かれてる銃・・・僕のなんだ。」


「へー。ん?・・・えっ!」


コールは怒りで体を震わせ始めた。そして、


「何でこうなるんだー。」


またも、大きな声で叫んだ。


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